【Q＆A】金銭消費貸借契約の返済で、貸主が領収書を発行しない場合、支払いを拒否できる？

Q25、金銭消費貸借契約で毎月決められた日に返済をしています。しかし貸主が領収書の発行に応じてくれません。支払いを拒否することは可能ですか？

A25、領収書が交付されないという理由で支払いを拒否できます。

貸金業者は、支払いを受けた場合、その都度すぐに「受け取った」という証明ができる「書面」を交付する必要があります。その書面が、「受取証書」や「領収書」になります。

ただ、銀行振込にて支払いをした場合には債務者が請求をしたときに限って、交付しなければならないというルールがあります。

そして、交付されるべき書面には下記の項目が記されていなければなりません。

・支払った金額
・支払い年月日
・利息にいくら支払ったか
・元本にいくら充当されたか

このような内容について書面に記載することが義務付けられています。
そのため、「返済したのに領収書を交付しない」「銀行振込で支払い、領収書を請求したのに交付しない」といった場合や、「交付された領収書に必要な項目が記載されていない」「領収書に虚偽の内容が記載されている」といった場合、貸金業者は罰せられます。 具体的には「1年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられるか、併科されることになりますので、行政庁に苦情の申し立てをするといいでしょう。

それでは、貸金業ではない個人からの借金の場合はどうなのでしょうか。
個人が貸主になっている場合でも、借主が貸主に領収書を発行してほしいと請求をすることが可能です。

もし、貸主が領収書の請求に応じない場合（正当な理由がなく交付しない）には、借主は「領収書を発行してもらえないなら支払えません」と、返済を拒否することができます。 このことを「同時履行の抗弁権」といいます。この権利は、借主が二重の支払いを請求されないように「特例」として認められているものです。

今回のケースの場合、領収書を交付してもらえないという理由で支払いを拒否することが可能です。そして、拒否をしても「履行遅滞」にはなりませんので、「遅延損害金」の支払いも不要です。

ただし、お金を借りるときに貸主と借主の間で「領収書を発行しない」という特約があった場合には、貸主に領収書の発行義務は生じません。ですから、交付してもらえないことを理由に返済の拒否をすることはできません。

また最終返済にて「借用証書」の返還と引き換えにして、支払いの拒否をすることも不可能です。
それは、支払いの証拠は領収書を交付することで十分に事足りるとされているからです。<br.そして、貸主が借用証書を紛失したときに、借主が返済の拒否をすることは不当とされているからです。

このような理由から、借用証書の返還と返済は同時履行の関係性にないと判断され、支払い拒否は不可能となっています。

領収書を交付してもらえた場合には、支払った証拠になりますので、下記内容が記載されているかしっかり確認しましょう。

・返済年月日
・返済金額
・受領文言（〇月分返済金を受領しましたという内容）の記載
・貸主の記名押印

ちなみに銀行振込で支払っている場合には「利用明細」が領収書の代わりになりますので、捨てたり紛失したりしないように気を付けてください。