【Q＆A】借金で貸主が死亡した場合、借主の借金は消滅する？ 　

Q2、金銭消費賃借契約で400万円の借金をして、貸主が亡くなった場合、借りた人間の返還義務は無くなりますか？相続人が不明の場合には、どう対応すればいいですか？

A2、借りた人の返還義務が消えることはありません。相続人などが分かるまでの間、法務局に供託をしてください。

お金を貸した人が亡くなっても、借りたお金の返還義務はなくなりません。今回のケースであれば、民法896条にて、貸主の相続人が400万円の債権を相続する形になります。 つまり、貸主が亡くなった場合には、相続人を貸主ということにして、借主は支払いを続けていきます。

ただ、ここで注意していただきたいことがあります。
それは「相続人」と名乗る人物が、多数出てくる可能性です。

例えばですが、借主の元に「相続人だ」と言って貸主の息子や娘を称した人がやってきて、支払い請求を行うかもしれません。その場合本当に息子や娘なのかどうか分からないですし、証明することもできません。

さらに、「私も相続人だ」と言って請求をしてくる人が、どんどん出てくることもあります。
このように、相続に関しては「当事者だ」という人物が多数出てくるケースがありますので、請求者に対して「相続人かどうか」をしっかりと確認しなければなりません。

法定相続人の範囲とは？

相続と深く関わってくるのが「相続人」の存在です。
相続人がどのようなものなのか、基本的な内容を押さえておきましょう。
「相続人」と似た言葉に「法定相続人」があるので、その違いも理解しておいてください。

相続人は実際に相続をする人のことで、法的に相続の権利を持つ人は「法定相続人」と言います。
そのため、法定相続人に該当していても、相続放棄をすれば相続人になりません。

法定相続人の範囲は、配偶者と血族ですが、相続人にはルールと優先順位があります。
ルールとして、亡くなった人に配偶者がいる場合は、配偶者が優先的に相続人になります。

配偶者がいない場合や、配偶者が相続放棄をした場合、血族が相続人になります。
その場合、優先順位（※）が高い人が相続人になります。
（※）血族の優先順位
1位：子および代襲相続人
2位：両親等の直系尊属
3位：兄弟姉妹および代襲相続人

今回のケースの場合、貸主に配偶者があり、相続放棄をされていなければ、配偶者が債権を引き継いでいることが想定されます。

配偶者が相続人にならない場合、次に相続人になるのは子どもか代襲相続人です。
代襲相続人は、相続人である子どもが亡くなっているなどの場合に、子どもの子ども（亡くなった人から見て孫）が該当します。

このように、相続人は、亡くなった人の配偶者以外に、血族（子・孫、親・兄弟姉妹、姪甥）がなる可能性もあるという点を覚えておきましょう。

相続人かどうかを確認する方法

上記のとおり、相続人は配偶者以外がなる可能性もあり、本当の相続人か判断することは難しいです。
そのため、相続人だと言って返済を請求してきた人に対して、「本当に相続人かどうか」を確認する必要があります。

相続人か確認する方法ですが、まずその人物に「遺言書」または相続人全員で作った「遺産分割協議書」があるかどうかを確認します。そして「債権の承継者」という確認ができる書類を出してもらいます。

この書類を見るまでは、本当に相続人なのかどうか判断ができないので、支払いに関しては拒否をするのが望ましいです。

もし安易に支払いをしてしまうと、その後に本当の相続人が出てきた場合に二重払いすることになる可能性があるので、気を付けてください。

基本的には「受領権限」を持っていない人に対する弁済というのは、「善意・無過失」の場合に有効になると「民法478条」にて決められています。

しかし、民法478条があったとしても、本当の相続人（権利者）ではないことを知らずに支払ってしまったことに対して「過失（借主の落ち度）」と認められると、弁済は無効となる可能性があるので注意しなければなりません。

つまり、本当の相続人ではない人に間違って借金を返してしまった場合、借りている人に落ち度があると認められると、そのお金は返ってこないということです。

このような事態に陥らないためにも、債権を承継した人が誰なのかハッキリしていない場合には、民法494条の「弁済目的物の供託」という制度を活用するのが得策です。

供託は、国の機関（供託所）にお金などを預けることで、借金や地代を支払った場合と同様の効果を得られる制度です。
供託をすることで、借金の返済を滞りなく行っていることになりますので、債務不履行にはなりません。

今回のケースの結論

今回のケースでは、相続人が不明であり過失もないので「債権者不確知」ということになり、弁済金の400万円に対して供託が許可されます。

400万円の供託を行えば、その結果、債務不履行という責任を負うことがなくなり，遅延損害金を支払う必要がなくなります。