過払い金の時効で損をしないために知っておきたいこと

過払い金は10年以上前でも取り戻せる場合がある？

過払い金には時効があるため「10年以上前の取引では返還請求ができないと」認識していませんか？
実は10年以上前の借入れでも過払い金が戻ってくるケースがあります。
過払い金の時効について正しく知っておきましょう。

過払い金の時効は完済から10年です

過払い金の正確な時効は、借金の完済から10年です。
よく、取引が開始してから10年と勘違いされている方がいらっしゃいますが、そうではありません。
たとえ20年以上前に借入れをした取引であっても、完済から10年以上経過していなければ時効にはならないのです。

例えば、2000年の8月1日に借入れをし、完済したのが2020年の9月30日だったとします。この場合、過払い金の請求ができるのは2030年の9月30日までです。
借金の完済日は過払い金の「時効の起算点」と呼ばれており、過払い金の返還請求上もっとも重要な判断材料となります。

取引が「一連」であれば時効が無効になる

借金を一度完済したものの、再び借入れをした場合、2回の借入れを「一連の取引」として扱うのか、「分断された取引」として扱うのかによって時効や過払い金の金額に変化が生じることがあります。

一連と分断では、過払い金計算の方法が異なるのです。
一連計算では2回の取引をまとめて一つの取引とみなし、過払い金の計算を行います。
一方、分断計算では2回の取引を別々のものとし、別個に計算した過払い金を合計します。

最初の取引が10年以上前に完済している場合、分断計算を選択してしまうと過払い金の時効が成立してしまい、請求できる金額が大幅に減る可能性があるでしょう。
一連で計算した場合、最初の取引で発生した過払い金が次の取引に引き継がれるため、時効は成立しません。

つまり、過払い金の金額を大きくしたいのであれば、分断よりも一連で計算するのが望ましいと言えます。

過払い金の時効は裁判で判断が分かれる！取引が分断されてしまうケースとは？

2回同じ業者から借入れを行った場合、過払い金を大きくするためには「一連」で計算する必要があります。
では、取引が分断されてしまうのはどのようなケースなのでしょうか。

取引の間隔が1年以上ある

過払い金の返還請求を行うと、ほとんどの賃金業者は過払い金の減額や時効消滅を訴えてくるため、借りた人の希望がスムーズに通ることはまずありません。
そのような場合には、裁判所に訴訟を提起して判決を受けることになります。

2回の借入れを一連の取引と判断するかどうかは、裁判官によって意見が割れます。
100日以上と言う人もいれば、300日以上と言う裁判官もいます。
しかし、多くは最初の取引と次の取引までの間隔が1年以上空いていれば「分断」と判決される確率が高くなるでしょう。

具体的なケースでご説明します。

・最初の取引を2011年の7月31日に完済した
・3年後の2013年8月1日に同じ賃金業者と2回目の取引を開始した
・2回目の取引を2018年9月15日に完済した

上記の場合では、2つの取引は分断とみなされます。

2022年に過払い金の返還請求を行ったとしても、既に１１年が経過しており最初の取引は時効が成立するため，最初の取引についての過払い金が戻ってくることはありません。
また、2回目の取引については、時効が成立する2028年9月15日までであれば過払い金の返還請求を行うことができます。

借金の基本契約書が複数にわたる

借金を一連とするか分断とするかは、裁判で大きな争点となります。
取引の間隔のほかにも、借金を申し込む際に基本契約書をどのように交わしたかも判断材料として扱われます。
同じ業者と2回目の取引を行う際、最初の取引と同じように契約書を締結し直した場合、取引は分断とみなされる可能性が高いです。
逆に、同一の基本契約書で取引を開始した場合は一連と判断される傾向にあります。

例えば、消費者金融からの借入れでは、次の取引までのブランクが1年以内であれば一連性が認められることが多いですが、新規に契約書を交わしていると中断期間により分断されることがあります。

過払い金の時効は判例もさまざまです。
同じ基本契約書で取引していても、次の取引までのブランクが長すぎる場合は一連性がないと判断されることもあります。
新規に基本契約書を交わしていても、双方の内容が類似している場合は一連性が認められることがあるため、ケースバイケースです。

クレジットカードで1回払いを選択している

クレジットカードのキャッシングサービスを利用している場合では、消費者金融との取引に比べ、分断とみなされるケースが少ないです。
返済方法にもよりますが、リボ払いでは一連性があるとされやすく、一括払いではブランクが短くても分断になりやすい傾向にあります。

カード会社によっても条件が異なる場合があるため、過払い金が発生するかどうかは発行元の信販会社に確認する必要があるでしょう。