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不動産 - 守口門真総合法律事務所

相続した実家が空き家に…放置で起きる6つのリスクと弁護士ができること

2026年07月22日|不動産, 弁護士コラム

メタディスクリプション案:相続した実家をそのままにすると、固定資産税が最大6倍・近隣への損害賠償・相続登記義務違反の過料など思わぬリスクが。空き家に強い弁護士が、相続がらみの空き家トラブルの回避策と解決法をわかりやすく解説します。守口市・門真市の無料相談対応。

主要キーワード:空き家 相続/空き家 弁護士 相談/相続登記 義務化/特定空家

はじめに|「そのうち考えよう」が一番危ない

親御さんが亡くなり、誰も住まなくなった実家。「いずれ、売るか住むか決めよう」と、つい手つかずのままにしていませんか。

実は、空き家をめぐるトラブルのほとんどは「相続」から始まります。 名義が故人のままで売るに売れない、兄弟姉妹で意見が合わない、放置しているうちに近隣から苦情が来た——。こうしたご相談が、いま弁護士のもとに急増しています。

さらに2024年からは相続登記が義務化され、放置そのものにペナルティが科されるようになりました。この記事では、弁護士に実際に寄せられる空き家相談を6つのパターンに整理し、それぞれの解決の道すじをお伝えします。読み終えるころには、「まず何から動けばいいか」が見えているはずです。

相続した実家が「空き家」になると、なぜ問題なのか

空き家は、ただ建っているだけに見えて、時間とともに確実にリスクが増大していきます。

  • 建物は傷み、資産価値は下がり続ける(売却の値段も下がる)
  • 固定資産税・管理費は毎年かかり続ける
  • 倒壊・落下や不法侵入で、他人に損害を与える可能性
  • 相続人が増えて、話し合いがどんどん複雑になる

つまり、放置は「何もしていない」のではなく、リスクを毎年積み増している状態なのです。次章から、その中身を具体的に見ていきましょう。

弁護士に寄せられる空き家相談 6つのパターン

① 名義が故人のまま動かせない ―― 相続登記の義務化に注意

「売ろうとしたら、名義が亡くなった親のままで手続きが進まない」。これが最も多いご相談です。不動産は名義を相続人へ移す相続登記をしなければ、売却も担保設定もできません。

そして重要なのが、2024年4月から相続登記が義務化されたこと。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記しないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象になります。これは過去に相続した不動産にも適用されるため、「昔相続したまま」の実家も他人事ではありません。

相続人の調査(戸籍収集)から、遺産分割協議書の作成まで、一括して任せられるのが、弁護士に依頼するメリットです。

② 兄弟の「共有」でもめる

とりあえず兄弟の共有名義にした結果、「売りたい弟と、残したい兄」で意見が割れて動けなくなるケースも典型的です。

共有名義の不動産は、共有者全員の同意がないと売却できません。 話し合いがつかないときは、共有物分割請求という法的手続によって、解消を図ることができますが、費用と時間がかかります。

「とりあえず兄弟の共有名義にする」かどうか、しっかり検討する必要があるでしょう。

③ 近隣への損害・損害賠償リスク

空き家で見落とされがちなのが、他人にケガや損害を与えたときの責任です。

老朽化した屋根瓦や外壁が落ちて通行人がケガをした、塀が倒れて隣家の車を傷つけた——こうした場合、民法717条の「工作物責任」により、所有者は原則として賠償責任を負います。 しかもこの所有者責任は、「知らなかった」では免れにくい重い責任です。雑草・害虫・悪臭・不法投棄といったご近所トラブルも、放置すれば損害賠償問題に発展しかねません。

④ 「特定空家」に指定されると税金が最大6倍に

行政から「特定空家」(倒壊のおそれ等がある空き家)や、2023年12月に新設された「管理不全空家」に指定され、改善の勧告を受けると、深刻なペナルティが待っています。

住宅が建つ土地は固定資産税が最大6分の1に軽減されていますが、勧告を受けるとこの軽減が外れ、税負担が最大で約6倍にはね上がります。さらに改善しなければ、行政が強制的に建物を解体する行政代執行に進み、その解体費用は所有者に請求されます。「放置しているだけで、じわじわ追い詰められる」——これが空き家の怖さです。

⑤ 売却・処分したい ―― 使える特例と落とし穴

「もう手放したい」という前向きなご相談も増えています。ここで弁護士や専門家の知識が効いてきます。

  • 空き家の3,000万円特別控除:相続した居住用家屋を売却した際、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例。ただし相続開始から3年目の年末までなど期限・要件が細かく、逃すと大きな損に。
  • 相続土地国庫帰属制度(2023年開始):いらない土地を国に引き取ってもらえる制度。ただし建物が建ったままの土地は対象外で、原則として更地にする必要があるなど、注意点があります。

「どの方法が一番手取りが多く、手間が少ないか」は、権利関係と税制を合わせて判断する必要があります。

⑥ 空き家にしない「生前対策」

最善策は、空き家になる前に手を打つことです。親御さんがお元気なうちに、

  • 遺言で「実家は誰が引き継ぐか」を明確にしておく
  • 家族信託・任意後見で、認知症になっても売却・活用の判断ができるようにしておく

といった準備をしておけば、いざというとき家族が困りません。「まだ元気だから」と先送りせず、判断能力があるうちにこそ動けるのが生前対策です。

知らないと損する|2023〜2024年の重要な法改正

改正施行ポイント
相続登記の義務化2024年4月3年以内に登記しないと10万円以下の過料。過去の相続にも適用
空家法改正(管理不全空家)2023年12月指定・勧告で固定資産税の軽減が外れ、税額が最大約6倍に
相続土地国庫帰属制度2023年4月不要な相続土地を国へ。ただし建物付きは対象外

空き家をめぐる法律は、この数年で大きく動きました。とくにこの3つは押さえておきましょう。前2者は「放置のコスト」を高める方向の改正です。ルールが変わった今こそ、早めの対応が有利に働きます。

空き家問題を「弁護士」に相談するメリット

空き家は、司法書士・税理士・不動産会社など複数の専門家がかかわる分野です。そのなかで弁護士に相談する強みは、「もめごと」と「手続き」を両方まとめて任せられる点にあります。

  • 相続人同士の対立を、代理人として交渉できる(当事者だけの話し合いで感情的にこじれない)
  • 相続調査・遺産分割・登記・売却まで、窓口ひとつで一貫対応
  • 近隣トラブルや損害賠償など、紛争に発展した場合もそのまま対応可能

とくに「兄弟と直接話したくない」「相手が話に応じてくれない」といったケースでは、弁護士が間に入ることで一気に前へ進むことが少なくありません。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 遠方に住んでいて、実家の空き家を見に行けません。相談できますか?

A. はい。権利関係の整理や相続人間の交渉は、現地に住んでいなくても進められます。まずは現状をお聞かせください。

Q. もう何年も相続登記をしていません。今からでも大丈夫ですか?

A. 大丈夫です。過去の相続分もさかのぼって手続きできます。義務化の対象にもなっているため、むしろ早めのご相談をおすすめします。

Q. 兄弟と連絡が取れず、話し合いになりません。

A. 所在のわからない相続人・共有者がいる場合の法的手続きも整備されています。弁護士が調査・手続きを代行できますのでご安心ください。

Q. 相続放棄すれば、空き家の管理から解放されますか?

A. 必ずしもそうとは限りません。状況によっては放棄後も一定の管理義務が残る場合があり、判断には専門的な検討が必要です。

まとめ|空き家対策は「早く動いた人」が有利

相続した空き家は、放置するほどリスクと費用が積み上がり、選べる解決策が狭まっていきます。逆に言えば、早く動くほど、使える特例も交渉の余地も多く残っています。

  • 名義変更が未了 → 相続登記から
  • 兄弟で意見が割れている → 遺産分割協議・共有解消から
  • とにかく手放したい → 特例を使った売却の設計から

守口門真総合法律事務所では、守口市・門真市を中心に、相続がらみの空き家のご相談を数多くお受けしています。相続調査から遺産分割、売却・処分、生前対策まで、窓口ひとつで対応いたします。「何から手をつければいいかわからない」——その段階でこそ、お気軽にご相談ください。初回のご相談で、あなたのケースで取るべき最初の一歩をお示しします。

▶ 空き家・相続のご相談はこちら(初回相談のご案内)

※本記事の過料額・控除額・施行日などの数値は、公開時点で最新の条文・国税庁/法務省の公表内容をご確認のうえ掲載してください。個別事案の結論は状況により異なります。

所有者不明土地問題②民法・不登法改正

2021年08月27日|不動産, 弁護士コラム

 今回は、2021年4月に成立した民法・不動産登記法等の改正法について、解説します(参考:法務省HPより「民法等の一部を改正する法律」及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」の概要)。

1.改正の背景

 改正の背景には、所有者不明土地問題があります(過去の弁護士コラム「所有者不明土地問題」)。
 近時、相続登記がされないこと等により、①不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地、又は、②所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地、いわゆる『所有者不明土地』が多数発生しています(総面積は九州本土よりも大きいといわれます。)。

2.法改正の概要

 今回の改正は、①所有者不明土地の発生予防と②所有者不明土地の利用の円滑化の両面から、民法や不動産登記法などを見直すものです。

(1)民法の改正
①共有制度の見直し
 不明共有者がいる場合には,利用に関する共有者間の意思決定や持分の集約が困難となっていました。

 そこで,共有物の利用の円滑化を図る仕組みとして,裁判所の関与の下で,不明共有者等に対して公告等をした上で,残りの共有者の同意で,共有物の変更行為や管理行為を可能にする制度が創設されました。

 また,裁判所の関与の下で,不明共有者の持分の価格に相当する金銭の供託によって,不明共有者の共有持分を取得して不動産の共有関係を解消する仕組みが創設されました。

②相続制度の見直し
 相続開始から10年を経過したときは,個別案件ごとに異なる具体的相続分による分割(寄与分や特別受益)の利益を消滅させ,画一的な法定相続分で簡明に遺産分割を行う仕組みが創設されました。長期間放置された後の遺産分割では具体的相続分に関する証拠等が散逸し,共有状態の解消が困難であったからです。

 法定相続分と異なる遺産分割を行うためには,相続開始から10年以内に行わなければならないこととなります。なお,施行日前の相続発生については,相続開始の時から10年を経過する時または改正法の施行の時から5年を経過する時のいずれか遅い時までの期間制限となります。

③財産管理制度の見直し
 所有者不明土地・建物の管理に特化した新たな財産管理制度が創設されました。裁判所が選任した管理人は、裁判所の許可を得れば、所有者不明土地・建物を売却することができます。これにより、所有者不明土地・建物の管理が効率化・合理化することになります。

 また、所有者不明土地・建物のみならず、管理不全土地・建物(例:ゴミ屋敷、廃墟)について、所有者が適切に管理せずこれを放置していることで他人の権利を侵害するおそれがある場合に、裁判所が管理人を選任することができる制度も創設されました。

④相隣関係規定の見直し
 電気、ガスなどのライフラインを自己の土地に引き込むための設備を他人の土地に設置する権利を明確化し、隣地所有者不明状態にも対応できる仕組みが整備されました。

(2)不動産登記法の改正
 不動産登記法の改正では、所有者不明土地をこれ以上発生させないために、相続登記・住所変更登記の申請義務化と手続の簡素化・合理化が導入されました。

 問題の背景として、不動産の登記名義人と実際の所有者とが異なることがよくありました。そうすると、①登記名義人の相続人が分からないため、所有者の探索に時間と費用が掛かり用地買収等が妨げられることや、②登記名義人が死亡しているかどうかだけでも分かれば、事業用地を円滑に選定することができるとの指摘があることなどから、相続や住所変更などの情報を登記に反映すること、すなわち、登記を最新の状態にアップデートが問題解決のために重要になります。

そこで、今回の不動産登記法の改正では、以下が導入されました。
  ①相続登記・住所変更登記の申請義務化
  ②相続登記・住所変更登記の手続の簡素化・合理化

①相続登記・住所変更登記の申請義務化
 不動産を取得した相続人に、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることを義務付けました。正当な理由のない申請漏れには10万円以下の過料が科されます。どういった場合に正当な理由なしと判断されるかは、法務省が近い将来通達を出す予定です。

 また、改正法では、不動産を所有する人について住所や氏名の変更があった場合、住所等の変更日から2年以内にその変更登記の申請をすることを義務付けることになりました。この場合も、正当な理由のない申請漏れには5万円以下の過料が科されることになります。

②相続登記・住所変更登記の手続の簡素化・合理化
ア 相続人申告登記(仮称)の新設
 改正法では、相続登記の義務化と併せて、相続人が登記名義人の法定相続人である旨を申し出ることで、相続登記の申請義務を果たしたことにするという規定が設けられました。この相続人申告登記は、相続人一人ひとりが単独で申告することができ、添付書面も簡略化されているため、相続登記の申請義務を簡易に履行することが可能になります。

イ 死亡情報等の公示
 登記官が他の公的機関(住基ネットなど)から死亡等の情報を取得し、職権で登記に表示する仕組みが設けられました。これにより、登記で登記名義人の死亡の有無の確認が可能になります。

3 まとめ

 所有者不明土地問題を背景にされた法改正ですが、一般の相続にも影響する形での法改正となっています。これまでは期間制限のなかった遺産分割など相続関係について、期間制限が設けられたことをはじめ新たな制度も設けられておりますので、長期間相続を放置していた方はご相談ください。

以上

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民法改正 ~売買・贈与に関する規定の見直し~

2021年07月22日|不動産, 借金問題, 弁護士コラム, 相続

1 売買・贈与に関する規定の見直し

 平成29年5月26日,民法の一部を改正する法律が成立し(同年6月2日公布),一部の規定を除き,令和2年(2020年)4月1日から施行されています。

 民法改正によって,売買・贈与に関する規定も一部変更となりましたので,以下,変更された主な規定をご説明致します。

 なお,瑕疵担保責任の規定については,従前,「民法改正~瑕疵担保責任から契約不適合責任へ~」の中で解説しておりますので,今回の説明からは省略させて頂きます。 

2 危険負担の債権者主義が廃止

 危険負担とは,債務者に責任のない事由によって,目的物が滅失・損傷し,債務者の目的物給付義務が消滅した場合に,債権者も反対債務である代金支払義務を免れるか,すなわち,債権者と債務者のいずれが危険を負担するのかという問題です。

 改正前民法534条は,特定物の危険負担について債権者主義を定めており,このような場合に「債権者が危険を負担する」,すなわち債権者は反対債務である代金支払義務を免れない,との結論が取られていました。
 もっとも,債権者からすれば,未だ目的物の引き渡しを受けていないにもかかわらず,代金支払義務を負担することになるため,結論の妥当性に疑問の声も挙がっていました。

 改正民法では,危険負担における債権者主義(債権者が危険を負担する)が廃止され,当事者双方の責めに帰することができない事由によって,目的物が滅失・損傷した場合,債権者は反対給付(代金支払義務)の履行を拒めることが明記されました。

 一方で,債権者の責めに帰すべき事由によって,目的物が滅失・損傷した場合,債権者に反対給付の履行拒絶権がない点は従来どおりです。
 そして,改正民法では,目的物の引き渡しによって危険が移転することが明示され,目的物の引き渡し後に目的物の滅失・損傷が生じた場合には,債権者は,これを理由とする追完,代金減額,損害賠償請求,契約解除ができないことが明らかにされました。

 また,債務者による履行の提供が行われたにもかかわらず,債権者が履行の受領を拒絶した場合,改正前民法においても,その後に発生した危険は債権者が負うとされていましたが,改正民法では,契約内容に適合する履行の提供さえあれば,売主側から買主側へ危険が移転することが明文化されています。

3 売買の手付解除

 改正前民法においては,買主が売主に手付を交付したときは,売主は手付の倍額を「償還」すれば,契約解除が可能と規定されていました。しかし,改正民法においては,売主は手付の倍額を「現実に提供」すれば契約解除が可能とされています。

 元々判例上,売主は手付の倍額を「現実に提供」すれば手付解除が可能とされており,「償還」までは不要とされておりましたので,今回の改正は,かかる判例法理が明文化された形であり,事実上大きな変更はありません。

 また,改正前民法では,「当事者の一方が契約の履行に着手するまで」は手付解除が可能と定められていました。しかし,「当事者の一方」との文言では,手付解除を行う者のみが履行に着手した場合でも,手付解除が認められなくなるとの誤解を受ける恐れがありますので,改正民法では,「その相手方」が契約の履行に着手した後は手付解除ができない,との表記に改められました。

4 贈与

 贈与者の担保責任について,改正前民法は,贈与者は,贈与の目的物又は権利の瑕疵又は不存在について責任を負わないとしながらも,「贈与者がその瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかったとき」は,担保責任を負う旨規定していました。
 しかし,改正民法では,贈与者は,「贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引渡し、又は移転することを約したものと推定する。」との推定規定が置かれましたので,贈与の当事者間でこれと異なる合意等があることを立証しない限り,贈与者は担保責任を負わないこととなります。

5 小括

 このように,民法改正によって,売買・贈与に関する規定もいくつか変更されており,変更後の規定は,改正民法施行後に新たに締結された売買・贈与契約に適用されます。

売買・贈与等の法律問題でお悩みの方は,守口門真総合法律事務所まで,いつでもお気軽にご相談ください。

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保証会社に明け渡しがあったとみなす等の権限を付与する条項の適法性

2021年03月25日|不動産, 弁護士コラム

 以前,「保証会社に解除権を付与する条項の適法性」というコラムで取り上げた裁判の,控訴審判決がなされました(大阪高裁令和3年3月5日)。

 高等裁判所では,「保証会社に解除権を付与する条項の適法性」に関する判断は維持され,これに加え,原審が違法とした「保証会社に明け渡しがあったとみなす等の権限を付与する条項」についても,適法であると判断しました。

 最高裁判所への上告が予定されているようですが,今回の判断が維持されれば,入居者が行方不明となった場合などの明渡し業務に関して,不動産賃貸業界への影響は大きいためご紹介いたします。

1 問題となった条項

第18条(賃借人の建物明渡協力義務)
2項 保証会社は,下記のいずれかの事由が存するときは,賃借人が明示的に異議を述べない限り,これをもって本件建物の明渡しがあったものとみなすことができる。
2号 賃借人が賃料等の支払いを2カ月以上怠り,保証会社が合理的な手段を尽くしても賃借人本人と連絡が取れない状況の下,電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から本件建物を相当期間利用していないものと認められ,かつ本件建物を再び占有使用しない賃借人の意思が客観的に看取できる事情が存するとき

以上のほか,本件建物の明渡しがあったものとみなされた場合には,本件建物内に残置された動産の搬出・保管に異議を述べないこと,搬出の日から1か月内に引き取らないものについて所有権を放棄し,処分に異議を述べないこと,保管料として月額1万円(税別)及び搬出・処分に要する費用の支払い義務を認める条項が問題とされました。

2 上記条項の解釈について

高等裁判所は,上記の第18条2項2号の条項を,4つの要件に整理し,「①賃料等の支払いを2カ月以上怠り,②保証会社が合理的な手段を尽くしても賃借人本人と連絡が取れない状況の下,③電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から賃借物件を相当期間利用していないものと認められ,かつ,④賃借物件と再び占有使用しない賃借人の意思が客観的に看取できる事情が存するとき」としました。

 この4要件のうち①から③を満たす場合には,賃借人としては,既に賃借物件を住居として使用しておらず,かつ,その意思を失っている蓋然性が極めて高いということができます。そして,④の要件にあたるのは,賃借人が賃借物件についての占有の意思を放棄している場合といえます。①から③の要件だけでなく,④の要件を備えることによって,賃借人が賃借物件についての占有する意思を最終的かつ確定的に放棄したものを認められ,賃借人の占有権は消滅したものと考えられます。

 このようなことから,4要件を満たすことにより,賃借人が賃借物件の使用を終了してその賃借物件に対する占有権が消滅しているものと認められる場合において,賃借人が明示的に異議を述べない限り,保証会社に対し,賃借物件の明渡しがあったものとみなすなどの権限を付与するものと解釈されました。

3 上記条項の適法性

 消費者契約法10条は,権利の制限をする条項であって,消費者の利益を一方的に害するものは,無効とするとされています。

 高等裁判所は,上記条項につき,権利の制限をする条項であることを認定しましたが,消費者の利益を一方的に害するものには該当しないとして,有効と判断しました。賃借人が受ける不利益が賃借物件内の動産類を搬出・保管ないし処分されうるという点に限られ,むしろ現実の明渡しをする債務を免れ,将来の賃料等の更なる支払義務を免れるという利益を受ける状況にあること,また,賃借人が明示的に異議を述べさえすれば明渡しなどの権限行使を阻止することができることなどから,賃借人の利益を一方的に害するものということはできないことが理由です。

4 最後に

 今回の高等裁判所の判決について,一部報道では,「「追い出し条項」は適法」などとされていますが,以上のとおり,4要件を満たした場合に限定され,占有権が消滅したといえる場合にのみ有効な条項であります。かつて問題となったような,賃料滞納等を理由として賃借人の占有を一方的に排除する,いわゆる「追い出し条項」とは全く異なるとされています。

 そして,今回の事件は適格消費者団体からの差止請求訴訟という特色から,その審理対象は条項の定めのみであって,運用の場面において賃借人に対する違法な自力救済に該当する危険性を否定することができないとも指摘しています。

 今回の判決によれば,条項を定めておけば,賃借人が行方不明となった場合で賃借人の占有権が消滅したといえるときには,賃貸借契約の解除だけでなく,物件内の残置動産の搬出・保管ないし処分などの権限を付与することができることとなり,民事訴訟の提起,判決取得,強制執行の法的手続を経ることなく,明渡しを実現することができるようになります。

 過去には,賃貸借契約自体に,後見開始等を理由とする契約解除条項や明渡等代理条項などを付した特約について裁判で争われたことがあります(大阪高判平成25年10月17日消費者法ニュース98号283頁)。この事件では,後見開始等を理由とする契約解除条項が無効とされましたが,明渡等代理条項は,裁判係属中に条項が改訂されてしまいましたので,その有効性について判断されておりませんでした。

 消費者契約法の適用場面であって,賃貸人,保証会社と賃借人との利益衡量が必要な条項でありますので,賃貸借契約に条項の追加を検討されている方は,弁護士にご相談ください。

関連コラム:https://murakami-law.org/1127/
「保証会社に解除権を付与する条項の適法性」もぜひご覧ください。

<弁護士プロフィール>

弁護士 喜多啓公(きたひろゆき)
所属:大阪弁護士会
不動産関係では,宅建協会顧問の法律事務所にて勤務し,多数の賃料回収案件,建物明渡案件,土地明渡案件,賃料増減額請求,不動産契約トラブル案件の取り扱い経験があります。
賃貸不動産経営管理士の資格も保有しています。

講演歴
①不動産会社従業員への講義(不動産に関連する民法改正)
②不動産オーナーへの賃貸経営セミナー(テーマ「2020年民法改正が不動産賃貸借経営に及ぼす影響とは!?」)
③門真市の地域生涯学習のための市民大学での講義(テーマ「身近な暮らしの法律」)

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民法改正 ~保証に関する規定の見直し~

2020年12月23日|不動産, 弁護士コラム

1 保証に関する規定の見直し

 平成29年5月26日,民法の一部を改正する法律が成立し(同年6月2日公布),一部の規定を除き,令和2年(2020年)4月1日から施行されています。

 皆様の生活に影響する部分として,民法改正により,保証契約に関する規定が大幅に見直されましたので,以下,主な変更点をご説明致します。

2 個人根保証一般における極度額の設定

 改正前民法においては,保証契約を書面ですることや,金銭の貸付け等によって負担する債務が含まれる根保証契約(不特定多数の債務を将来にわたって保証人が保証する契約)については極度額を定めなければ無効であることが定められていました。

 これに対し,改正民法においては,個人による根保証契約一般について,金銭の貸付け等によって負担する債務が含まれているか否かを問わず,全て極度額を定めなければ無効であることを定められております。
 これにより,賃貸借契約における個人の根保証契約や,身元保証契約における個人の根保証契約であっても,極度額の設定が必要になりました。

3 公正証書作成による保証意思の確認(事業のための貸金等)

・事業のために負担する貸金等を主たる債務とする保証契約
・主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約
については,保証契約締結前1か月以内に,公正証書によって保証債務を履行する意思を表示しなければ,保証契約の効力が発生しないことになりました。
 これは,事業のために負担する貸金等の場合に限られますので,住宅ローンなどの事業性のない債務や,貸金等の債務でない場合には,公正証書の作成は不要です。

 なお,保証人(個人)が,主たる債務者である法人の理事・取締役・執行役や,総株主の議決権の過半数を保有する支配株主,主たる債務者と共同して事業を行う者(共同事業者)又は主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者(配偶者)などである場合には,公正証書の作成は不要です。

4 保証人への情報提供義務

(1)保証契約の締結時点において
 保証人(個人)が主たる債務者から委託を受けて,
・事業のために負担する貸金等を主たる債務とする保証契約
・主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約
を締結する場合は,保証契約締結時点において,主たる債務者から保証人に対し,①主たる債務者の財産及び収支状況,②主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況,③主たる債務の担保として他に提供し,又は提供しようとするものがあるときは,その旨及び内容に関する情報を提供する必要があります。

 保証人が,主たる債務者である法人の取締役や,総株主の議決権の過半数を保有する株主,主たる債務者と共同して事業を行う者又は主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者などである場合にも,情報提供義務は認められます。

 主たる債務者が上記の情報を提供せず,又は,事実と異なる情報を提供した場合,保証人は,その事項について誤認して保証契約を締結した場合で,かつ,情報提供義務に違反したことを債権者が知り又は知ることができたときは,保証契約を取り消すことができます。

(2)委託された保証人が請求した場合
 保証人(個人・法人)が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合,保証人からの請求があれば,債権者は,保証人に対し,遅滞なく,主たる債務の元本,利息,損害賠償,その他主たる債務に関するすべての債務についての不履行の有無,残額,履行期限徒過の有無を通知しなければなりません。

(3)期限の利益を喪失した場合
 主たる債務者が期限の利益を喪失した場合,債権者は保証人に対し,期限の利益の喪失を知った時から2か月以内に保証人(個人)に通知する必要があります。

 この通知がなかった場合,債権者は保証人に対し,期限の利益喪失から通知を行うまでの期間に生じた遅延損害金を請求できません。

4 連帯保証人に生じた事由の効力

 改正前民法においては,連帯保証人について生じた事由の主たる債務者に対する効力については,連帯債務の規定を準用しており,連帯保証人に生じた事由の多くが主たる債務者についても効力を及ぼすものとされていました。

 これに対し,改正民法では,履行の請求,免除,時効の完成については,主たる債務者に対して効力を生じないことになりました。

 これにより,債権者としては,主たる債務者に対する債権と,連帯保証人に対する債権を個々に管理しなければならず,時効期間の経過等に一層注意する必要が生じます。

5 小括

 このように,皆様の生活にも影響を及ぼし得る保証に関する規定は,民法改正によって大幅に見直されています。日常生活に関する法律問題でお悩みの方は,守口門真総合法律事務所まで,いつでもお気軽にご相談ください。

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