偏頗弁済とは？債務整理のリスクや該当する返済を解説

偏頗弁済とは？

偏頗弁済とは、借金をしている相手の中で、特定の相手だけに返済したり担保を提供したりする行為をいいます。

借金を抱えた時、友人や知人からお金を借りる人は少なくありません。
友人や知人からお金を借りていると、後ろめたさもあり、できるだけ早く借金を返済したいと思うでしょう。
また、そうすることで今後の信用度も回復するように思えます。

しかし、特定の相手だけに借金を返済するのは詐害行為と見られ、債権者取消権に該当する可能性があるのです。
借金を全額返済するだけではなく、一部の額だけでも返す行動はすべて「偏頗弁済」にあたるため気をつけなくてはいけません。

偏頗弁済は原則禁止！

個人再生や自己破産の債務整理では、原則「偏頗弁済」は禁止です。
禁止とする理由は、債権者平等の原則といって、お金を借りる相手側へ平等に返済する必要があるからです。

例えば、複数の人からお金を借りていて、特定の相手にだけに多く返済する行為。
最終的に全員に借金返済するとしても不平等な返済であることから「偏頗弁済」と判断されます。

偏頗弁済は債務整理に大きなデメリット

個人再生や自己破産手続き中に借金の一部を返済すると、次のようなリスクがあります。

偏頗弁済になることを知らなくても、手続き中に返済すると大きなデメリットとなるため、気をつけましょう。

偏頗弁済すると返済額が増える理由

自己破産の場合、偏頗弁済をすると申立が認められず返済額は変わらないというのが大きなリスクですが、個人再生の場合は返済額がアップする可能性があります。

個人再生は「簡単に素早く借金返済の問題を解消し、生活再生をサポートする」手続きです。
そのため、否認権に対する規定適用はありません。
個人再生の手続きをすると、今の借金を5分の1に縮小し、縮小した額を原則3年（最長5年）の間に分割返済します。

さらに、清算価値保障原則といって、現在保有する資産をお金の価値に変えた清算価値の総額が、最低弁済基準の産出額よりも高い場合、清算価値の総額を返済しなくてはいけません。

個人再生中に偏頗弁済すると、清算価値に返済した額をプラスするため、縮小した借金額よりも「清算価値プラス偏頗弁済」の方が高くなり、本来よりも返済額が増える可能性があるのです。

偏頗弁済の未申告で手続きできない

家族や親戚など借用書の作成なく借金をしている場合、偏頗弁済しても個人再生や自己破産の手続きでバレないと思う人は多いでしょう。

しかし、個人再生や自己破産の手続きでは、給料明細書や通帳のコピーなど、現在のお金を裁判所が把握しています。
あるはずのお金がなく、弁護士や裁判所への費用が支払えないなどの理由から、偏頗弁済はすぐバレます。

偏頗弁済したのに未申告で手続きを進めると、再生計画案の作成ができなくなり、すべての手続きを受理してもらえない可能性があります。
借金を減らす、またはゼロにすることができないのは、今後の生活にとって大きなデメリットでしょう。

偏頗弁済に該当する返済

多くの人が行ってしまうのが、身近な人への借金返済です。
個人再生や自己破産の手続き中、さまざまな理由で返済を求められることもあるでしょう。
その時に手元にお金があると、今後の付き合いから返済を急ぎがちです。

また自動車や住宅などは、自己破産すると保有できない、個人再生は所有権がローン会社の場合は引き上げられるため、先にローン完済をする人もいます。

これらの行動は偏頗弁済に該当するため、リスクを考えた行動が必要です。

偏頗弁済に該当しない返済

家賃滞納は退去を求められる可能性が高く、生活再生に向けた行動に支障を与えます。
偏頗弁済は特定の相手への返済を禁止していますが、自己破産や個人再生は経済的な再生に向けた手続きのため、該当しないケースが高いです。

また、借金返済で生活が困難でも、毎月支払いが必要な水道光熱費や携帯電話などの生活必需品は、家賃と同じ扱いで認められます。

もし偏頗弁済をした場合は？今すぐできる対策

「借金返済額を少しでも減らしたい」
「お金を借りている相手との関係性を壊したくない」
など、さまざまな理由から手続き中にも関わらず偏頗弁済をしてしまった場合は、どうしたら良いのでしょうか。

このような時は、次のような対策を取りましょう。

偏頗弁済はリスクが大きいので、返済できない理由や手続きが終わるまで自分の財産が減らないように周囲を頼るなど、状況に合わせた行動が大切です。

まとめ｜偏頗弁済に気をつけて借金を整理しよう

偏頗弁済と知らなかった場合でも、裁判所は偏頗弁済をなかったことにはできません。
自己破産や個人再生によって、本来であれば縮小できるはずの借金も、勝手に返済をすると偏頗弁済でペナルティを受けて、メリットを享受できない可能性があります。

借金の返済は、勝手な判断が大きなトラブルを招くこともあります。
自己判断で進めるのではなく、必ず弁護士に相談しましょう。