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弁護士コラム

自己破産手続中に故人名義の不動産が発覚した場合

2020年02月17日|借金問題, 弁護士コラム

1 亡父親名義の不動産の発覚

自己破産手続のご依頼を頂いた件で,破産手続にあたり依頼者の財産関係を調査している最中,依頼者の居住する不動産が,依頼者の亡父親名義のままになっており,相続による名義変更が行われていないことが判明した事案です。

故人名義の不動産がある場合,当該不動産は遺産分割未了の財産としてみなされ,故人の法定相続人全員が共有しているものとされますので,法定相続人はその法定相続分の割合に応じ,当該不動産の一部共有持分を有している扱いになります。

そうしますと,当該不動産の共有持分が破産者の財産と見なされることになりますので,原則として,破産者の有する共有持分を第三者に売却し,売却代金を債権者に配当することで,自己破産手続の終了を目指すことになります。

もっとも,一部共有部分のみの売買については,①売買の取扱い自体少ないこと,②買主が中々つかず,売却までに時間が掛かること,③買主と他の共有者との間で不動産の共有状態が生じ,権利関係を錯綜させる等のデメリットがありますので,当事務所では,上記デメリットを防ぐため,以下のとおり対応しました。

2 亡父親名義の不動産が遺産分割協議済みであることの上申

(1)裁判所への上申

まず,当事務所では,亡父親名義の不動産が遺産分割協議済みであると考え得る余地がないか模索し,以下の理由を付して,遺産分割協議済みであるとの上申を行いました。

ア 遺産不動産の相続権は依頼者らが取得したものの,法定相続人らには不動産登記等に関する知識が欠けており,名義変更を行う必要を認識していなかったこと

イ 市役所より「納税義務者を相続人間で決めてほしい」との指導を受け,依頼者らは母親を納税義務者とすることを決定し,市役所に対し連絡したところ,遺産不動産についての納税義務者は母親と変更され,それ以降現在に至るまで,遺産不動産の固定資産税は母親が支払い続けていること

ウ 依頼者らは,遺産不動産の納税義務者が母親に変更されたことで,遺産不動産の名義変更手続は終了したものと考えており,登記簿上の名義変更手続きを行うことのないまま,現在に至っているという事情があること

エ 依頼者は,上記経緯から遺産不動産が母親の所有であると何の疑いもなく認識しており,自己破産手続の申立てにあたって居住する不動産の登記簿を取得したところ,当該不動産の名義が未だに亡父親名義のままになっていることを初めて知ったこと

オ 以上より,遺産不動産の遺産分割協議は納税義務者を変更した段階で既に終了しており,登記簿上の名義変更がなされていなかっただけの状況であるため,依頼者が現在居住する遺産不動産は依頼者の財産に含まれないこと

(2)裁判所の判断

もっとも,裁判所は,遺産不動産の名義変更手続が行われていない事実を重視し,当該不動産の遺産分割協議は行われていないものとし,依頼者の有する遺産不動産の共有持分について,依頼者自身の財産であるとの判断を行いました。

3 裁判所との間の協議

そこで,当事務所では,上記裁判所の判断を前提に対応を検討することとしました。

(1)故人名義の不動産が発覚した場合の通常の処理

通常,故人名義の不動産がある場合,破産者の有する共有持分のみを売却し,その売却代金を債権者に配当することで,自己破産手続の終了を目指すことになります。

(2)共有持分相当額の組み入れ

しかし,前述のとおり,一部共有部分のみの売買については,①通常不動産の売買は不動産全体を売却することが前提になるため,全体でなく一部共有持分のみの売買は取扱い自体少ないこと,②一部共有持分のみの売買では売却までに時間が掛かることが予想され,売買を終えるまで自己破産手続を終結させることができないこと,③一部共有部分のみの売買が生じた場合,買主と依頼者以外の法定相続人との間で不動産の共有状態が生じ,権利関係を錯綜させること等のデメリットがあります。

そこで,当事務所では,依頼者の母親に援助をしてもらい,依頼者の有する共有持分に相当する金銭を組み入れることで,依頼者の有する共有持分を売却することなく,自己破産手続を終結させる方針を立て,裁判所の納得を得ました。

(3)共有持分相当額の金銭的評価

次に問題となったのは,依頼者の有する共有持分相当額の金銭的評価でした。

一般的には,遺産不動産全体の査定額を取得し,不動産全体の査定額に依頼者の共有持分に相当する割合を乗じ,共有持分に相当額の金銭的評価を行います。たとえば,不動産全体の査定額が1000万円,破産者の有する共有持分が4分の1であれば,1000万円に共有持分4分の1を乗じ,250万円が共有持分相当額となります。

もっとも,通常,一部共有持分のみを売却する場合,買主は,当該不動産の利用・処分等,所有者の権限に大きな制限を受けることになりますので,その点を考慮して一部共有部分のみの売却金額は低額になりやすいものと言えます。

にもかかわらず,不動産全体の査定額に依頼者の共有持分に相当する割合を乗じ,共有持分相当額を算出する方法は社会通念から見て適当ではありません。

そこで,当事務所では,①不動産の一部共有持分のみを売りに出した場合,買い手がつかず結局売却価格を下げなければならない可能性が高いこと,②一部共有持分のみの売却の場合,上記事情から売却代金が低額になることを主張し,共有持分相当額の金銭的評価を低下させ,低下させた評価額に相当する金銭を依頼者の母親に援助してもらうことで,自己破産手続を終結させる運びになりました。

4 総括

本件では,亡父親名義の不動産が発覚した事案であるにもかかわらず,①遺産不動産の売却という方法をとらず,かつ②共有持分相当額の金銭的評価を低下させた上,自己破産手続を早期に終結させることができました。

自己破産手続においては,破産者の財産及び負債を弁護士が調査することになりますので,このような例外的事由が発生することもままあります。

当事務所では,自己破産手続等の債務整理案件を数多く取り扱っておりますので,依頼者の状況に応じて,適切に対応することが可能です。

借金のことでお悩みの場合,守口門真総合法律事務所までお気軽にご相談ください。

 

 

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事業承継について―会社の10年後の将来像について語り合える後継者候補はいますか。

2020年02月10日|企業法務, 弁護士コラム

1 「人手不足」関連倒産

2020年1月,東京商工リサーチは,2019年の企業の倒産状況につき,「人手不足」関連倒産は426件(前年比10.0%増)で,調査開始以来最多を記録したことを発表しました(http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200109_01.html)。「人手不足」関連とは,代表者や幹部役員の死亡等による「後継者難」(270件。構成比63.3%)をはじめとし,「求人難」(78件。構成比18.3%),「従業員退職」(44件。構成比10.3%),「人件費高騰」(34件。構成比7.9%)と続いています。

「人手不足」関連倒産の増加傾向をみると,事業の継続ができるにもかかわらず,後継者等の人材を確保することができずに,廃業を選択せざるを得ない状況が増加している実態があります。廃業となると,これまでの事業運営で培ってきた貴重な経営資源が失われてしまうことになります。

2 中小企業の経営者の約4割が65歳以上

そして,現在,中小企業の経営者のうち,65歳以上の経営者が全体の約4割を占めており,今後数年で,多くの中小企業が,事業承継にあたって,後継者問題に直面するといって過言ではありません。

取引先とのつながりや経営に関する様々なノウハウ,従業員などの貴重な経営資源を守りながら,中小企業が活躍していくためには将来を見据えた計画的な事業運営が欠かせません。中小企業が今後も事業を継続・発展させていくために,次世代にスムーズに「事業承継」を進めることが必要となってきています。

スムーズな事業承継のためには,自社株式の取得に伴う相続税や贈与税の負担,経営権の分散リスク,事業承継後の資金繰りなどの様々な課題に対応することが求められます。

3 事業承継に伴う経営権の分散リスク

会社の経営権を安定させるためには,後継者に集中的に自社株式を承継することが望ましいですが,何らの対策をしなかった場合,遺産分割協議の結果やほかの相続人からの遺留分減殺の請求によって,自社株式の保有者が分散してしまうリスクがあります。

4 経営権分散を防止する事前の対策

① 先代経営者から後継者へ生前贈与

自社株式の分散を防止するための最もシンプルな方法は,経営者が生きているうちに後継者へ承継を進めておくことです。

自社株式の生前贈与には,贈与税が課税されますが,暦年課税制度や,相続時精算課税制度,事業承継税制を活用することで,贈与税の負担軽減を図ることが可能です。

 

② 安定株主(役員・従業員持株会)の導入

後継者が総ての株式を取得することが税負担の問題で困難な場合,他の者に承継させることとなります。このような場合には,基本的に現経営者の経営方針に賛同し,長期間にわたって保有を継続してくれる株主(安定株主)を導入する方法があります。候補としては,役員・従業員持株会などが挙げられます。

 

③ 遺言の作成

先代経営者が遺言を残しておくことは,相続争いや遺産分割のトラブルを回避することに有効です。先代経営者の意思に適った相続を期待することができます。

遺言を作成するには,法律上の要件を満たしている必要があるほか,相続させる対象を特定する必要があります。

 

④ 遺留分減殺請求を踏まえた生前対策

遺言を作成していても,後継者となる相続人だけにすべての財産を相続させて,それ以外の相続人には一切相続させないというような遺言の場合には,後継者以外の相続人から遺留分減殺請求がなされる可能性があります。遺言を作成する際には,遺留分減殺請求の権利を有する相続人に配慮する必要があります。

また,遺留分減殺請求にかかる紛争防止のため,中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律では,遺留分に関する民法の特例が設けられています。

後継者を含めた推定相続人全員の合意の上で,先代経営者から後継者に贈与等された自社株式について,一定の要件を満たしていることを条件に,遺留分の算定の基礎となる相続財産から除外したり,株式の評価額を固定したりするなどの取り決めが可能となっています。これにより,後継者が確実に自社株式を承継することができます。

 

⑤ 種類株式の発行

経営者の相続財産の大部分を株式が占める場合,後継者に株式を集中させると,他の相続人から遺留分の主張が行われる可能性があります。おこで,後継者には,普通株式を相続させ,他の相続人には無議決権株式を相続させることで,遺留分減殺請求による株式(議決権)分散リスクの低減を図ることができます。

5 その他の対策

事前の対策には,上記のほかに,信託の活用や,持株会社の設立といった対策もあります。

株式などが分散してしまった後の事後的な対策としては,自社株買いに関するみなし配当の特例を活用して,会社法上の制度として相続人等に対する売渡請求,特別支配株主による株主等売渡請求などの手段をとることもできます。株主の把握のために名義株・所在不明株主の整理などを行う必要があるかもしれません。

6 事業承継の相談は守口門真総合法律事務所へ

守口門真総合法律事務所では,事業承継に関するご相談を承っております。上記のとおり,事業承継は専門的知識を要し,また一朝一夕で完成するものではなく,長期的な視点で検討する必要があります。

弁護士は,事業承継を検討するにあたり,経営権の分散リスクに対する事前の対策をとることができます。対策をとる事前の相談から,事前対策の実施,事業承継を実施するに際しての法的問題点の抽出,解消につき支援することができます。また,中小企業や経営者の代理人として,事業承継を進めるにあたり,金融機関や株主,従業員等の利害関係者への説明・説得を行い,円滑な事業承継を進める役割を担います。

守口門真総合法律事務所では,協力税理士がおりますので,事業承継に関するご相談についてワンストップにてお受けすることができます。

 

本テーマの副表題「―会社の10年後の将来像について語り合える後継者候補はいますか。」について,候補者候補がいる方もいない方も,ぜひ守口門真総合法律事務所へご相談ください。

 

事業継承や契約書作成などの企業法務のご相談やお問合せはぜひお任せください。
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解決事例(遺留分減殺請求)

2020年01月27日|相続, 解決事例

1.事案の概要

相談者は,弊所へ相談に来られる9か月前にお父様が亡くなられましたが,お父様が生前に公正証書遺言を作成していたという事案でした。法定相続人は,相談者以外にお母様と弟の2名,つまり合計3名で,法定相続割合は,相談者が4分の1,お母様が2分の1,弟が4分の1となりますが,公正証書遺言により,自宅不動産を母に,それ以外の不動産や預貯金といった遺産については全て弟に相続させるという内容で,相談者は一切遺産を受け取ることができないという状況でした。

もっとも,このような場合でも,法定相続人に対する最低限度の保障として,遺産の中から遺留分に相当する財産を取得する権利(「遺留分減殺請求権」といいます)が認められています。本件において相談者に認められる遺留分割合は遺産の8分の1でした。

相談者も,相談に来られる前にご自身で遺留分減殺請求をしていましたが,母及び弟より何ら返答が得られなかったため,当事務所にご相談に来られました。

2.遺留分減殺請求の交渉,調停及び訴訟

(1)遺留分減殺請求の交渉

遺留分減殺請求権については,相続が始まる時、または減殺すべき贈与または遺贈があることを知った時から、1年以内に請求しなければなりません。そこで,既に相談者がご自身で遺留分減殺請求をしていましたが,改めて弁護士からも遺留分減殺請求をするとともに,和解の提案をいたしました。

しかし,相手方らにも弁護士が就任し,和解に応じることは出来ない旨の回答があったため,直ぐに調停申立を行いました(遺留分減殺請求案件は、まず調停での解決を図るのが原則となっています)。

(2)調停における交渉

本件において,公正証書遺言により弟が相続した不動産については,賃貸不動産として使用されており,当然家賃が発生していましたが,家賃については,被相続人が直接現金で受け取っており,回収した家賃についても,当方で取得した被相続人の預金通帳の取引履歴には何ら残っていない状態でした。

もっとも,被相続人は,亡くなる約4年程前から施設に入所しており,家賃を回収することは現実的に困難な状況であったため,同不動産を相続した弟が,既に生前から家賃を回収していたと考え,回収家賃分についても遺産に含まれ,遺留分減殺請求の対象となることを主張しました。

これに対し,相手方らは,回収した家賃については被相続人の施設費用等に充てたため,残っていないとの反論をしたため,当方からその使途及び金額について当根拠資料の提出を求めましたが,これに応じませんでした。

そこで,当方から,調停段階における早期解決を図るために,相手方の遺留分侵害額約1000万円を支払うことでの金銭的解決を目指しましたが,相手方からはその半額程度の支払しかできない旨の回答があったため,調停は不調とし,訴訟提起をしました。

 

(3)訴訟による解決

訴訟段階でも調停時と同様に回収家賃分の使途について根拠資料の提出を求めました。この時,調停段階の主張に加え,被相続人の預金通帳の取引履歴を精査し,被相続人の出費項目及び金額を表にまとめて提出することで,相手方の主張に基づいたとしても,回収家賃分が被相続人の支出によって全て費消されることはないことを説得的に主張しました。これによって,裁判所からも相手方らに根拠資料の提出するよう指示があり,相手方らより根拠資料の提出がなされ,回収家賃の使途等が明らかにされました。

その上で,裁判所から和解による解決が提案され,相手方らより相談者に対して,代償金として850万円を支払うという内容で和解が成立しました。当初調停段階で,相手方が提示していた金額を大きく上回る内容で解決をすることが出来ました。

3.結語

本件では,相談者も,当初の相手方の提示額より大きく相談者に有利な金額で解決をすることができたため,ご満足いただきました。

もし,相続や遺産分割でお困りの方は,お早めに,守口門真総合法律事務所にお問い合わせいただければと思います。

 

 

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自己破産に関する反省文・生活再建策の作成について

2020年01月20日|借金問題, 弁護士コラム

1 反省文・生活再建策の作成とは

自己破産を行う場合の同時廃止手続とは,債権者に対して配当すべき財産がないことが明らかな場合に,破産手続開始決定と同時に破産手続の廃止を決定する手続を言いますが(詳しくは,「破産管財事件と同時廃止事件」コラムをご参照ください),大阪地方裁判所では,同時廃止手続による自己破産の申立てがあった場合,反省文・生活再建策の作成を求められることが少なからずあります。

特に,書面審査の際,免責不許可事由(詳しくは,「免責不許可事由について」コラムをご参照ください)が認められる場合には,裁判所は相当な処置を講ずるものとされており,多くの場合,破産者に対し反省文・生活再建策の作成・提出が命じられます。 

2 作成の際の留意事項

(1)生活再建策について

自己破産に至った原因が破産者の浪費に基づくものである場合,二度と破産の原因となった浪費を行わないため,生活再建策の提出が求められることがあります。

これは,破産者が浪費について考えを改め,生活を立て直さない限り,仮に破産による免責が認められたとしても,自己破産制度の目的である破産者の経済的更生を真の意味で達成することはできないからです。

浪費という根本原因を改善しない限り,破産者は遅かれ早かれ再度借金せざるを得ない状況に陥り,与信調査を行う一般の金融機関では事実上借入れができないため,いわゆる「闇金」に手を出したり,仮に再度借金をした場合,再度の自己破産の申立てはそれ自体が免責不許可事由に該当するため,経済的更生を図ることは著しく困難です。

浪費の事実が認められるに至らない場合でも,破産者の年齢や就労状況,家計収支表の記載,破産申立原因の内容,その解消の有無及び具体的対策を講じているか等諸般の事情を考慮し,裁判所が今後の生活再建に不安が残ると考えた場合,破産者は生活再建策の提出が求められることになります。

生活再建策を作成する際には,世帯の将来の予想家計収支に基づき,具体的な再建策を考え,借入れや破産原因に対する具体的対策を講じることが重要です。

たとえば,破産申立ての際に作成した家計収支表を今後も作成し続ける,物品を購入する際にその場で購入せず一旦持ち帰って検討する,定期預金や積立て,個人年金や積立型生命保険等を開始する,給与振込時に定額を別口座に積み立てる等,生活再建策は人によって様々ですが,いずれの方法であっても,自らの意思で主体的に動き,具体的な行動に移すことが重要です。

(2)反省文について

書面審査の際に免責不許可事由の存在が窺われる場合,反省文の作成・提出を求められることがあります。反省文の提出が求められる際には,破産者に反省してもらいたい点が具体的に指摘されることが多く,破産者としては,裁判所の指摘を真摯に受け止め,自己破産に至ったことについて誠実に反省するともに,二度と借り入れを行わないため,すなわち自身の収入の範囲で生活をやりくりするために何ができるのか,破産者自ら主体的に考え具体的な行動を示すことが重要です。

(3)その他(家計収支表,節減策等)

特別な出費があるわけでもないのに家計収支表が赤字になっている場合や,光熱費(水道代含む),賃料,携帯電話料金等の支払いを遅滞しており,収入に見合った生活ができていないと思われるケースでは,反省文・生活再建策の提出に加え,又は単独で家計収支表の再提出や節減策の作成が求められることもあります。

3 総括

以上のとおり,自己破産手続において反省文・生活再建策の作成を求められることはよくありますが,誠実に対応すれば問題ないケースがほとんどです。

自己破産の目的は,債務を消滅させること自体にあるのではなく,破産者の経済的更生を図ること,すなわち,二度と借り入れを行わず,自身の収入の範囲内で生活できる状況に至ることにあります。破産者自身が自己破産の根本原因と向き合い,自ら考え行動することなしに,経済的更生を図ることはできません。

当事務所では,自己破産・個人再生・任意整理・過払金返還請求等の債務整理案件を数多く取り扱っております。

借金のことでお悩みの場合,守口門真総合法律事務所までお気軽にご相談ください。

 

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成年被後見人の遺言作成(民法973条)の事例

2020年01月13日|後見, 解決事例

1 相談内容

相談内容は,相談者のお父様が過去に交通事故に遭い,頭部外傷を受けて一時寝たきり状態となっていたが,現在では回復し,将来の相続に備えて遺言を作成したいというものでした。

当初の相談の主旨は,お父様が交通事故に遭った後,寝たきり状態の頃に,成年後見制度を利用し,相談者が成年後見人に就任していたことから,遺言を作成することはできないのではないか,この成年後見を取り下げることはできるか,という相談でした。

2 成年後見の取消し?

民法上,成年後見については,「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある」という成年後見の原因が消滅したときには,家庭裁判所は,申し立てにより成年後見の審判の取消しをすることとなります(民法10条)。

しかしながら,一度,成年後見の審判を経た方について,家庭裁判所が成年後見の取消しをするのは,ハードルが高いように思われました。

手続上は,家庭裁判所は,明らかにその必要性がないと認めるときでない限り,成年被後見人の精神の状況につき医師の意見を聞く必要があります(家事事件手続法119条2項)。場合によっては,家庭裁判所によって医師による鑑定がなされることも考えられました。

そして,家族からみても,お父様が,これまで相談者が後見人として行ってきた財産管理をご自身でするということは,能力的,意欲的に困難であるといえました。

3 成年後見そのままで遺言作成

(1)そこで,成年後見はそのまま維持して,成年被後見人の遺言(民法973条)を検討することとなりました。

成年被後見人が遺言を作成するには,以下の要件が必要となります。

①成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時

②医師二人以上の立会い

③立会医師による,遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨の遺言書への付記,署名押印

この場合にも,医師の協力が不可欠でありますが,遺言作成時の状況について,立会のもとで判断してもらえれば,遺言作成は可能となっています。家庭裁判所の手続が不要であるため,現実的な方法であると考え,遺言作成の方針をとりました。

 

(2)そして,これら要件の具備を担保するため,これを公正証書によって遺言することとしましたので,以下の要件も必要となりました。

④証人二人以上の立会い

⑤遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること

⑥公証人が,遺言者の口授を筆記し,これを遺言者及び証人に読み聞かせ,閲覧

⑦遺言者及び証人の署名押印

 

(3)本件では,遺言者であるお父様が入所されている施設の担当ケアマネジャーの方にご協力頂き,施設での遺言作成を行うこととしました。

そして,訪問医療にて担当頂いている病院の協力を頂き,医師2名の立ち合いをお願いしました。

公証人とは事前の打ち合わせのもと,遺言書の案文を作成し,施設への出張を依頼しておりました。

当日は,公証人と立合い医師2名,担当ケアマネジャーと弊所から証人となる弁護士2名が施設に赴き,遺言者であるお父様の意思確認を行い,滞りなく,公正証書作成を行うことができました。

4 成年被後見人による遺言作成

今回,成年被後見人による遺言作成を行い,相談の時から3か月余で,相談者の目的であった将来の相続に備える目的は達成できました。もし,成年後見審判の取消し手続を行っていた場合には,家庭裁判所の審理期間があるため,時間がかかっていたかもしれません。

成年被後見人による遺言作成は,弊所でも初の試みでしたが,担当頂いた公証人も初の事例であったようです。珍しい事例でありましたが,必要書類を整え,滞りなく遺言作成を実現できたことは,相談者にとって良い結果となったと思います。

遺言作成については,法律上の要件は上記記載のものでありますが,適用の可否や立会医師への説明,公証人との打ち合わせ等,専門家の関与が不可欠な案件でありますので,弁護士にご依頼ください。

 

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