保証債務とは？保証人のリスクや権利について解説

保証債務の履行義務が発生する条件は何か

ご自身は借金をしていなくても、保証人になっていることで弁済への不安は常に付きまとうことでしょう。
では、実際に保証債務の履行義務が発生する条件とは何でしょうか。

保証人になるための財力がある

先に申し上げたように、保証債務は主債務者が返済できない借金を保証人が弁済する債務のことをいいます。

保証債務においての担保(不利益が生じた場合に備え、予め補うことを保証するもの)は、保証人の財力です。
不動産や自動車などの物的担保ではありません。
そのため、保証債務は人的担保と呼ばれることもあります。

保証人は親族から選任されるのが一般的ですが、人的担保により保証することを前提に選ぶ必要があるため、一定の経済力を求められます。
例えば、未成年や無職で収入の無い人、住所不定の方などは保証人にはなれません。

書面や電磁的記録による保証契約がある

主債務者と保証人が保証委託契約を、保証人と債権者が保証契約を結ぶことで保証債務が成立します。

しかしながら、保証契約の事実を証明するには書面あるいは電磁的記録が必須となります。
2004年の民法改正によって義務付けられました。
つまり、口約束などで締結することはできないのです。

保証債務で保証人に与えられている4つの権利

保証債務が発生すると、債務だけでなく、債務によって生じる利息や違約金、損害賠償にいたるまで、すべての返済義務を負う可能性があります。

しかし、それでは保証人のリスクが高くなってしまいます。
保証人のリスクを回避するため、保証債務はあくまでも主債務者が履行しない場合に起こる二次的な債務であることを表した「補充性」と呼ばれる性質を持ちます。
補充性により保証人に与えられている4つの権利を挙げていきましょう。

催告の抗弁権(民法452条)

債権者が主債務者ではなく保証人に履行の請求をした場合、「先に主債務者に請求してください」と言うことができる権利です。
一時的に弁済の請求に抵抗することができます。
ただし、主債務者が自己破産の手続きを開始している、あるいは行方不明になっている場合には行使できません。

検索の抗弁権(民法453条)

保証人が債権者から履行の請求を受けた場合、主債務者に財産があることを証明し、「債務者に請求してください」という権利です。
こちらも、催告の抗弁権と同じく、一時的に弁済の請求に抵抗することができます。
ここでいう財産というのは、現金のほかに預金や不動産、自動車、給料なども該当します。

分別の利益(民法456条)

保証人が複数いる場合を共同保証といいます。
共同保証では保証債務を1人に負わせるのではなく、人数で平等に分けた金額をそれぞれ分担するという権利が行使できます。

例えば、債務が1000万円ある場合、2人の保証人で500万円ずつ保証するという形です。
1人の借金を2人で返していくというイメージでしょう。

求償権(民法459条)

保証人が主債務者の債務を弁済した後に行使できる権利です。
求償権では、保証人がかわりに支払った分を主債権者に返還を求めることができます。

保証人と連帯保証人との違いは？

保証人と一言でいっても、その種類は条件によっていくつかあります。
混同されがちですが、単なる「保証人」は通常保証人と呼ばれ、俗にいう「連帯保証人」とは全くことなるものです。

前項で説明した催告の抗弁権、検索の抗弁権は、保証人が行使できる権利であり、連帯保証人には行使する権利がありません。
つまり、連帯保証人はどんな場合でも保証債務の請求を拒否することができないのです。

また、分別の利益も権利が無いため、自分の負担分を超えて弁済しなければ、ほかの連帯保証人には求償することができません。

例えば、債務が1000万円あり、債務が連帯保証人になっている共同保証人が2人いた場合、各人が1000万円ずつ保証債務を負うことになります。

ただし，求償権については、保証人同様行使が可能です。
複数いる場合には、主債務者や他の連帯保証人に対して権利を行使することができます。

まとめ

法律上、連帯保証人は主債務者と同じ責任を負う者とみなされるため、非常にリスクが高いといえるでしょう。
家族や親しい友人などに連帯保証人を頼まれても、すぐに契約してしまわないようにしてください。
保証債務で困った時は、法律に詳しい専門家に相談することをおすすめします。