国が認めた借金返済の支援制度とは?制度の内容や注意点を解説します
インターネットや新聞広告などで、「借金返済制度」「全国返済支援策」などの文字を見たことがある人は多いと思います。
借金返済制度は、借金を抱える人の支援策であり、借金を減額するあるいは支払いを免除するためのものです。各市区町村や法務省などでも相談を受け付けているように、国が認めた借金返済の支援制度ですので、違法ではありません。
借金返済に困っている人は、支援制度の内容をよく理解し、利用を検討してください。
国が認めた借金返済の支援制度とは?
借金に悩んでいる人は、借金返済の支援制度の利用を検討されると同時に、詐欺ではないかと疑ってしまうかもしれません。
しかし、実際には国が認めた合法的な制度であり、年間200万人の人が利用しているといわれています。
「国が認めた借金返済の支援制度」はあくまでも広告的な表現方法であり、正式には債務整理や過払い金返還請求という言葉が使われます。
債務整理の最大のメリットは借金の減額や免除ができることであり、すべての借金を対象にできます。
例えば、消費者金融やカード会社からの借り入れ、銀行ローン、クレジットカードのショッピング利用分、奨学金、個人間の借金が挙げられます。
借金返済の支援制度は5種類
借金返済の支援制度には債務整理と過払い金返還請求に二分されますが、債務整理はさらに4種類に分けられます。
種類によって手続きの方法が異なり、それぞれにメリットやデメリットがあるため、よく理解して検討する必要があります。
任意整理
債権者と交渉することで将来利息をカットし、元金を3~5年で返済する方法です。
元金は減額されませんが、月々の返済額が減って返済期間も延長されるため、無理なく返済していくことが可能になります。
任意整理のメリット
・毎月の返済額が減るため精神的な負担が軽くなる
・裁判所を通さないため比較的短期間で済む
・借金を整理する債権者を選べるため保証人に影響がない
・家族や会社にバレる可能性が低い
・車や住宅が回収されない
任意整理のデメリット
・元金はカットされない
・借金完済から5年程度は信用情報機関に事故情報が登録される
・返済のために安定した収入が必要
・交渉力が必要(通常は弁護士に依頼する)
信用情報機関に事故情報が登録されている期間は、新たな借り入れやクレジットカードの利用ができなくなるため注意が必要です。
個人再生
裁判所に申し立てることで借金を1/5~1/10程度に減額し、3~5年で返済する方法です。
個人再生には、大幅に減額できる小規模個人再生と減額幅が少ない給与所得者等再生の2種類があります。
債権者の過半数の同意が見込めない場合などに、給与所得者等再生が利用されます。
個人再生のメリット
・元本を含めた借金額を大幅に減らせる
・住宅ローン特則で住宅を残せる
・借金の理由を問われない
個人再生のデメリット
・裁判所を通すため期間が長くなりやすい
・借金を整理する債権者を選べない
・借金完済から5~7年程度は信用情報機関に事故情報が登録される
・返済のために安定した収入が必要
・国が発行する官報に住所、氏名が掲載される
大幅な借金減額が期待できる反面、任意整理に比べるとデメリットが多いです。
どうしても住宅を残したい方に向いています。
自己破産
裁判所に申し立てることで借金のすべてを帳消しにする方法です。
返済不能に陥った時の最後の手段として用いられますが、免責不許可事由に該当する場合は利用できません。
<免責不許可事由の一例>
・浪費やギャンブルで借金を負った
・裁判所の調査に協力しない
・債権者を害する目的で財産を減少させた
自己破産のメリット
・すべての借金の返済義務がなくなる
・生活必需品や99万円以下の現金は残せる
・無職や生活保護受給者でも利用できる
自己破産のデメリット
・借金完済から5~10年程度は信用情報機関に事故情報が登録される
・国が発行する官報に住所、氏名が掲載される
・高額(20万円以上)の財産は回収される
・免責が決定されるまで職業や資格に制限がかかる
財産の一部を処分する必要がありますが、借金を帳消しにして生活を再出発したいという方に向いています。
特定調停
裁判所に仲介してもらい債権者と交渉し、返済計画を立て直す方法です。
将来利息をカットして毎月の返済額を減らす点では任意整理と共通していますが、専門家に依頼せずご自分で手続きをするのが一般的です。
特定調停のメリット
・弁護士費用が不要
・毎月の返済額が減るため精神的な負担が軽くなる
・調停委員に交渉を代行してもらえる
特定調停のデメリット
・借金完済から5年程度は信用情報機関に事故情報が登録される
・裁判所に何度も出廷する必要がある
・不成立になる可能性が高い
特定調停の成功率は14%前後といわれており、話し合いがまとまらないリスクがあるのが難点です。
過払い金返還請求
債権者に法律の上限を超えて支払った利息を返還してもらうよう請求する方法です。
2010年6月以前に借金をした場合は、グレーゾーン金利(利息制限法の上限金利15~20%と出資法の上限金利29.2%の間)で借り入れをした可能性があるため、過払い金が発生している可能性があります。
過払い金返還請求のメリット
・払い過ぎた利息を取り戻せる
・返金された利息を借金返済に充てられる
過払い金返還請求のデメリット
・借金が完済できない場合、借金完済から5年程度は信用情報機関に事故情報が登録される
・手続きを行った会社で借り入れができなくなる
・自分で交渉するのが難しい
借金そのものを減額する方法ではありませんが、過払い金で借金が完済できれば、事故情報にも影響しないため、メリットは非常に大きいです。
借金返済に困ったら貸付制度も検討する
借金返済に困った時は、借金返済の支援制度と同時に公的機関の貸付制度の利用も検討してみましょう。
基本的に、債務整理は返済不能に陥った人が借金を解決する手段ですから、一時的に生活が困窮している場合や、借金を完済する見込みがある場合は、公的機関の貸付制度を利用した方がデメリットは少ない可能性があります。
ここでは、利用を検討したい貸付制度をご紹介します。
生活福祉資金貸付制度
低所得者世帯、障害者世帯、高齢者世帯を対象とした貸付制度で、連帯保証人を立てる場合は無利子で、立てない場合は年1.5%の金利で借り入れができます。
貸付資金の種類は4つあります。
①総合支援資金
生活支援費、住宅入居費、一時生活再建費
②福祉資金
福祉費、緊急小口資金
③教育支援資金
教育支援費、就学支援費
④不動産担保型生活資金
不動産担保型生活資金、要保護世帯向け不動産担保型生活資金
それぞれ貸付条件が異なるため、詳しくは各地域の社会福祉協議会でご相談ください。
緊急小口資金
生活福祉資金貸付制度の一部で、「緊急かつ一時的に困窮する世帯の自立」を支援するための貸付制度です。
貸付上限額は10万円以内、返済期間は12ヵ月以内という条件がありますが、連帯保証人不要かつ無利子で借り入れができます。
・対象となる世帯
①低所得世帯である
②急いで資金を必要としている、または一時的な生活困難である
③返済の見通しが立つ
・利用できない世帯
①生活保護世帯
②収入がない世帯
③多額の借金がある、債務整理中もしくはその予定がある世帯
上記はあくまでも一例ですので、詳しくは各地域の社会福祉協議会でご相談ください。
まとめ
今回は、国が認めた借金返済の支援制度として、債務整理や過払い金返還請求の内容をご説明しました。
これらの制度はご自分で手続きを進めることも可能ですが、実際には多くの書類や裁判所への申立てが必要になり、手間も時間もかかります。
また、任意整理においては債権者との交渉をしなければならず、個人での交渉は不利な条件での和解となる可能性があるため、ほとんどの方は弁護士に依頼しているのが実情です。弁護士に依頼すると、債権者に対して受任通知が送られ、督促行為ができなくなります。
借金返済の支援制度の手続きをスムーズに進めたい、債権者からの督促に困っているという方は、お早めに法律事務所に相談されることをおすすめします。
借金問題担当弁護士
村上 和也
プロフィール
同志社大学卒。平成20年より事務所開設し、守口市・門真市を中心に大阪で借金問題に関する相談多数。自己破産(法人・個人)・民事再生・任意整理・通常清算・過払い金返還請求・消滅時効の援用など。
弁護士からのメッセージ
借金問題を放置することは、総弁済額が増えたり、裁判対応が必要になるなど、デメリットがでてきます。状況はお一人お一人違います。あなたに合った方法で債務整理をお手伝いします。
ささいなことでも結構ですので,お早めにお問い合わせください。