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親権とは

親権とは、父母が未成年の子を一人前の社会人となるまで養育するため、子を監護教育し、子の財産を管理することを内容とする、親の権利義務の総称といわれています。

親権者を誰にするのか?

未成年の子どもがいる場合、離婚後の親権者を夫婦のどちらにするか決めなければ離婚はできません。

これは、離婚した場合、どちらかの単独親権となるためです。 離婚だけを先に成立させ、子の親権者の決定・指定だけを後で行うことはできません。夫婦間の合意で親権者を指定できないときは、協議離婚の届出ができないので、調停や裁判で親権者を定めることになります。

ここで大切な事は、子どもの生活・福祉を考えて決めることです。親のエゴや離婚の際の意地の張合いなどで決めるものではないということを十分に考える必要があります。

調停や裁判における親権者を定める基準

基準つまり判断のための要素としては、
①経済的能力・資産状況(養育費・生活費を確保できるかどうか)
②後監護の継続性(現実に子を養育監護しているものを優先する)
③子の意思の尊重(15歳以上の未成年の子についてはその意思を尊重する)
④兄弟姉妹関係の尊重(血のつながった兄弟姉妹についてはなるべく同じ者を親権者とする)

などがあります。

離婚届の親権者の記入には細心の注意が必要

離婚届を受け付けてもらいたいがために、とりあえずどちらかを親権者として記入しておいて、離婚が成立してから改めて話し合おうと思っても、親権者は離婚届に記載した通りに戸籍に記入されてしまいます。

一度決定された親権者を変更するには家庭裁判所の許可が必要であり、簡単に変更できるものではありません。

監護者とは

監護者とは、財産管理権と身上監護権から構成される親権のうち、身上監護権を有する者と定義されています。
簡単に言えば、子どもを引き取り、生活を共にし、身の回りの世話をする人のことです。

例えば、親権者を父親と定め、監護者を母親と定めた場合、子どもは戸籍上父親の戸籍に残りますが、一方で、実際に引き取って子どもの面倒をみるのは母親ということになります。

このように、親権者と監護者は、それぞれが、部分的に子どもの責任を負うということができます。

どのような場合に利用されるの?

例えば、子どもがまだ幼い場合や、親権をめぐる父母の対立が激しい場合などに利用されます。

もし、相手方と親権をめぐる対立が発生してしまったのであれば、親権を譲って自分が監護者になる方法もあるのです。あなたが子どもと生活することを望み、あなたと生活した方が子どもも幸せになれると思うなら、親権を譲って監護者になり、子どもとの生活を優先した方がいい場合もあります。

監護者のポイント

①監護者は、身上監護権の子供の養育の権利と義務がある
②監護者になる場合は,取り決めた内容を文書にして残す。
③両親以外の第三者も監護者になれる。
④親権者に対して養育費の支払いを請求できる。

監護者のポイントは以上の4点ですが、特に②は重要です。
離婚届には、親権者を記載する欄はありますが、監護者を記載する欄はありません。したがって、監護者を定めた場合には、離婚合意書か公正証書を必ず作成しておきましょう。合意内容を書面化することで、離婚後のトラブルを避けることができます。

監護者はどうやって決めるの?

監護者は、親権者を選ぶ場合と異なり、離婚と同時に決める必要はありません。

離婚が成立した後も監護者を決めることができます。父母が協議で決めることができないときは、家庭裁判所に対し、「子の監護者の指定」の調停または審判の申立てをして、決めてもらうことができます。

なお、監護者は、一般的には、親権者でない親を指定することが多いのですが、特に法律の規定はありませんので、祖父母や親の兄弟姉妹を指定することもできます。

面接交流(面接交渉)とは

離婚後、親権者または監護者にならなかった方が、子どもに面会したり一緒に時間を過ごしたり、文通やメール、電話などをすることを面接交流と言い、その権利を面接交流権と言います(以前は面接交渉権と呼ばれていました。)。

この面接交流権は、民法などの条文に規定された権利ではありませんが、判例や家庭裁判所の実務でも認められています

妻が子どもに会わせてくれない

親には別居中の子どもに会う権利は当然に認められています。

離婚の話し合いがこじれたまま妻が子どもを連れて実家へ帰ってしまっているとき、妻が夫に子どもを合わせないようにしているといった場合は、離婚成立の前後を問わず、夫は家庭裁判所に面接交渉の申立をすることができます。

面会交流が認められる基準

面会交流が認められる基準は、子どもの利益、子どもの福祉です。 したがって、親であっても面会することで子どもに悪影響があるような場合には、面会交流権は制限されます。

面接交渉の拒否・制限・停止は可能か?

親権者または監護者にならなかった方の親に、子どもを会わせないようにすることは原則としてできません。

子どもに対する面会交流権は、親として当然にもっている権利で、子どもに会わせることまで拒否することはできないと考えられています。

但し、例外的に、相手が子どもを虐待したり、勝手に子どもと会ったり、子どもを連れ去ろうとしたりする場合は、面会交流権の制限を家庭裁判所に申立てることができます。

また、面会の仕方によっては、子どもに動揺を与え、精神的不安を招くこともあり得ます。
具体的な悪影響が出るような場合には、子どもがある年齢に達するまで面会を禁止したり、親権者または監護者同伴の場で会うなどの方法も考えられます。

さらに、子どもとの面会の際に復縁を迫ったり、金銭の無心を言ったりするような場合には、面会交流権の停止を家庭裁判所に申し立てることができます。

面会交流が認められないのはどのような場合?

① 親権喪失事由(著しい不行跡)がある場合。

② 子どもや親権者または監護者に暴力を振るったり、その他の悪影響を及ぼすおそれがあるような場合。
※ 片方の親が、子どもに暴力を振るったりしていて、もう一方の親が子どもを救うために子どもを連れて離婚したような場合には認められません。
※ 子どもを引き取って育てている親が再婚し、子どもとともに円満な生活が営まれ、別れた親と会うことが子どもに動揺を与えマイナスであると評価されれば、認められない可能性があります。
※ 思春期の子どもなど年齢的に非常に難しいときで、別れて暮らす親と会うことによって,その精神状態が動揺することが考えられるような場合、認められない可能性があります。

③ 子どもが面会交流を望んでいない場合。

話し合いで何を決めればいいの?

面会交流を認める場合には、頻度実施時間場所等の条件を、決めておくことが必要です。

取り決めた条件は書面にしておけばよいでしょう。

話し合いで決まりそうにない

話し合いで決まらなければ、家庭裁判所に対し、子の監護に関する処分として面会交流の調停申立てをすることができます。 調停が不成立であれば、手続は審判に移行します。

面会交流の条件に納得できない!

当事者間で取り決めた面会交流の条件に納得できない場合は、調停・審判を申し立てることができます。

申立てをする裁判所は、調停の時は相手方の住所地または当事者が合意した家庭裁判所、審判の時は子どもの住所地の家庭裁判所です(但し、調停から移行した場合には調停が係属する家庭裁判所に申立てることになります)。

親権者と監護者の変更

子どもの利益のために必要があると認められるときは、親権者や監護者を他の一方の親に変更することができます。

なお、子どもの利益のために必要かどうかについては、子どもの福祉の観点から、養育環境や、現親権者の監護態度、子どもの年齢・心身の状況、子どもの精神状態、子どもの意思などの事情を総合的に考慮して判断することになります。

親権者や監護者を変更する方法

まず、親権者を変更するには、家庭裁判所に対し、親権者変更の調停・審判を申し立てる必要があります。また、親権者変更の申立ては、両親の他、子どもの親族もすることができますが、子ども自身に申立てを行う権利はありません。 なお、親権者が変更された場合は、戸籍上の変更を伴うので、調停調書か審判調書を市区町村役場に提出して戸籍変更の届出を行う必要があります。

次に、監護者の変更は、父母の合意があれば話し合いだけで行うことができますが、後の紛争を防止するためにも、合意の内容は書面に残しておくべきといえます。 他方、現親権者や監護者が変更に同意しない場合には、家庭裁判所に対し、監護者変更の調停・審判を申し立てることになります。監護者変更の申立ては、両親及び監護者がすることができます。

なお、 監護者は、戸籍の記載事項ではないため、監護者が変更された場合でも、市区町村役場に戸籍変更の届出を行う必要はありません。

大切なのは養育状況を見守ること

以上のように、現親権者や現監護者の養育環境等に変化があった場合に、子どもの福祉の観点からみて他の一方の親が養育する方が望ましいと判断されれば、親権者や監護者を他の一方の親に変更することができます。

しかし、親権者や監護者の変更は、現親権者や監護者の養育状況の悪化を発見できなければ、なし得ません。 したがって、他の一方の親としては、常に現親権者や現監護者の養育状況を注視し、面会交流の際の子どもとの会話等を手掛かりに養育状況を把握しておくことが、最も重要だといえます。

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