求償権とはどんな権利？行使できるのはどんな時？

求償権が行使されるのはどんな時？

ここでは、求償権が行使される主な2つの事例を紹介します。

保証人などによる弁済

保証人による弁済とは、前項で案内した例のように、第三者である保証人などが債務者の代わりに返済分を肩代わりした際に行使されます。

その中でも多く見られるのが、住宅ローンの保証人となった保証会社による求償権の行使です。

銀行で住宅ローンを組む場合、今では銀行側が契約者に対して保証会社を利用するように強制するのが一般的です。 銀行としては、契約者が住宅ローンを滞納して返済ができなくなったとしても、全額保証会社が肩代わりしてくれるので、安心してお金を貸すことができます。

保証会社が住宅ローンの残り分を銀行に支払った場合は、借入をしている契約者に対してその分を請求します。
保証会社は銀行に支払った分以外にも、求償権の範囲において債権者である銀行が持っていた権利も行使することができます。

銀行では住宅ローンの契約を交わす際に、土地や建物（抵当権なども含む）を担保にとりますが、肩代わりした保証会社は担保権も行使できるようになります。
つまり債務者である住宅ローンの契約者からすると、銀行の代わりに保証会社が債権者になるだけで、借金が免除されるわけではありません。

銀行では返済が滞った場合でも、交渉次第では返済期間を延ばしてくれるなどの融通を効かせてもらえる可能性が高いです。

しかし、保証会社は担保権（抵当権など）も容赦なく行使します。
したがって、できる限り債権者が保証会社に移る前に対策することをおすすめします。

住宅ローン以外でも、貸金業者からお金を借りて返済ができなくなり、保証会社が債務を肩代わりした場合も、保証会社は容赦なく求償権を行使します。

連帯債務

求償権には、住宅ローンや賃貸業者への返済ができなった時に保証会社や保証人によって行使される場合と、連帯債務によって発生する2パターンがあります。
連帯債務によって求償権が行使される主な事例が、不貞行為による慰謝料に対してです。

不倫をされた妻または夫は、不倫をしたパートナーと不倫相手の両方に対して慰謝料を請求できます。
不倫をしていた2人は、共同不法行為者となり、「連帯債務」の関係となります。
不倫をしていた2人は、男〇万円、女〇万円のように定められた金額を支払うことになります。

しかし一方だけが慰謝料を満額支払った場合、支払った者が支払わなかった者に対して、本来支払うべき金額を請求することができます。
実際にその分を請求することが、求償権の行使にあたります。

具体的な例を挙げて解説しましょう。
夫に不倫をされた妻が50万の慰謝料を請求し、夫と不倫相手がそれぞれ25万円を支払うことになりました。

しかし、夫が慰謝料を払わず、不倫相手が1人で50万円を支払ったとします。
この場合、夫に対して不倫相手は夫の負担分である25万円を求償権によって請求することができます。

債務者が亡くなった場合でも求償権を行使できる

知り合いの保証人になって肩代わりした分を、求償権を行使して請求したいのに、債務者が死亡するという事態になることがあります。

求償権を行使する相手がいなくなってしまったから、当然権利も消滅すると考えて諦めてしまう方も少なくありません。

しかし、主債務者の債務は相続人に引き継がれ、権利は生き続けることになるのが現実です。
ただし、相続人が遺産を放棄した場合は、権利を行使する相手がいなくなってしまいます。
求償権を行使した債務者が返済中に死亡した場合も、その後に相続人によってどのような相続が行われるかを注視する必要があります。

また、相続放棄がなされた場合でも、債権者との交渉ができるケースもありますので、プラスの財産が遺されている場合は諦めないで弁護士などに相談することをおすすめします。

まとめ

求償権という言葉は日常的に使われることがないため、正しく理解できていない人も多いです。
残念ながら、求償権を利用しないで肩代わりした分を諦めてしまう方も少なくありません。

しかし、現実には保証会社が当たり前に行使している権利であって、肩代わりした借金の返済を債務者に求めることは正当な権利です。
借金等の肩代わりをした人にとっては救いとなる権利ですので、覚えておきましょう。

「自分では権利の使い方が分からない」という場合は、弁護士に相談すれば、たとえ債務者が死亡している場合でも、求償権を行使して諦めていた借金返済を求めることは十分に可能です。