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不動産

保証会社に解除権を付与する条項の適法性

2019年08月19日|不動産, 弁護士コラム

賃貸借契約と,これに伴う保証契約とは,本来,別個の契約となります。しかし,ほとんどの場合,同時に締結されており,相互に密接な関係を有している契約といえます。

今回は,家賃債務保証会社による賃貸借契約の解除権を認める契約条項が違法ではないとされた裁判例(大阪地裁令和元年6月21日判決)をご紹介します。

この判断が維持されれば,家賃滞納等が発生した場合の対応につき,家賃債務保証会社だけでなく不動産オーナーを含めた賃貸業界への影響が大きいと考えられます。裁判自体は,当事者双方から控訴が検討されているため,今度の動きに注目です。

1 家賃債務保証会社の説明

家賃債務保証業者とは,一般に,賃貸借契約において,賃貸人と賃借人との契約締結の際に,家賃債務保証業者が予め用意した契約用紙を用いて,賃借人との間で家賃債務保証委託契約を締結し,また,賃貸人との間で家賃債務保証契約を締結して,賃借人から委託保証料を受領する。その後,家賃滞納などが発生した場合,賃貸人からの請求に応じて滞納家賃に係る保証債務を履行し,その前後に,賃借人に対して保証に基づく求償権を行使しその支払いを受けるという業務を行っている会社です。

賃貸人としては,所有建物を賃貸するにあたって,賃借人の賃料不払いによる未収リスクを抱えているところ,家賃債務保証業者と家賃債務保証契約を締結したときは,当該業者から迅速,確実に滞納家賃を回収することができ,その賃料の未収リスクを大幅に低減することができます。

賃借人としては,家賃債務保証業者に保証委託をすることで,賃借人自身の資力を補う信用供与を受けることができ,よって住居となる建物を賃借することが容易となります。

このように家賃債務保証契約には,賃貸借契約の当事者双方にメリットがあります。

2 問題とされた契約条項の概要

第13条(保証受託者等の賃貸借契約解除権)

保証会社は,賃借人が支払いを怠った賃料等の合計額が賃料3カ月以上に達したときは,無催告にて賃貸借契約を解除することができる。

 

この契約は,もととなる賃貸借契約の存在を前提として,保証会社と賃貸人との間で締結される連帯保証契約,保証会社と賃借人との間で締結される保証委託契約等の複合契約と解され,上記賃貸借契約解除権などの賃貸借契約の債務の履行に関する条項は,賃貸借契約に基づいて賃貸借契約当事者が負う権利義務自体に変容をもたらすものであって,賃貸借契約の特約と解釈されます。

本件では,この特約が,無催告での解除を認めている点と,賃貸借契約の当事者以外の保証会社に解除権限を認めている点とで,消費者契約法に違反して無効ではないかが争われました。

3 今回の裁判例の判断のポイント

まず,賃貸借契約解除権の発生について,賃借人が賃料等の支払いを賃料3か月分以上怠り,これがため賃貸借契約を解除するにあたり催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合に限り,保証会社が無催告で解除権を行使することができる旨を定めた規定であると限定解釈しました。

そして,賃貸借契約解除権の定めは,賃貸人と保証会社との利害関係に関わって,賃料不払いが継続したときに賃貸借契約を継続させるか否かの判断及び決定権限を,賃貸人だけでなく保証会社にも付与するものとみることができ,保証債務の未収リスクを負担する保証会社に,自ら負担するリスクをコントロールすることができる権限を与えることは不合理なことではないと指摘しました。他方,賃借人としても,解除権が発生するのは上記限定解釈された場合であるため,もともと賃貸人から解除を求められたならば賃貸借契約は解除され終了させられるという不利益を受任せざるを得ない地位にあります。

そのため,賃貸借契約解除権の定めは,消費者契約法に違反しないとしました。

4 コメント

弊所でも,賃貸人が行方不明となり,保証人が賃貸人から滞納賃料の請求を求められ,また賃貸借契約の解除や建物の明渡しを求められた案件がありました。

今回の裁判例で認められたように,保証人が賃貸借契約の解除をする権限をもっていれば,滞納賃料が蓄積するまえに早期の対処をすることで,保証人にとっても最低限の負担とすることができます。

今後は,個人保証人は,極度額の定めが置かれることとなりますし,賃借人の不払いが長期間放置された場合には,保証人からの保証契約の解除が認められたり,保証債務の請求が権威の濫用として否定されたりすることもあります(横浜地裁平成31年1月30日判決。判タ1460号191頁)。

賃貸借契約における保証契約を見直す必要が生じてきているといえます。

 

 

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不動産賃貸借の解決事例

2019年07月22日|不動産, 解決事例

1, 事案の概要

相談者は,守口市で自営業をされている方です。賃借している店舗の賃料が,近隣相場より高いため,相談者ご本人が,家主に対して,3~4年間,賃料減額のお願いをしてきたが,一向に対応してくれないため,守口門真総合法律事務所に御相談・御依頼をいただきました。

 2,内容証明郵便の送付,枚方簡裁への調停申立て

 まず,賃料減額請求を求める内容証明郵便を発送しました。賃料減額請求権は形成権であるため,内容証明郵便が必要になるからです。

 しかし,家主が減額に応じてくれなかったため,簡易裁判所に対し,賃料減額調停申立てをしました。賃料の増額・減額については,調停前置主義といい,訴訟の前に調停申立てをする必要があるからです。

 なお,守口市・枚方市・寝屋川市・大東市・門真市・四条畷市・交野市においては,簡易裁判所に調停申立てする際の管轄裁判所は,枚方簡易裁判所です。

調停申立てする際には,申立書の別紙として,賃料増額の経緯をまとめた表や,また,守口市の近隣の店舗用賃貸物件の月額賃料を複数件調査して,1へーべあたりの平均賃料を算出した近隣家賃相場表を,それぞれ添付して,賃料減額請求に理由があることの主張・立証を試みました。

 枚方簡易裁判所の調停手続においては,2回ほど調停期日が実施されましたが,話し合いで解決する見込みがなかったため,調停が不成立となりました。

 3,大阪地裁への提訴,有利な裁判上の和解の成立

そこで,大阪地方裁判所に対し,賃料減額確認請求訴訟を提起しました。訴訟においては,守口市にある物件と守口市の近隣店舗用賃料物件との位置関係がわかる資料を作成して補充証拠として提出し,当方が作成した近隣家賃相場表の証拠価値を高めて,賃料減額請求に理由があることを根拠づけることで,裁判所に,当方に有利な心証を形成させることに成功しました。

 その後は,弁論期日ではなく和解期日が指定され,裁判官から当方に有利な和解勧試をしてもらうことに成功しました。

 最終的には,約27%の賃料を減額する内容で,裁判上の和解を成立させることができました。

 4,裁判上の和解後の処理

 なお,依頼者は,減額前の従前賃料額を供託していました。内容証明郵便の到達時にさかのぼって賃料を減額することにも成功しました。そこで,供託金を取り戻したあと,さかのぼって減額後の賃料額を支払うことで済みましたので,かなりご満足いただくことができました。

 

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区分所有マンションにおける高圧受電方式を採用する決議の効力

2019年04月11日|不動産, 弁護士コラム

区分所有者の方も,管理会社の方にとっても,マンションの総会決議の有効性について,今後は十分に検討しなければならない重要な判決が,平成31年3月5日に,出されました。

最高裁平成31年3月5日第3小法廷判決について,ご紹介します。

1 事案の概要

事件の当事者は,同じマンション(団地)の区分所有者です。

平成26年に,マンション管理組合の通常総会において,マンション内の電力供給に関して,「高圧受電方式」への変更をする決議がなされました。というのは,従来,マンション内の区分所有者は,個別に電力会社との間で専有部分において使用する電力の供給契約を締結して,共用部分である電気設備を通じて電力の供給を受けていました。この電力の供給契約について,専有部分の電気料金を削減する目的で,管理組合が一括して電力会社との間で高圧電力の供給契約を締結し,区分所有者が管理組合との間で専有部分において使用する電力の供給契約を締結して電力の供給を受けるという「高圧受電方式」へ変更するという決議でした。

この方式へ変更するためには,従来から個別で電力受給契約をしている区分所有者の全員がその個別契約を解約することが必要とされます。

しかし,「高圧受電方式」の導入に反対した区分所有者の方がおられ,個別契約の解約を申し入れませんでした。

もし,一括受電方式が導入できていれば共用部分の電気料金が安くなるということで,一括受電方式が導入された場合の1kw当たり23.4円と推計して算出した5ヵ月分の電気料金計3万1075円と,導入しなかった場合の通常電気料金4万240円の差額9165円(1戸当り)の合計約500万円を,導入に賛成されていた区分所有者の方が,導入に反対された区分所有者の方に対して,支払うよう提訴しました。

 

問題となるのは,マンション内の電力供給につき,マンション管理組合の決議で決定することができる「共用部分の変更またはその管理に関する事項」かどうかです。

2 第1審と第2審(控訴審)

第1審及び第2審ともに,本件決議の有効性を認めて,請求を認めました。

その理由として,本件マンションにおいて電力は共有部分である電気設備を通じて専有部分に供給されており,本件決議は共用部分の変更またはその管理に関する事項を決するなどして高圧受電方式への変更をすることとしたものであって,その変更をするためには個別契約の解約が必要であるからである,としました。

3 最高裁判決

しかしながら,最高裁判決は,以下のとおり述べて,本件決議は有効ではないとしました。

「高圧受電方式への変更をすることとした本件決議には,共用部分の変更またはその管理に関する事項を決する部分があるものの,本件決議のうち,区分所有者に個別契約の解約申し入れを義務付ける部分は,専有部分の使用に関する事項を決するものであって,共用部分の変更またはその管理に関する事項を決するものではない。したがって,本件決議の上記部分は,区分所有法第17条1項又は18条1項の決議として効力を有するものとはいえない。このことは,高圧受電方式への変更をするために個別契約の解約が必要であるとしても異なるものではない。

そして,細則が,高圧受電方式への変更をするために区分所有者に個別契約の解約申し入れを義務付ける部分を含むとしても,その部分は,区分所有法30条1項の区分所有者相互間の事項を定めたものではなく,同項の規約として効力を有するものとはいえない。なぜなら,区分所有者がその専有部分において使用する電力の供給契約を解約するか否かは,それのみでは直ちに他の区分所有者による専有部分の使用又は共用部分等の管理に影響を及ぼすものではないし,また,高圧受電方式への変更は専有部分の電気料金を削減しようとするものにすぎず,この変更がなされないことにより,専有部分の使用に支障が生じ,又は共用部分等の適正な管理が妨げられることとなる事情はうかがわれないからである。」

したがって,導入に反対された方が個別契約の解約を申し入れないことは,違法なことではないため,損害を賠償する責任はないと判断しました。

4 コメント

マンションの電力供給に関する事例でありますが,最高裁の判断は,より一般的に,マンション管理組合の総会決議が共用部分の変更またはその管理に関する事項なのかどうかを判断しています。マンション管理組合の総会決議の効力に関し,多数決で決する共用部分と,区分所有者が判断する専有部分との区別を明らかにした一例といえますので,今後マンション管理組合の総会決議をされる際には検討しなければならないこととなります。

区分所有者の方はご自身の利害にかかわる事柄で,管理者となっている管理会社の方にとっても業務に関し注意しなければならない判決といえます。

総会決議の有効性につき,疑問が生じた方は,ご相談ください。

5 まとめ

区分所有マンションで高圧受電方式を採用したい場合には,区分所有者全員の承諾が必要となります。

1人でも反対者がいれば,高圧受電方式を導入することはできません。

反対者は,導入すれば安くなったであろう電気料金の差額を損害賠償する責任を負いません。

 

 

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保証契約に関しての民法改正

2019年02月15日|不動産, 弁護士コラム

1 保証契約とは

「保証契約」とは,保証人が,債権者との間で,借金の返済や代金の支払などの債務を負う「主債務者」がその債務の支払をしない場合に,主債務者に代わって支払をする義務を負うことを約束する契約をいいます。

主債務者から「保証人になってほしい」と依頼されることが多いかと思いますが,保証契約の主体は,保証人と債権者とになります。

 

なお,「連帯保証契約」とは,保証契約の一種ですが,主債務者に財産があるかどうかにかかわらず,主債務者に対する支払の催告や財産調査をすることなく,債権者が保証人に対して支払を求め,保証人の財産の差押えをすることができるものです。以下では,単に「保証」としていますが,すべて「連帯保証」を含みます。

2 保証契約のリスク

保証人は,主債務者の代わりに主債務者の負った債務を支払うよう債権者から求められることになります。保証人が任意に支払わない場合には,保証人は,自宅の不動産が差押え・競売されて立退きを求められたり,給与や預貯金の差押えを受けたりするなど,裁判所の関与の下で支払を強制されることにもなります。

このように,保証は大きな財産的リスクを伴うものですが,主債務者から「迷惑をかけないから」,「名前だけ貸してほしい」などと言われて,安易に保証人となった結果,後々,大変な状況に陥ってしまうというケースも見られます。

保証人になる際には,このようなリスクがあることを十分に認識しておくことが重要です。

3 極度額(上限額)の定めのない個人の根保証契約について

「根保証契約」とは,一定の範囲に属する不特定の債務について保証する契約をいいます。

例えば,保証人となる時点では,現実にどれだけの債務が発生するのかがはっきりしないなど,どれだけの金額の債務を保証するのかが分からないケースをいいます。

例えば,以下のようなケースが根保証契約に該当する可能性があります。

①子どもが1人暮らしのためにアパートを賃借する際に,その賃料などを賃貸人との間で親が保証人となるケース

②会社の社長が,会社の取引先との間で,自分の会社が取引先に対して負担する全ての債務につき保証人となるケース

③親を介護施設に入居させる際に,その入居費用や施設内での事故による賠償金などを介護施設との間で子どもが保証人となるケース

4 根保証契約のリスク

根保証契約を締結して保証人となる際には,主債務の金額が分からないため,将来,保証人が想定外の債務を負うことになりかねません。

そこで,次のようなルールが設けられています。

 

①極度額(上限額)の定めのない個人の根保証契約は無効

個人(会社などの法人は含まれません)が保証人になる根保証契約については,保証人が支払の責任を負う金額の上限となる「極度額」を定めなければ,保証契約は無効となります。この極度額は書面等により当事者間の合意で定める必要があります。

極度額は,「○○円」などと明瞭に定めなければなりません。上記の賃貸借契約のケースで,保証の極度額を「賃料〇〇か月分」と定めていても,無効になる可能性があります。

保証人は極度額の範囲で支払の責任を負うことになるので,保証をする際には,極度額に注意を払いましょう。

また,極度額を定めないで根保証契約を締結してしまうと,その契約は無効となり,保証人に対して支払を求めることができないことになるので,債権者にとっても注意が必要です。

 

②特別の事情による保証の終了

個人が保証人になる根保証契約については,保証人が破産したときや,主債務者又は保証人が亡くなったときなどは,その後に発生する主債務は保証の対象外となります。

5 根保証契約に関する民法の改正

保証人が個人である根保証についての極度額に関する規律が,適用範囲を拡大しました(改正民法465条の2)。

改正前民法では,根保証については,貸金等を対象とするもの(債務の範囲に金銭の貸渡しまたは手形の割引を受けることによって負担する債務が含まれるもの)についてのみ,極度額を定めなければ効力を生じないとされていました。

これが,今回の改正により,貸金等を対象とするものという限定がなくなりました。

そのため,改正民法が施行される2020年4月1日以降に締結される根保証契約で,個人が保証人となるものについては,極度額の定めを置いておかなければ,効力を生じません。

 

※なお,主債務に貸金等債務(金銭の貸渡しや手形の割引を受けることによって負担する債務)が含まれる根保証契約については,既に,2005年4月1日から,今回のルールよりも更に厳しいルールが設けられています。このルールは,今回の民法改正の後も変わりません。

6 公証人による保証意思確認手続の新設について

法人や個人事業主が事業用の融資を受ける場合に,その事業に関与していない親戚や友人などの第三者が安易に保証人になってしまい,多額の債務を負うという事態が依然として生じています。

そこで,個人が事業用の融資の保証人になろうとする場合には,公証人による保証意思の確認を経なければならないこととされています。この意思確認の手続を経ずに保証契約を締結しても,その契約は無効となります。

なお,この意思確認の手続は,主債務者の事業と関係の深い次のような方々については,不要とされています。

①主債務者が法人である場合

その法人の理事,取締役,執行役や,議決権の過半数を有する株主等

②主債務者が個人である場合

主債務者と共同して事業を行っている共同事業者や,主債務者の事業に現に従事している主債務者の配偶者

 

公証人は,全国に約500名おり,公証役場は約300箇所あります。保証意思確認の手続について,嘱託先とすべき公証役場に制限はありません。

7 公証人による保証意思確認の手続の流れ

①公証役場に行く

これから保証人になろうとする方は,保証契約をする前に,原則として公証役場に出向いて,保証意思確認の手続(保証意思宣明公正証書の作成の嘱託)を行うことになります。

保証意思宣明公正証書は,保証契約締結の日前1か月以内に作成されている必要があります。

この手続は,代理人に依頼することができません。本人自身が公証人から意思確認を受けることになります。

 

②保証意思の確認

公証人から,保証人になろうとする方が保証意思を有しているのかを確認されます。

保証をしようとしている主債務の具体的な内容を認識しているか,保証をすることで自らが代わりに支払などをしなければならなくなるという大きなリスクを負担するものであることを理解しているか,主債務者の財産・収支の状況等について主債務者からどのような情報の提供を受けたかなどについて確認を受けます。このほか,保証人になろうと思った動機・経緯などについても質問されることがあります。

その後,所要の手続を経て,保証意思が確認された場合には,公正証書(保証意思宣明公正証書)が作成されます。

 

保証意思確認の手続の手数料は,1通1万1, 000円を予定されています。その他の費用については,嘱託先となる公証役場にお問い合わせください。

8 情報提供義務の新設

このほか,保証人のために,次のような情報が提供されるようになります。

①保証人になることを主債務者が依頼する際の情報提供義務

事業のために負担する債務について保証人になることを他人に依頼する場合には,主債務者は,保証人になるかどうかの判断に資する情報として,以下の情報を提供しなければなりません。

ⅰ 主債務者の財産や収支の状況

ⅱ 主債務以外の債務の金額や履行状況等に関する情報

このルールは,事業用融資に限らず,売買代金やテナント料など融資以外の債務の保証をする場合にも適用されます。

 

②主債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務

債務者が分割金の支払を遅滞するなどしたときに一括払いの義務を負うことを「期限の利益の喪失」といいます。主債務者が期限の利益を喪失すると,遅延損害金の額が大きくふくらみ,早期にその支払をしておかないと,保証人としても多額の支払を求められることになりかねません。

そのため,保証人が個人である場合には,債権者は,主債務者が期限の利益を喪失したことを債権者が知った時から2か月以内にその旨を保証人に通知しなければならないとされています。

 

③主債務の履行状況に関する情報提供義務

主債務者の委託を受けて保証人になった場合には,保証人は,債権者に対して,主債務についての支払の状況に関する情報の提供を求めることができます。

※この情報提供は,法人である保証人も求めることができます。

9 さいごに

保証契約に関しては,事業資金の借入れだけでなく,アパートや施設の入居にも関わる身近なものであり,民法改正で重要な改正がなされていますので,ご相談は守口門真総合法律事務所まで。

 

 

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賃貸借契約に関しての民法改正

2018年12月26日|不動産, 弁護士コラム

平成32年4月1日より,改正民法の施行が予定されており,賃貸借契約に関しても影響が出てきます。不動産賃貸借契約など,皆様の居住や事業の基盤になる契約についても,契約書を見直す必要があります。不動産業者だけでなく,地主,家主の方も,民法改正への備えは十分でしょうか。
そこで,今回は,賃貸借契約に関しての民法改正の概要をご紹介します。

 

①賃貸借契約期間の伸長

賃貸借契約期間の上限が現在の20年から,50年に伸長されました(改正民法604条)。
この改正の背景には,駐車場やゴルフ場,太陽光発電事業用の土地賃貸借契約において,長期にわたる契約期間の定めするニーズがありました。これらのニーズに対応する契約が可能となりました。

 

②不動産賃貸借の対抗力,賃貸人の地位に移転に関する規定

1 判例法理を明文化する形で新設されました。
不動産の賃貸借は,これを登記したときは,その不動産について物件を取得した者その他の第三者に対抗することができる(改正民法605条)。
不動産の賃貸借が対抗することができる場合,その不動産が譲渡されたときは,その不動産の賃貸人たる地位は,その譲受人に移転する(改正民法605条の2第1項)。
賃貸不動産の譲渡により賃貸人たる地位が移転した場合における費用所管に係る債務及び敷金返還に係る債務については,譲受人やその承継人に承継される(改正民法605条の2第4項)。
以上の規律は,従前より判例法理により処理されてきました。
2 これに加えて,今回の民法改正で新たに,不動産の賃貸人の地位を旧所有者に留保することができるようになりました。
これまでは,実務上,賃貸不動産を信託する等の場面において賃貸人たる地位を旧所有者に留保するニーズがありましたが,賃貸不動産に入居している個別の賃借人の同意を得る必要があったり,賃貸管理委託などの契約では対応できなかったりしました。
改正民法において,不動産の賃貸人の地位を旧所有者に留保するための要件は,ⅰ不動産の譲渡人及び譲受人が,賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨の合意をすること,ⅱ不動産の譲渡人及び譲受人がその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をすること,となっております。
この場合,新所有者が賃貸人,旧所有者が賃借人,従前賃貸借の賃借人が転借人という転貸借の法律関係となります。この場合に,譲渡人と譲受人間の賃貸借が終了したときには,賃借人を保護するため,譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は,譲受人やその承継人に当然に移転することとされました(改正民法605条の2第2項後段)。
賃貸不動産を売買する場合などには,賃貸人の地位の留保を用いれば,個別の賃借人の同意をえることなく,従前の賃貸借契約の関係を残したまま,賃貸不動産を売買することができるようになります。

 

③不動産の賃借人による妨害排除等請求権の規定

不動産の賃借人による妨害排除等請求権の規定が新設されました。
これは,対抗要件を備えた不動産の賃借人が,第三者に対して,占有の妨害を停止する請求や占有の返還を求める請求を行うことができるという,判例法理を明文化したものです(改正民法605条の4)。

 

④賃借物の一部または全部が使用収益できなくなった場合の規定

賃貸物の一部の使用収益ができなくなった場合について,賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは,賃料は使用収益できなくなった部分の割合に応じて減額されるという規定が設けられました(改正民法611条1項)。現行民法では,賃料減額につき一部滅失の場合のみを規定していますが,一部滅失に限らず賃貸物の一部の使用収益をすることができなくなった場合一般を対象として賃料の減額を認めるとともに,賃借人からの請求を待たずに当然に賃料が減額されることとなりました。賃料は,賃借人が賃貸目的物を使用収益することができる状態におかれていることの対価として発生するものですので,一部の使用収益をすることができなくなった場合には,当然に賃料も使用収益することができない部分の割合に応じて発生しないという理解に基づくものです。
賃借物の一部が使用収益することができず,残存する部分のみでは賃借目的を達成不可能なときは,賃借人の解除権を認めました(改正民法611条2項)。
また,全部が使用収益できなくなった場合,賃貸借は終了するという規定が新設されました(改正民法616条の2)。
地震や台風などの災害や事故によって建物が一部損壊した場合には,これらの条項により賃料減額等が当然に認められることとなります。

 

⑤転貸借関係

適法な転貸借がなされた場合における賃貸人と転借人との法律関係について,現行法の内容を具体化し,判例法理を明文化する規定が設けられました(改正民法613条)。
前述の賃貸人たる地位の留保により,転貸借関係が増加することが想定されます。賃貸人と賃借人(転貸人),転借人との三者関係の法律関係となりますので,通常の賃貸借関係よりもトラブル発生の可能性は高まります。トラブル発生を回避するためには,契約書等を見直して,転貸借関係に備えることが必要です。

 

⑥賃貸借終了後の収去義務,原状回復義務

賃借人の収去義務,原状回復義務の内容を明確化する規定が設けられました(改正民法621条,622条が準用する599条)。
賃借人の収去義務については,ⅰ賃借人が賃借目的物を受け取った後にこれに附属させたものについては賃借人が収去義務を負う,ⅱ賃借目的物から分離することが出来ない物や分離するのに過分の費用を要する物については収去義務を負わない,とされました。
原状回復義務については,賃借目的物を受け取った後に生じた損傷については,その損傷を原状に回復する義務を負います。もっとも,賃借目的物に生じた通常損耗(通常の使用収益によって生じた賃借物の損耗)や賃借物の経年変化については,賃借人はこれを回復する義務を負わないとされています。また,賃借人の責めに帰することができない損傷についても,賃借人は原状回復義務を負わないとされます。
原状回復に関するトラブルは多いです。契約書に,原状回復範囲を明記するなどして,トラブルを回避することが重要となります。

 

⑦敷金

敷金に関する規定が新設されました(改正民法622条の2)。現行民法には,敷金に関する基本的な規定が設けられておりませんでした。
敷金の意義については,これまでの判例や一般的理解を基に,いかなる名目によるかを問わず,賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で,賃借人が賃貸人に交付する金銭をいうとされました。
敷金返還債務の発生時期につき,判例を明文化して,ⅰ賃貸借が終了し,かつ,賃貸物の返還を受けたとき,ⅱ賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき,とされました。
敷金の充当に関しては,敷金返還債務の発生のときに,受け取った敷金の額から賃貸借に基づく賃借人の賃貸人に対する金銭給付目的の債務の額を控除するものとされました。
敷金返還債務の発生前には,賃貸人は,賃借人が賃貸借に基づく金銭給付目的の債務を履行しないときは,敷金をその債務の弁済に充てることができるとされました。このとき,賃借人から賃貸人に対して,敷金をその債務の弁済に充てることを請求することはできません。
敷金に関しては,これまで明文がなく種々の解釈がなされてきました。今後は,賃貸人と賃借人それぞれが理解をすることでトラブル発生を防止することになりますので,契約書において明記することが有効となります。

以上の民法改正は,平成32年4月1日施行されますので,これまでに契約書を見直し,民法改正に備える必要があるかと思います。

 

今回は,賃貸借に関しての民法改正の概要をお伝えしました。具体的な契約書チェックのご相談は,守口門真総合法律事務所までお問い合わせ頂きますようお願い致します。

 

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