マンション管理を巡る法的紛争について
近年、マンション・アパートを舞台とする紛争は増加の一途をたどっています。
特に都市部では、マンション・アパート居住者が多い上、新たなマンションの建設も相次ぎ、さらに進学や就職等による人の入れ替わりが多いため、トラブルが起こりやすい状況になっています。共同住宅であることから利害関係を有する関係者の数が多いうえ、人間関係が希薄となりがちな現代においては,マンション・アパートというところは、法的紛争が発生しやすい場所といえます。
マンション・アパートを巡る法的紛争は、マンション管理業務の内容にとどまらず、マンション管理組合内部のガバナンスの問題や、区分所有者の権利義務にかかわる建替えの際の諸問題など特殊性・専門性の高い分野であります。
当事務所では、マンション・アパートを巡る法的紛争について、マンション・アパート管理会社、マンション管理組合、区分所有者いずれの立場からのご相談・ご依頼も受け付けております。
区分所有建物の概要
マンションなどの複数人が一棟の建物のうち区分された部分を所有権の目的とする建物は、区分所有建物といいます。
区分所有建物については、法律上、区分所有法(正式には「建物の区分所有等に関する法律(昭和三七年法律第六十九号)」といいます。)をはじめとする複数の法律において、通常1つの建物を1人が所有することと比較して、特別な取り扱いを受けることになります。
区分所有法は、特別な所有関係の調整、区分所有者同士の利害関係の調整方法、及び区分所有者と第三者との法律関係の調整等を図るために制定されたものです。マンションに関する法律問題については、まずは区分所有法を確認することになります。
区分所有建物とは
一棟の建物の数個の部分が、それぞれ隔壁、床、天井など構造上、他の部分を区分されて構造上の独立性を有し、かつ、所有者がそれらの部分を区分所有の目的とする意思を有するとき、これら一棟の建物の各部分は、法律上それぞれ一個の建物として取り扱われます。
この場合、一棟の建物のうち独立した各部分を区分所有建物といいます。区分建物、あるいは専有部分などとも言われることがあります。
敷地
敷地とは、一般には区分所有建物が建っている土地のことですが、正確には、物理的に区分所有建物の属する一棟の建物が存在する土地と、区分所有者が規約により一体として管理又は使用すると定めたその他の土地をいいます。 それぞれ前者を法定敷地と、後者を規約敷地と、呼ぶことがあります。
規約敷地には、例えば、通路、駐車場、庭、広場、テニスコート、集会室等、付属の建物の敷地など共用施設のための土地が含まれ、法定敷地と必ずしも隣接していなくてもよいことになります。
区分所有者は、専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利として、敷地利用権を有することになります。
原則として、区分所有建物と敷地利用権は、分離して処分することが出来ません。別々に処分した場合には、その処分は無効になります。
ただし、例外として、
①敷地が細かく分筆されており、分筆された各々の土地に区分所有者が各々単独の所有権を有する場合
(この状態を「分有」といいます。)
②区分所有者が分離処分を可能とする規約を締結している場合
があります。
マンション管理の概要
区分所有建物であるマンションのガバナンス面についてご説明します。
1 集会(総会)
区分所有建物を有する者は,全員で,建物の管理を行うための団体を構成します(区分所有法3条)。この団体が,同法に定めるところにより,集会を開き,規約を定め,管理者を置くことができます。ここでいう集会は,よく総会と呼ばれています。
管理者を置くとありますが,ここでいう管理者はいわゆる管理会社ではなく,管理組合(またはその理事長)のことです。一般的には,管理組合を置いて,管理組合が管理事務を委託している先の会社が管理会社となります。
集会(総会)の議事運営は,極めて民主的で,下記3のとおり,区分所有者の数および議決家の数の多数で決することとなっています。
2 管理規約
集会において規約を定めることができ,これを管理規約と呼んでいます。
一から作成することは大変なので,国交省がマンション標準管理規約を作成しており,ほとんどのマンションではこれを参照して,各マンションの実態に合わせて条項を追加などしていると思われます。
規約で定めることができる事項は,建物などの管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項とされています(区分所有法30条1項)。規約で定められている事項は,区分所有者に影響のある事項といえるため,区分所有者としては関心をもっておかなければならないものであります。
3 集会(総会)
集会は,区分所有者の団体の最高意思決定機関であって,建物等の管理に関する重要事項は,原則として集会の決議で決することとなります。
集会の議事は,区分所有法または規約に特別の定めがない限り,区分所有者及び議決権の各過半数で決することとなっています(区分所有法39条)。この議決権の数は,規約に特別の定めがない限り,専有部分の床面積の割合とされています(同法38条)。決議に反対した区分所有者も,集会で決定された決議には従わなければなりません。
区分所有法では,
①共有部分の変更(同法17条1項)
②規約の設定,変更または廃止(同法31条1項)
③区分所有者全員の団体(同法3条)を法人とする決議(同法37条)と同法人と解散する決議(同法55条)
④義務違反者に対する使用禁止の請求(同法58条),区分所有権の競売の請求(同法59条),占有者に対する引き渡し請求(同法60条)
⑤建物の一部滅失の場合の復旧(同法61条5項)
⑥建替え(同法62条)
等に特別の定めがなされており,⑥を除き区分所有者及び議決権の各4分の3の特別決議を要するとしています。
⑥の決議は,区分所有者及び議決権の各5分の4の特別決議となっています。
集会での議決権は,書面または代理人によって行使することも可能で,規約でこれを否定することはできません。
4 管理組合
区分所有者は,全員で,建物の管理を行うための団体を構成します(区分所有法3条)。この団体は,当然に権利義務の主体となるのではなく,また,区分所有法に従い管理者を置くことができますが(同法25条),管理者はこの団体を代理したり代表したりするものではなく,区分所有者を代理するにとどまるとされています。
この団体も,区分所有法の定める集会,規約,管理者等に関する規定に従って運営されていれば「権利能力なき社団」とみることができます。
しかしながら,建物等の管理を円滑に行うために,法人格を与え,理事を選任して法人を代表させ,一元的に管理行為をさせるという要請から,管理組合を法人化することも可能とされております(同法47条)。
5 管理会社
法律上は,区分所有者全員で構成する団体や管理組合,管理組合法人を構成して,建物等の管理に当たるとされていますが,多くのマンションでは建物等の管理を管理会社に委託していると思われます。
管理会社は,日常的な建物のメンテナンスから,理事会や集会(総会)運営の支援まで行っているところがほとんどです。このようなこともあり,区分所有者は自らの建物の管理について日常的には関心を持たずに生活することができています。
しかしながら,区分所有法上は,区分所有者が主体となって建物等の管理をしなければならないとなっているのであって,管理会社に任せておけば全て大丈夫ということではないのです。
聞くところによると,マンションの管理会社から,管理組合との契約の辞退,解約をすることもあるようです。その理由で一番大きなものは,「管理組合の要求が不合理」とされ,コンプライアンスに関する要求,たとえば経費削減のため法定点検を省くように求められたことも挙げられています。また,修繕積立金の値上げが承認されず,マンションの老朽化等から安全性が確保できないために契約を辞退することもあるようです。
管理組合と管理会社とのトラブルでは,管理会社が弁護士に相談することもなされております。ただ,管理会社の弁護士の意見について管理組合が納得できずトラブルが解決されない事例も散見されます。管理組合として,意見を反映させたいのであれば,管理会社任せにせず,管理組合側で弁護士に依頼することもご検討ください。
マンション管理規約について
1 管理規約
区分所有建物においては,構造上必然的に,建物,その敷地および附属施設を共同で管理しなければならず,また,その使用をめぐって区分所有者間でさまざまな利害の調整を図らなければなりません。
そのために,区分所有法は,区分所有者相互間の事項を,規約で定めることができるとしています(区分所有法第30条)。
なお,管理規約は,区分所有者間において,集会の決議によって作成されるものですが,一般的には,国土交通省が参考として作成している「マンション標準管理規約」をもとに制定されていることが多くなっています。
2 規約の対象となる事項
①規約によらなければ定めることができない事項(必要的規約事項)
・共用部分の共有関係,共有持分の割合や,管理に関する決定方法
・管理者の選任および解任方法
・管理者の権利・義務
・集会での議決権割合と議決定数の変更など
②規約以外の方法によって定めても効力を生ずるが建物等の管理・使用をより円滑に行うために予め規約として定める事項(任意的規約事項)
・管理者が区分所有者のために訴訟の当事者となること
・電磁的方法による議決権の行使など
3 規約で定めることができる事項
区分所有法で個別的に定める事項のほか,「建物又はその敷地若しくは付属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項」です。
たとえば,専有部分に属する配管について定期的に点検・補修を行い,共同の管理に服せしめる旨の規約を定めることは可能です。専有部分を居住以外の目的で使用することを禁止することや動物の飼育を禁止することも,規約で定めることが可能となっています。
4 規約自治の限界
管理規約は,区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない(区分所有法30条3項),とされています。衡平性を欠く規約は,効力を有しないとされます。
規約の衡平性は,「専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは付属施設につき,これらの形状,面積,位置関係,使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払った対価その他の事情」を,総合的に考慮する必要があります。
5 規約の設定,変更及び廃止
規約の設定,変更及び廃止は,区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議によってすることとなっています。一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすこととなる場合には,その者の承諾を得なければなりません(区分所有法31条)。
6 規約の保管及び閲覧
規約は,管理者が保管しなければなりません。また,保管者は,利害関係人の請求があったときは,拒否をする正当な理由がある場合を除いて,規約の閲覧をさせなければなりません。規約の保管場所は,建物内の見やすい場所に掲示しなければならないこととなっています(区分所有法33条)。
管理費や修繕積立金の滞納への対策
区分所有建物であるマンションのガバナンス面についてご説明します。
1 マンションの管理費等
(1)管理費の負担
区分所有マンションでは,共用部分の管理のための費用として,各区分所有者が管理費を負担しています(区分所有法19条)。
マンションの構造上または性質上,共用部分が存在しますので,その管理費用は区分所有者が負担することとなります。
一般に,区分所有権の床面積の割合に応じて,その費用を負担することとなりますが,規約によって別段の定めをすることができます(区分所有法19条,14条)。
例えば,床面積にかかわらず1戸あたりの金額を定めることもできます。
国交省の平成30年マンション総合調査によると,1戸あたり月額管理費の全体平均は,15,956円となっており,また,同調査では,1戸あたり月額修繕積立金の全体平均が11,243円となっておりますので,併せると,1戸あたり平均的な負担額は,月額27,199円となります。
(2)管理費の滞納
国交省の平成30年マンション総合調査によると,3か月以上滞納している住戸がある管理組合は,全体の24.8%でした。1年以上滞納している住戸がある管理組合も全体の16.4%で,相当数の管理費の滞納があることが分かります。
平均的な負担額から計算すると,1年以上の滞納で32万円以上の滞納と相当額となり,共用部分の管理や修繕計画に支障をきたすかもしれません。
2 管理費等の滞納への対策
(1)管理費等の滞納がある場合の対策
①支払催告
管理組合は滞納者へ,管理費支払いの催告をして支払請求をしていくこととなります。内容証明郵便を送付して,支払を求めるのが一般的かと思います。
②訴訟提起
郵便による催告が奏功しない場合,少額訴訟や支払督促などの法的手続か通常の訴訟提起かを選択することとなります。
③強制執行
判決がなされても支払いがなされない場合には差押えなど強制執行や,先取特権に基づく競売(区分所有法7条)などの対策が必要となります。
(2)方針検討
もっとも,それぞれの対策のためには費用を要することとなりますので,費用対効果を検討する必要もあります。一般的には,早期の対策をとることで,低コストで,早期解決を図ることができます。
訴訟提起に際し,管理者に訴訟追行権限を与えるためには,規約または集会の決議による必要があります(区分所有法26条4項)。規約がない場合には集会決議を経る段取りも含めて検討しなければなりません。
なお,管理費等の支払請求権は,権利を行使できる時から5年の消滅時効にかかります(最判平成16年4月23日民集58巻4号959頁,民法166条)。
債務者が区分所有者であることと支払いがないことは,管理組合からすればすぐにわかることですので,5年以上の滞納がある場合には,消滅時効を援用されて支払義務を免れられるかもしれません。早めに対策をとる検討をしなければなりません。
迷惑行為を行う入居者への対応
分譲マンションに近所迷惑な人が入居している場合,どのような対応が考えられるのでしょうか。
区分所有法に定められている対応策について,ご説明します。
1 共同利益背反行為の禁止
区分所有法は,区分所有者は,建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない(区分所有法6条1項)として,共同利益背反行為を禁止しています。
共同利益背反行為とは,「建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為」です。 建物の保存に有害な行為というものは,たとえば,建物の一部を取り壊して建物全体の安定度を弱めるような行為など,建物自体に物理的侵害を加える行為が典型です。
共同の利益には,建物自体に物理的侵害を加える行為のような財産的観点からのものだけでなく,いわゆる生活上の共同の利益も考慮されています。たとえば,他の区分所有者の迷惑となる動物を飼育したり,共用部分を独占的に使用して他の区分所有者の正当な使用を妨げたり,騒音・悪臭を発したりするような行為は,区分所有者の共同の利益に反する行為にあたります。
共同利益背反行為をする者に対しては,以下の対応をすることができます。
①共同利益背反行為の停止,その行為の結果の除去またはその行為の予防措置をとることの請求(同法57条)
②専有部分の使用禁止の請求(同法58条)
③区分所有権及び敷地利用権の競売の請求(同法59条)
2 共同利益背反行為に対する措置をする主体
上記の請求は,義務違反者以外の区分所有者全員または管理組合法人によって団体的に行われるもので,訴訟の提起をするには集会の決議を必要とします。
管理規約等により訴訟の提起を管理者または理事などに対して授権しておくことはできません。ただ,義務違反者以外の区分所有者の全員の名において訴訟を提起することは実際上著しく不便であるので,集会の決議によって,管理者や集会で指定された区分所有者が,他の区分所有者の全員のために訴訟を提起することができます。
3 各措置の請求権の相互の関係
①共同利益背反行為の停止等の請求は,必ずしも訴えをもってする必要はありませんが,②専有部分の使用禁止の請求及び③競売の請求は,訴えをもってしなければなりません。
区分所有者の共同利益背反行為に対しては,まず①の当該行為の停止等の請求をすることが多いと思われますが,①の請求や訴訟をせずとも,②専有部分の使用の禁止の請求や③競売請求の訴訟をすることは認められます。
③競売請求は,他の方法によっては共同利益の維持回復ができないことを要しますが,必ずしも②の請求を経なければならないものではありません。
4 各措置の請求内容
①共同利益背反行為の停止等の請求
「行為を停止すること」とは,現在している行為をやめ,将来においてその行為をしないことです。 騒音や悪臭の原因となる行為を止めることです。居住用マンションの1階店舗部分のカラオケボックスについて夜間の一定期間の使用を止めることなどが例です。
「行為の結果を除去すること」とは,侵害物を撤去したり原状回復のための措置を講じたりことによって,侵害状況を取り除くことです。
共用部分に設置された工作物を撤去させたり,共用部分の占有状態を解消させたりして明渡しさせることが例です。
「行為を予防するため必要な措置を執ること」とは,侵害行為が発生するおそれがある場合にそれを予防するための措置をとることです。
専有部分を改装しようとしている場合に躯体部分である耐力壁の除去・加工を禁止したりすることが例です。
②専有部分の使用禁止の請求
請求内容は,共同利益背反行為者に対して相当の期間その者の専有部分を自ら使用することを禁止することです。
当該区分所有者が専有部分の所有権は維持しつつ,自らはそれを使用することができないこととなります。その家族や使用人等の占有補助者による使用も禁止されます。区分所有権は失いませんので,専有部分の使用が禁止されている間も,管理費の負担など区分所有者としての義務を免れることはありません。
③区分所有権及び敷地利用権の競売の請求
請求内容は,共同利益背反行為者の区分所有権及び敷地利用権の競売の請求です。
訴えの結果得られた判決の確定によって,競売権が形成されます。この判決に基づき,民事執行法に従い,執行裁判所に競売の申立てをすることができます。
判決が確定した日から6カ月を経過したときは,競売の申立てはすることができません。
この競売は,いわゆる形式的競売(担保権の実行としての競売の用に目的物の強制処分を行うことによって事故の債権の満足を図るというものではなく,特定の財産を換価する必要がある場合に,それを適切な手続きにゆだねて当該財産権者を保護するために行う競売のこと)です。
競売代金は,競売のための費用を控除した後に,当該区分所有者に渡されます。なお,共同利益背反行為者である区分所有者や,その者の計算において買い受けようとするものは,買い受けの申し出ができません。
共同利益背反行為者への措置
措置内容 | ①行為の停止 | ②使用禁止 | ③競売 |
---|---|---|---|
主体 | 義務違反者以外の 区分所有者全員 または管理組合法人 |
義務違反者以外の 区分所有者全員 または管理組合法人 |
義務違反者以外の 区分所有者全員 または管理組合法人 |
手段 | 訴え | 訴え | |
訴え提起のための集会決議 | 普通決議 (区分所有者及び 議決権の各過半数) |
特別決議 (区分所有者及び 議決権の各4分の3) |
特別決議 (区分所有者及び 議決権の各4分の3) |
弁明機会の提供 | 不要 | 要 | 要 |
強制執行の方法 | 代替執行 間接強制 |
間接強制 | 競売の申立て |
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マンションの老朽化への対応
マンションストックの現状
国交省の調査によれば,令和元年末時点で,築後40年を超えているマンションは,マンションストック総数の約14%の98.8万戸とされています。その数は10年後には約2.3倍,20年後には約4.2倍となると推計されています。
マンションについては,修繕計画が立てられており,その期間は新築の場合で30年とされることが多いようです。そうすると,築後40年のマンションでは,既に何らかの修繕がなされているといえます。 しかしながら,いくら修繕を行っても,経年による劣化は避けられません。
マンションの老朽化への対応としては,①大規模修繕,②建替え,③マンション・敷地売却という選択肢があります。総会において,区分所有者がマンションをどのように利活用したいかを議論し,その総意をまとめなければなりません。
大規模修繕工事
修繕積立金を,区分所有者から毎月徴収していることが多いと思います。修繕計画に基づいて,大規模修繕工事の費用を積み立ているものです。
大規模修繕工事を実施するための参考としては,国交省が「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」が公表しています。
大規模修繕工事を実施するためには,
①修繕積立金の決定
②大規模修繕工事の方針の決定
③具体的な大規模修繕工事の実施の決定
という各段階で,総会の決議が必要となります。このうち,③具体的な大規模改修工事の実施の決定をするための決議は,「形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」でない場合,区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による必要があります。
建替え
建替えに関しては,国交省が「マンション建替え実務マニュアル」を公表しています。
マンションの建替えの方針が採用された場合には,説明会を実施したうえ,総会決議にて,建替えの実施を決定します。この建替え決議には,区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数による賛成が必要となります。
そして,建替え決議では,以下の事項が定められなければなりません。
①再建建物の設計の概要
②建物の取壊し及び再建建物の建築に要する費用の概算額
③前記②に規定する費用の分担に関する事項
④再建建物の区分所有権の帰属に関する事項
多数決による決議になりますので,建替え決議に賛成しないことがありえます。建替え決議に賛成しない区分所有者に対しては,建替えに参加するか否かを催告することとされ,催告を受けた区分所有者は2か月以内に回答をしなければなりません。回答しない場合には,参加しないものとみなされます。
建替え決議に賛成せず,建替えに参加しない区分所有者に対しては,区分所有権を時価で売り渡すべきことを請求することができます。
このようにして,区分所有建物の建替えを進めていくこととなります。
マンション・敷地売却
マンションの老朽化への対応として,上記のような大規模修繕又は建替えを行うためには,いずれも多額の費用を要します。
これまで建替えが実現しているケースでは,容積率に余剰があり,再建建物の床の売却によって建築資金をねん出できる場合がほとんどでした。
容積率の余剰がなく,修繕積立金が十分でないマンションにおいては,区分所有者全員で多額の費用を負担しなければならず,結果的に大規模修繕や建替えがなされず放置される状況もありました。
このような状況の下,マンションの建替え等の円滑化に関する法律が改正され,マンション及びその敷地を売却するための特例が創設されました。
この制度は,耐震性に問題のあるマンションにつき,特定行政庁に対しマンションを除却する必要がある旨の認定を申請することができるようになりました。この認定を受けた「要除却マンション」では,本来は区分所有者全員の合意がなければすることができない,マンション及び敷地の売却について,総会の決議ですることができるものとされます。
この総会決議には,区分所有者の頭数,議決権及び敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上の多数の賛成が必要とされます。
老朽化したマンションの区分所有者の方,管理組合の理事長をされている方,管理を委託されている管理会社の方は,対応につき,守口門真総合法律事務所へご相談ください。