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新着情報・トピックス

民法改正 ~瑕疵担保責任から契約不適合責任へ~

2020年06月29日|不動産, 企業法務, 弁護士コラム, 相続

1 瑕疵担保責任の見直し

平成29年5月26日,民法の一部を改正する法律が成立し(同年6月2日公布),一部の規定を除き,令和2年(2020年)4月1日から施行されています。

民法改正により,売買契約における瑕疵担保責任の規定は大幅に見直されましたので,以下,主な変更点をご説明致します。

2 「瑕疵」から「契約不適合」へ

改正民法においては,現行民法の「瑕疵」という文言は使われなくなり,「引き渡された目的物が種類,品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」との文言に変わりました。これは,「瑕疵」が物理的瑕疵だけではなく心理的瑕疵も含む幅広い概念であることを踏まえたもので,従前の解釈を積極的に変更するものではありません。

瑕疵の存否は,契約の趣旨を踏まえて目的物が有するべき品質,性状等を確定した上で,引き渡された目的物があるべき品質に適合しているかの判断によります。

3 民法改正による主な変更点

(1)対象が特定物に限られないことに

改正前民法においては,瑕疵担保責任の対象は特定物に限られるものとされていましたが,民法改正により,特定物であろうと,不特定物であろうと,契約不適合責任が適用されることになりました。

(2)原始的瑕疵に限られないことに

改正前民法においては,瑕疵担保責任における「瑕疵」とは,原始的瑕疵(契約時点までに発生した瑕疵)に限られていましたが,民法改正により,契約履行時までに瑕疵が発生した場合には,契約不適合責任を負うことになりました。

(3)買主側の法的手段

改正前民法においては,瑕疵担保責任によって買主が責任追及できる手段は,契約目的を達成できない場合の「解除」と損害賠償だけでしたが,民法改正により,追完請求及び代金減額請求が可能になりました。以下,簡単に説明致します。

ア 買主の追完請求権

(ア)買主の追完請求権に関する規定

 改正前民法においては,瑕疵担保責任が「原始的」瑕疵がある場合の規定であったことから,追完請求権の規定はありませんでした。

売主は,売買の目的となった特定物を現状のまま引き渡せば足り,特定物に不具合があったとしても,売主はなすべき給付を履行している以上,買主は追完を求めることはできないとされていたからです。

 しかし,改正民法においては,瑕疵担保責任を債務不履行責任の特則と位置付ける立場から,買主の追完請求権に関する規定が設けられています。

(イ)追完請求権の要件

 買主は,売主の帰責性の有無を問わず,追完請求権を行使することが可能になりました。目的物が種類物又は中古車等の代替可能な特定物であれば,修理や代替物の取得に多大な費用が掛かるなどの事情がない限り,買主の追完請求権が認められます。

 もっとも,売主の追完義務が履行不能になっている場合には,追完は事実上不可能ですから,追完請求権を行使することはできません。

 但し,契約不適合が買主の責任による場合,買主は追完請求権を行使することができません。

(ウ)追完方法の選択

 追完方法については,目的物の修補,代替物の引渡し,不足分の引渡しと定められており,追完方法は一次的には買主の選択に委ねられています。

 但し,売主の選択する追完方法が買主に不相当な負担を課すものでない場合,売主は,買主の選択とは異なる方法で追完することができます。

イ 買主の代金減額請求権

 現行民法では,数量不足及び権利の瑕疵の一部についてのみ,買主の代金減額請求権が定められていましたが,民法改正によって,買主は,物・権利いずれの契約不適合があった場合でも,売主の帰責性を問わず,代金減額請求が可能になりました。

 代金減額請求権は,契約の一部解除と同様の機能を営むため,代金減額請求を行うには,原則として,先に相当の期間を定めて追完を催告し,当該期間内に追完がないことが必要です。但し,①追完が不能な場合,②売主が追完を拒絶する意思を明確に示した時,③定期行為について売主が追完をせずに時期を経過したとき,④その他催告をしても追完の見込みがないことが明らかな場合は,追完不要とされています。

 契約不適合が買主の責任による場合,代金減額請求ができない点は,追完請求権の場合と同様です。

ウ 解除権及び損害賠償請求権

(ア)解除権

 現行民法では,解除権の要件として,5632項及び565条の場合,①残存する部分のみであれば買主が買受けなかったこと及び②買主の善意が,566条及び570条では,ⓐ契約目的を達成することができないこと及びⓑ買主の善意が規定されています。

 もっとも,民法改正によって,現行民法の条文は全て削除され,買主の解除権発生の要件は,債務不履行の一般原則に委ねられました。

したがって,売主は,買主の解除に対しては,契約不適合が軽微であることを主張して,解除の効力を争っていくことになります。なお,契約不適合が軽微であることの主張・立証責任は売主の負担となります。

 また,買主は,①売主の追完義務が履行不能であるかまたは履行の追完を拒絶する意思を明確に示しており,残存部分のみでは契約目的を達成できないとき,②その他追完の催告をしても契約目的を達するに足りる追完を受ける見込みがないときなどには,売主に対して無催告解除を行うことが可能です。

(イ)損害賠償請求権

 改正民法では,損害賠償請求権の要件・効果は債務不履行の一般原則に委ねられているため,要件としては売主の帰責事由が必要になり,効果としては履行利益の賠償まで認められることになります。すなわち,契約不適合が存在する場合であっても,それが契約及び取引の社会通念に照らして売主の帰責性によるものではない場合,売主は免責されることになります。

 なお,改正民法では,「数量」の不適合の場合,一般の消滅時効によって規律されることになります。これは,数量の不適合は,売主にとって比較的容易に判断できるため,売主の期待を保護する必要性に乏しいからとされています。

(4)担保責任の期間制限

目的物の種類・品質の契約不適合の場合,買主は,契約不適合を知ってから1年以内に不適合を通知しなければ,権利行使ができないものとされています。

現行民法では,「契約の解除又は損害賠償の請求」という権利の行使を1年以内にする必要があったのに対し,民法改正によって,「不適合の事実の通知」に緩和されました。また,売主が目的物を引き渡す際に,不適合の事実について悪意・重過失であった場合,買主は同期間経過後も失権しません。

なお,改正民法では,「数量」の不適合の場合,一般の消滅時効によって規律されることになります。これは,数量の不適合は,売主にとって比較的容易に判断できるため,売主の期待を保護する必要性に乏しいからとされています。

 

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賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の制定

2020年06月22日|不動産, 弁護士コラム

1 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律

令和2年6月12日,「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が成立しました。この法律は,①サブリース契約の適正化,②賃貸住宅管理業の登録制度化を目的としています。賃貸管理をしている不動産業者はもちろん,不動産のオーナーの方にも影響のある法律です。

 

2 法律制定の背景・必要性

近年,賃貸住宅志向の高まりや,単身世帯,外国人居住者の増加等の社会情勢を背景に,賃貸住宅の生活の基盤としての重要性は一層増大しています。

一方で,賃貸住宅の管理は,従前,自ら管理を実施するオーナーが中心でしたが,近年,オーナーの高齢化や相続等に伴う兼業化の進展,管理内容の高度化等により,管理業者に管理を委託等するオーナーが増加しています。

さらに,賃貸経営を管理業者にいわば一任できる“サブリース方式”も増加しています。

しかし,管理業者の介在が増加する中,管理業者とオーナーあるいは入居者とのトラブルが増加していることもわかってきています。特に,サブリース方式では,家賃保証等の契約条件の誤認を原因とするトラブルが多発し,社会問題となってきています。

そこで,①これまで未整備であったサブリース業務についての法規制を設けて適正化を図り,また,②賃貸住宅管理業の登録制度を創設して適正な運営を確保するために今回,賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律が制定されました。

 

3 サブリース契約の適正化

「サブリース」・・・家主から賃貸住宅を借り上げて入居者に転貸する形態

 

サブリース参考図

 

 

オーナーがサブリースを選択する理由は,「管理等の手間が大変だから」「安定的な収入を得たいと考えたから」などが挙げられています。

ただ,サブリース業者から契約締結時に契約内容の説明が行われていますが,説明が十分ではないのが現状のようで,「管理業務の内容に関する認識が管理業者との間で異なっており,期待する対応がなされない」などの苦情,トラブルが発生していました。

そこで,トラブルを未然に防止するために,全てのサブリース業者に対し,勧誘時や契約締結時の説明などに規制が設けられました。

 

(1)誇大広告等の禁止

サブリース業者・勧誘者が,特定賃貸借契約(マスターリース契約)の条件について広告するとき,以下の事項について著しく事実に相違する表示,実際よりも著しく優良である等誤認させる表示を禁止

〇サブリース業者が支払うべき家賃

〇賃貸住宅の維持保全の実施方法

〇特定賃貸借契約の解除に関する事項

 

(2)不当な勧誘行為の禁止

サブリース業者・勧誘者が,特定賃貸借契約(マスターリース契約)を勧誘するとき,家賃の減額リスクなど相手方の判断に影響を及ぼす重要な事項について故意に事実を告げず,又は不実を告げる行為の禁止

 

(3)特定賃貸借契約締結の際の重要事項説明

特定賃貸借契約(マスターリース契約)の締結までに,家賃,契約期間等を記載した書面を交付して説明しなければならない。また,特定賃貸借契約を締結したときは,家賃,契約期間等を記載した書面を交付しなければならない。

 

4 賃貸住宅管理業に係る登録制度の創設

賃貸住宅における良好な居住環境の確保を図るとともに,不良業者を排除し,業界の健全な発展・育成を図るため,賃貸住宅管理業者の登録制度を創設しました。

 

(1)賃貸住宅管理業の登録

委託を受けて賃貸住宅管理業務(賃貸住宅の維持保全,家賃等の金銭の管理)を行う事業を営もうとする者は,国土交通大臣の登録を受けなければなりません。登録は,5年ごとに更新を受けなければ,その期間の経過によって,その効力を失います。

もっとも,中小事業者の負担軽減の見地から,管理戸数が一定規模未満の者は対象外とされました。

 

(2)賃貸住宅管理業者の業務

① 業務管理者の配置

営業所又は事務所ごとに,賃貸住宅管理の知識・経験等を有する者を業務管理者として選任して,管理受託契約や管理業務などについて管理・監督事務を行わせなければなりません。

業務管理者が欠けた状態では管理受託契約を締結してはなりません。

業務管理者の要件として,賃貸管理業の一定の実務の経験を持った賃貸不動産経営管理士や宅地建物取引士などの資格が必要とされる予定です。

 

②管理受託契約締結の際の重要事項説明

管理受託契約を締結するまでに,具体的な管理業務の内容・実施方法等について書面を交付して説明しなければなりません。また,管理受託契約を締結したときは,管理業務の実施方法などを記載した書面を交付しなければなりません。

 

③財産の分別管理

管理する家賃等について,自己の固有の財産等と分別して管理しなければなりません。

 

④定期報告

業務の実施状況等について,管理受託契約の委託者に対して,定期的に報告しなければなりません。

 

5 法律の施行日

今後,施行までに具体的な運用について定めた政省令が発布されます(時期未定)。ただし,施行日より1年間の経過措置があります。

(1)賃貸住宅管理業を営む者に係る登録制度

公布の日から1年以内

 

(2)特定賃貸借契約(サブリース契約)の適正化のための措置等

公布の日から6か月以内

 

6 賃貸住宅管理にかかわるご相談

賃貸住宅管理については,オーナーや管理業者,入居者という賃貸借の契約関係のみならず,近隣住民との関係や融資をする金融機関との関係など様々な利害関係者が想定されます。そして,今回の法律制定により,従前よりも賃貸管理業務の適正化が必要となりますので,管理業者による対策が求められます。

われわれ弁護士としては,賃貸住宅管理業に関するトラブルのご相談はもちろん,トラブルを未然に防ぐためのご相談も承ります。

ご相談は,守口門真総合法律事務所までお問い合わせください。

 

 

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報

2020年04月28日|企業法務, 借金問題, 弁護士コラム

新型コロナウイルスの感染者数は,増加の一途を辿り,現段階で感染拡大が終息する見通しがない状況にあります。このような状況において,中小企業の皆様が直面する法律問題に対応する必要が生じております。
もっとも,新型コロナウイルスに関する情報があふれており,適切な情報にたどり着けない方もあるかもしれません。
そこで,今回は,中小企業等の事業者の方に役立つ主な情報をまとめてお伝えしたいと思います。なお,以下は作成時点の情報であって,時々刻々と更新されるものでありますので,ご了承ください。

1 資金繰りに不安を感じている事業者の方(貸付・保証)

・新型コロナウイルス感染症特別貸付
日本政策金融公庫や商工中金より貸し付けを受けることができます。
融資対象は,最近1カ月の売上高が前年等の同期と比較して5%以上減少した方です。
当初3年間は,利子補給で金利負担が実質的に無利子となる制度です。
既に受けた債務の返済等の心配に対しては,最長5年の据置期間があります。

・セーフティネット保証
民間金融機関から融資を受ける際に,信用保証協会から保証を受けることができます。最大2.8億円の保証をうけることができます。

資金繰りに関するお問い合わせは,
中小企業 金融・給付金相談窓口TEL0570-783183
https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/shien-flyer.pdf(PDFファイル)
経済産業省リーフレット表 経済産業省リーフレット裏

2 持続化給付金

感染拡大により特に大きな影響を受けている事業者に対し,事業の継続を支え,再起の糧とするための,給付金の支給です。
支給対象は,新型コロナウイルス感染症の影響により,売上が前年同月比で50%以上減少している方です。
給付額は,法人が200万円,個人事業者が100万円で,昨年1年間の売り上げからの減少分を上限としています。
令和2年度補正予算案が成立した翌日から申請を受け付けるようです。

相談は中小企業 金融・給付金相談窓口TEL0570-783183
https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/kyufukin.pdf(PDFファイル)
持続加給付金1 持続加給付金2

持続加給付金3 持続加給付金4

3 雇用調整助成金(雇用の維持,休業手当)

雇用調整助成金は,経済上の理由により,事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が,雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成する制度です。
平時においてもある制度ですが,新型コロナウイルス感染症につき,特例措置が実施されております。
特例措置として,緊急対応期間中の4月1日から6月30日までの間,対象事業主は,全業種とされ,生産指標要件が緩和されて1カ月5%以上低下となっております。
そのほか,雇用保険被保険者でない労働者の休業も助成金の対象に含めたり,助成率も拡大しています。
(令和2年4月25日更新情報)休業手当を労働基準法上の基準(60%)を超える金額支払った場合には,当該超える部分につき100%助成されたり,都道府県からの休業要請を受けて休業している場合には,休業手当全体を100%助成されたりします。

 

問い合わせは,お近くの公共職業安定所(ハローワーク)へ。
https://www.mhlw.go.jp/content/000620879.pdf(PDFファイル)
特例拡充1 特例拡充2

特例拡充3 特例拡充4

4 債務の返済に関して

・新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール
新型コロナウイルス感染症の影響を受け,既往債務の支払いに悩む中小企業のために,各都道府県の中小企業再生支援協議会が,返済猶予の要請を行い,リスケジュール計画を創設して,負担軽減を図っています。

・金融庁の金融機関に対する要請
金融庁は,金融機関に対し,既往債務について,事業者の状況を丁寧にフォローアップするとともに,元本金利を含めた返済猶予などの条件変更について,迅速かつ柔軟に対応すること等を要請しています。

・国土交通庁の不動産関連団体に対する要請
国土交通省は,不動産関連団体に対し,新型コロナウイルス感染症の影響により,賃料の支払いが困難なテナントに対しては,賃料の支払いの猶予に応じるなど,柔軟な措置の実施を検討するよう要請しています。

以上のように,債務の返済については,関係各所におかれて,柔軟な対応が期待されております。

5 破産

以上のように種々の政策によって事業活動を支える手立てがなされているところではありますが,万策尽きて事業活動を停止することもあるかもしれません。そうすると最終的には破産という手段で清算することとなります。
報道によれば,新型コロナウイルス感染症に関連する倒産が,日本国内でも増加しており,今後も増えていくことが予想されます。
もっとも,本来,倒産しなくてもいい事業者が情報不足を原因に事業継続をあきらめてしまうこともあるかもしれません。これは,築いた企業価値を喪失させることとなりますので,社会全体の損失となります。
守口門真総合法律事務所では,社会や政策の情勢をリアルタイムに調査し,適切な情報をもとに適切な助言をしております。
新型コロナウイルス感染症による影響を受けている事業者の方は,ご相談ください。

 

 

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所有者不明土地問題―土地の相続への影響について

2020年04月6日|不動産, 弁護士コラム, 相続

1 所有者不明土地問題

2019年12月3日,法制審議会民法・不動産登記部会において,所有者不明土地問題等に関する民法等の改正に関する「中間試案」が取りまとめられました。

所有者不明土地とは,不動産登記簿により所有者が直ちに判明せず,または所有者に連絡がつかない土地のことで,その土地の利用等が阻害されていることなどが問題視されています。公共事業や再開発に向けた用地取得の妨げとなり,また,空き地の管理に支障が生じ,空き家や危険な家屋などがある場合には災害リスクともなります。

平成28年度地籍調査対象の土地のうち20.1%が不動産登記簿により所有者の所在が確認できない土地となっており,無視できない問題であります。そのうち相続による所有権の移転登記がなされていないものが66.7%であって,所有者不明土地が発生する主な原因が,土地所有者の死亡後,相続登記がなされていないことにあるといえます。

2 遺産分割の期間制限

現行法では,遺産分割をいつまでにすべきかについて,期間を制限する規定がありません。そのため,遺産土地が被相続人の登記名義のまま,長期間放置されることが多々存在しています。その結果,所有者不明土地が発生することとなっています。

そこで,遺産分割の合意又は遺産分割手続の申立てに関し,期間の制限を設けることや,一定の期間が経過したときは,具体的相続分の主張を制限することが検討されています。

一定の期間の制限については,10年とする案や,5年とする考え方が検討されています。この期間制限については,現行法にはない制限ですので,注意を要するものとなります。

3 相続登記の義務化

そして,遺産分割の合意等の結果の不動産所有権の移転を,不動産登記に反映させるために,相続人には,一定の期間の間に相続登記の申請を義務付けられることが検討されています。

この場合の,一定の期間については,比較的短期間の1年,2年,3年とすることや,長期間の5年,7年,10年とすることが検討されている。不動産所有権移転が,遺産分割の合意等による取得の場合,特定財産承継遺言による取得の場合,遺贈による取得の場合など,それぞれにおいて期間を異なるものとするのか,同一の期間とするのかについても検討されております。

4 さいごに

今回は,所有者不明土地問題に関連して,法改正の一部である,相続における遺産分割の期間制限や相続登記の義務化について言及しました。みなさまに身近な相続の問題にも影響を及ぼす可能性がありますので,ご注意いただければと思います。

なお,中間試案は,パブリックコメント手続を経て,寄せられた意見を踏まえて引き続き審議が行われ,今秋頃に法務大臣に要綱を答申し,法改正が国会に上程される予定となっています。

 

(参考)「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)当の改正に関する中間試案」

(令和元年12月3日の取りまとめ)

http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00007.html

 

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会社の通常清算の解決事例

2020年03月2日|企業法務, 解決事例

枚方市に事務所を置く,とある株式会社から、通常清算の御依頼を受けて,守口門真総合法律事務所において,遂行させていただいた事例を御紹介します。

御依頼のきっかけは,代表取締役が死亡したが,会社の後継者がいないためでした。

1,遺産分割協議による株式承継者の決定

まず,代表取締役の遺族(配偶者妻・子)による遺産分割協議により,配偶者妻が,株式を含む全遺産を相続により承継することになりました。そして,その遺産分割協議に基づいて,①遺産預金を解約して配偶者妻が取得し,②団体信用生命保険の適用により住宅ローン完済扱いとなった遺産不動産につき,配偶者妻への名義変更(相続登記),③遺産不動産に設定されていた抵当権の抹消登記等が実施されました。これらの手続は,守口門真総合法律事務所に御依頼いただく前に代理人に就任していた司法書士により実行されました。

2,株式承継者による新代表取締役及び清算人への就任

その後,遺産分割協議により遺産全株式を取得した配偶者妻からの依頼で,守口門真総合法律事務所において,配偶者妻を新取締役(新代表取締役)に選任する株主総会決議等をし,各就任手続を経て,各選任登記をしました。

そのうえで,会社を解散する株主総会決議(※)をして解散登記をし,併せて代表清算人の選任登記をしました。

 

※「普通決議」ではなく「特別決議」(議決権を行使可能な株主の議決権の過半数を有する株主が出席し,かつ,出席した当該株主の議決権の3分の2以上の多数でもってなす決議 会社法第309条2項)。

 

そして,守口門真総合法律事務所の弁護士が,清算人から,清算業務の依頼を受けて,清算手続を進めていきました。

なお,この会社は債務超過ではなかったので,通常清算(裁判所の監督なしに、清算人によって行われる会社の解散手続)を選択しました。

3,清算業務の遂行

(1)事業停止・現状の把握

弁護士は,会社の従業員に対し,事業を停止する指示を出しました。また,会社の決算書を確保し,会社の現状を把握しました。

特に,貸借対照表を吟味し,債権債務関係や換価すべき財産を確認しました。

(2)未収債権の回収等

まず,未回収の請負報酬債権がありましたので,弁護士において回収しました。

次に,保険の解約手続をして,解約返戻金を取得したり,車両を売却して換価したりました。

賃借事務所については原状回復をしないといけませんので,不要な動産を処分したり,必要な動産(重要書類等)については新代表取締役の自宅に搬入しました。

係争中の請負報酬請求事件(債務者側)もありましたが,弁護士が相手方と交渉し,債権債務ゼロで和解することができました。

(3)従業員の解雇手続

解散することにより事業を停止する訳ですから,従業員も解雇する必要があります。

そこで,解雇予告通知を出し,1か月あまりの予告期間を設定し,その間,清算手続の補助をしてもらいました。

同時に,協力社労士に依頼して,健康保険・厚生年金・雇用保険などの各種社会保険,最後の給与・退職所得計算,離職票作成等の処理をしてもらい,従業員の今後の身分保障に努めました。

また,当該従業員のために,中小企業退職金共済(いわゆる「中退共」)にも加入していましたので,退職金の支給手続もしました。

(4)その他

会社は不動産事業もしており,宅建の免許も保有していましたので,宅建協会や不動産協会を退会する手続をしました。

(5)債権届出の公告及び催告

会社に対して債権を保有する債権者に対し,債権を届け出るよう,公告しました。

(6)債務の弁済

債権者が特定できた段階で,債権者に対して弁済しました。

4,残余財産の分配

未収債権の回収・車両の換価・債務の弁済などを経て,会社に一定の財産が残っていました(「残余財産」といいます)。

通常清算のときの「残余財産の分配」は、株主の保有株式数に応じて按分しますが,本件では,配偶者妻が全株式を遺産分割協議により取得しましたので,同人に全額を分配しました。

これで,通常清算における清算事務は終了しました。

なお,「残余財産の分配額」から「設立時の出資額」の差額が,利益となり,課税対象となります。そこで,協力税理士に事情を説明し,確定申告時に正しく申告できるお手伝いもさせていただきました。

5,その他の業務

清算事務が終了しましたので,決算報告書を作成して、株主総会に報告をし,株主総会での承認手続をしました。

これにて清算事務の結了です。

上記株主総会による決算報告の承認時から2週間以内に,清算登記をしました。これにより,通常清算の手続を完全に終えることができました。

 

 

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