援用の意味とは？時効援用の条件や流れもチェック

時効援用の意味とは？借金の消滅とどんな関係がある？

援用という言葉には2つの意味があります。
一つは、自分の主張の助けとするため、他の意見や文献などを引用したり、事例を示したりすること。
もう一つは、ある事実を自己の利益のために主張することです。
では、「時効援用」とはどのような意味を持つのでしょうか。

時効の援用とは、債権者(クレジットカード会社や消費者金融などお金を貸した人)からの請求に対し、「時効を迎えたため借金の返済は行わない」と意思表示することを言います。
債権者に時効の援用をしなければ、たとえ時効の期間が過ぎていたとしても、借金を消滅させることはできません。

時効援用を成立させる3つの条件を解説

借金を消滅させるためには、時効援用を成立させなければなりません。
時効援用の成立には次に挙げる3つの条件が必要となります。

借金の消滅時効の期間が経過している

法律によって、借金には消滅時効と呼ばれる時効が定められています。
時効援用を成立させるための1つ目の条件として、消滅時効の期間が経過していることが挙げられます。

2020年4月より改正民法が施行されたことにより、借金をした日付によって借金の消滅時効の期間は2通りあります。

・2020年3月31日以前の取引
改正前の民法に則り、「権利を行使することができる時から10年間」となります。
ただし、債権者が賃金業者(消費者金融や銀行など取引を営業行為とする者)である場合、「権利を行使することができる時から5年間」です。

・2020年4月1日以降の取引
改正後の民法に則り、「権利を行使することができる時から10年間」または「権利を行使することができることを知った時から5年間」の早い方が適用されます。

債権者に裁判を起こされていない

債権者がお金を借りた人(債務者)に対して裁判を起こすと、借金の時効期間はリセットされてしまいます。
これを法律上で「時効の更新」と呼びます。
時効の更新があると、経過した時効期間がゼロに戻るため、時効援用が成立しなくなるのです。

支払督促や民事調停、家庭調停、破産手続きの参加など裁判所を介した請求が行われることで時効の更新が起きますが、債権者による財産の差押えや仮差押え、仮処分が行われた場合も同様です。

借金があることを認めていない

債権者に借金があることを認めることを、法律上「債務の承認」と呼びます。
これを行わないことが、時効援用を成立させる3つ目の条件です。

以下に挙げるいずれかの行動を起こしてしまうと、債務の承認を行ったとみなされ、時効が更新されてしまうため注意が必要です。

・借金の一部を返済する
・借金がある旨の文書を書く
・「返済を待ってほしい」「分割にしてほしい」などと伝える

時効援用の手続きの流れをチェック

時効援用成立の条件が揃っただけでは、借金を消滅させることはできません。
時効援用の手続きを行う必要があります。
ここでは、金融機関からの借り入れを例に、時効援用の手続きの流れをご説明します。

時効を調べる

借金が時効を迎えているかを知るために、信用情報機関に信用情報の開示を請求します。
代表的な信用情報機関はCICやJICC、KSCなどです。
信用情報を見れば、カードローンを含めた現金以外の取引の記録が分かるため、時効の期間が計算できるようになります。

時効援用通知書を作成・送付する

時効を迎えていることが分かったら、債権者に「時効援用通知書」の送付を行います。
作成する際は、以下の項目を記載するようにしてください。

・通知書を送付した日付
・債権者の会社名や住所、代表者名
・債務者の氏名や住所、生年月日
・借入日時、金額
・契約番号もしくは会員番号
・時効が完成していること
・時効を援用すること
・信用情報の登録情報を削除してほしい旨

時効援用通知書は、いつ・誰が・どんな内容の書類が郵送されたかを証明してもらえる「内容証明郵便」で送付します。

消滅時効が成立する

消滅時効の完成を債権者が確認すると、時効援用の手続きが完了し、借金は消滅します。
時効援用通知書を送付した後、債権者から受け取りの連絡が来る場合もありますが、債務の承認を行わないように対応することが重要です。

連絡がない場合、債権者は時効の援用を認めたことになります。
時効援用の手続きには2～3週間かかるのが一般的ですが、1ヵ月以上を要するケースもあります。

なお、信用情報に記載がある延滞の記録は、信用情報機関によって消えるタイミングが異なります。

時効援用にデメリットはある？弁護士に相談すべき？

「借金を帳消しにできる」「信用情報から事故情報が削除される」などのメリットがある時効援用ですが、デメリットはあるのでしょうか。

債務の承認とみなされる可能性がある

借金の消滅時効を迎える前に時効援用通知書を送ってしまうと、内容によっては借金があることを認めたとみなされ、時効の更新が起きる可能性があります。

遅延損害金が発生する恐れがある

長年借金を滞納していると、利息だけでなく損害遅延金も加算されています。
万が一時効が成立しなかった場合、多額の金銭を請求される恐れがあります。

弁護士に相談すればリスクはない

時効援用に失敗すると、借金が帳消しになるどころかすべての損害遅延金を支払わなければならなくなります。
しかし弁護士に相談すれば、時効計算や時効援用通知書の送付などが任せられます。

弁護士費用の相場は4～10万円程度、自分で時効援用を行う場合に比べて費用はかかりますが、時効援用に失敗するリスクは避けられます。

法律に詳しくない方、自分で手続きをするのが不安な方は、弁護士に相談するのが望ましいでしょう。