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債権・売掛金回収の8つの方法

(1)弁護士が、貴社の取引先に電話・面談して催促する

債権や売掛金が回収できない場合、多くの会社では弁護士に相談する以前に、自社で電話や面談による催促を行っておられるものと思われます

しかし、弁護士が電話や面談で交渉することで、取引先の反応が変わることがあります。

つまり、弁護士が電話することで、取引先にこちらの本気度が伝わり、「支払わざるを得ないな」と思われる可能性が高くなります

(2)弁護士が、(弁護士名で)内容証明郵便で催促・督促する

弁護士に依頼しなくても、自ら、売掛金等を請求する内容の内容証明郵便を作成してこれを相手方に送付することもできます。しかし、会社が会社名で内容証明郵便を送付した場合、相手方に対する強制力はさほど強くありません

これに対して、弁護士が弁護士名で内容証明郵便を送付した場合、取引先は「このまま支払わないでいると裁判を起こされるかもしれない」と考え、支払いに応じる可能性が高くなります
実際、内容証明郵便には、「期限内に支払わなければ法的措置を講じる」と明記しますので、相手方は、「支払わざるを得ないな」と思われる可能性が高くなるのです。

(3)公正証書を作成する

公正証書とは、当事者の申立により公証人(公務員)が作成する「公文書」です。
公正証書遺言、離婚に伴う慰謝料・養育費の支払に関する公正証書等が比較的なじみのあるものといえるでしょう。最近では、任意後見契約公正証書が作成されることもあります。
債務の弁済に関する契約書を公正証書にしておくことがよく行われますが、その理由は強制執行が可能だからです

つまり、債権回収では、債務者が任意に支払わなければ、最終的には訴訟を提起して判決を得て、これに基づき強制執行をします。その強制執行の際には「債務名義」が必要ですが、公正証書も判決と同様に債務名義になり得ますので、わざわざ訴訟をしなくても強制執行が可能となるわけです
その意味で、公正証書を作成することは非常に大きな意義があります。

(4)民事調停手続をする

調停は、裁判所を利用する手続ですが、弁護士を立てずに、自ら調停の申立を行うことも可能です。
しかし、調停はあくまで話し合いですから、相手方がそもそも裁判所に出頭しなければ成立しません。
また、狡猾な相手になると、不当な引き延ばしを行うこともあり、さほど実効性がない恐れがあります。

これに対して、弁護士に依頼して調停を申し立てた場合には、相手には、裁判所へ出頭しなければならないという気持ちや、このまま調停が成立しなければ次は訴訟になるという気持ちが、芽生えやすいと言えます。

(5)支払督促手続

支払督促手続とは、「支払督促」という書類を裁判所から相手方に送付して貰い、相手方の反論がなければ、「支払督促」に記載された債権を公的に認めて貰うことができるという制度です。
しかし、相手方が異議を申し立てた場合には、「支払督促」は効力を失ってしまいます。

また、「支払督促」は、必ず相手方の住所地ないし事務所所在地の簡易裁判所書記官に申し立てる必要があり、相手方の住所が判明していない時には利用できません
このようなことから、支払督促手続については、弁護士が代理して行うケースはごく稀です。

(6)少額訴訟手続

少額訴訟手続とは、60万円以下の金銭の支払を請求する訴訟を提起する際に求めることができる特別な訴訟手続で、原則として審理を1回のみで終わらせて直ちに判決を行う手続です。

しかし、少額訴訟も、相手方が応じず、通常訴訟への移行を求めた場合には、通常訴訟へ移行されてしまいますので、時間を浪費するおそれがあります。

また、少額訴訟によってなされた判決に、相手方が異議の申し立てた場合、再び審理をやり直すことなり、大きく時間を浪費してしまいます。このようなことから、弁護士は、あえて少額訴訟手続を選択せず、最初から通常の訴訟手続を選択するのが通常です

(7)訴訟手続(通常訴訟手続)

訴訟手続は、債権・売掛金を回収する方法としては一番の正攻法です。
訴訟手続については、時間がかかるというイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、実は第1回目の裁判期日終了後直ちに判決が出るケースが非常に多いのです。

また、相手方が裁判期日に出頭した場合でも、事実関係を争うことなく「一括では支払えないので、分割払いにして欲しい。」等と和解の申し入れをしてくるケースも非常に多く、直ちに判決とはいかないにしても、裁判上の和解交渉がまとまらないときはいつでも和解交渉を打ち切って、早期に判決を貰うことができます

また、相手方の住所が判明しない場合でも、公示送達により、判決を貰うことが可能です。 (訴訟手続により判決を貰ったとしても、取引先が判決に従わず、代金を支払ってくれないことも考えられます。
しかし、その場合でも、強制執行手続の前提として先に判決を取得しておくことには大きな意味があります。)

(8)強制執行手続

確定判決、和解調書、調停調書などは「債務名義」と呼ばれ、相手方が任意の支払に応じない場合、裁判所に強制執行を求めることができます。

強制執行には、大きく分けて、

1)不動産執行
2)動産執行
3)債権執行

の3種類がありますが、一般の企業において強制執行といえば、そのほとんどが3)債権執行です。
債権執行の中心は銀行預金の差押えといえます。
銀行預金を差押えれば、回収すべき金額の範囲内である限り、差押時の預金残高をそのまま回収することができます。

また、相手方が企業であれば、仮にその口座にほとんど預金がなかったとしても、営業に重大な支障が生じるため、任意に代金を支払わせることができる場合があります。

また、相手方が債権を有している相手方の取引先等の第三債務者が判明している場合には、相手方の有する当該債権を差押えることもできます
相手方は、自らの取引先からの信用を失いたくないとの理由から、差押後に任意に支払ってくる可能性もあります。

このように、強制執行手続は債権回収における最後の手段として非常に有効です
最初から弁護士に相談しておけば、強制執行まで含めた債権回収のトータルサポートが可能です。
取引先が、債権・売掛金を支払わない場合、まずはお気軽に弁護士にご相談下さい。

取引先が破綻した場合の回収方法

取引先が破綻してしまった場合、債権の回収は非常に困難です

特に、不動産担保を有していない企業にとっては、その後の破産手続等において配当金を受領できるだけで、債権のうちの大半は回収不能として諦めるしかないケースも多いかと思います。

しかしながら、「諦めるのは早い」ケースもあります

(1)相殺により、回収する

取引先が破産しても債権回収が図れるケースの代表例として「相殺」が挙げられます。
相殺とは、当事者間で対立する債権を相互に保有し合っているような場合、両債権を同じ金額分だけ共に消滅させることができるという制度です。

取引先が破綻してしまった場合でも、取引先に対して債権と債務の両方が存する場合には、両者を相殺することにより、取引先に対する債権を回収したのと同様の効果を得ることができます。

もっとも、相殺の意思表示を、誰に対して、どのように行うべきか、頭を悩まされるところと思います。
弁護士を利用すれば、破産手続等の法的整理手続に応じて意思表示の相手方を選択し、内容証明郵便を利用する等、より確実な方法で、相殺の意思表示を行うことができます

(2)担保権を実行する

破産手続開始決定があっても、債権者の担保権は制限されることなく行使することができるのが原則です。 債権者の担保権は別除権と呼ばれます。

所有権留保で商品を取引先に売買し、取引先が倒産した場合、売買契約を解除し、取引先の了解をとった上で商品を引き上げます
取引先の了解をとらないと、窃盗罪などに問われるおそれがあるため、書面で了解をとります。
了解をとる場合、代表者か取引先の弁護士とすべきです。

取引先がその商品を既に第三者に転売している場合、その第三者が商品の所有権を即時取得していることが考えられること、及び、取引先との売買契約の中で第三者に転売されたときは所有権留保が解除されると定められている場合がありますので、その場合は所有権留保の方法によることは難しくなります。
抵当権の場合、裁判所に対し、競売の申立てを行います

申立に際して必要な書類は、抵当権の設定登記に関する登記簿謄本です。
登記簿謄本は、他にも抵当権の存在を証明する確定判決でもよいですが、大抵は登記簿謄本で申立てを行います。
また、申立を行う裁判所は、対象不動産の所在地を管轄する地方裁判所に行います。

(3)債権譲渡

取引先は、それまで何らかの事業を行ってきた以上、第三者に対して金銭債権を持っていることも十分に考えられます。例えば、取引先が別の会社に対して売掛金を持っている場合です。その場合、取引先からその債権の譲渡を受け、あなたが譲り受けた債権を第三者に対して行使することにより、債権の回収を図ることができます。

債権譲渡は原則として自由にできますが、債権譲渡を第三者に対抗するには、確定日付ある証書により、取引先から第三債務者に対して譲渡の事実を通知させる必要があります。
内容証明ならば確定日付がありますので、内容証明を用いて、取引先に譲渡の通知をさせましょう

(4)自社製品・他社製品を回収する

自社製品を回収する方法については、上の所有権留保の実行方法で記載したとおりです。
売買契約を解除し、所有権に基づいて回収しますが、取引先の承諾が必要になります
また、他社の製品を取引先から譲り受けることにより、代物弁済として債権の回収を図ることができます

もっとも、この場合はもともと第三者の財産だったものですから、「自社の製品を回収する」場合よりもさらに取引先の同意書を取っておく必要が高くなります。この場合も同意書がない場合は窃盗罪に問われる恐れがあります
さらに、この場合は取引先も容易に同意書を交付しないかもしれません。

そこで、取引先に対し、「弁済するまでこの製品は預かっておく」と申し向け、預かり証を取引先に交付する、という手段も考えられます。
ただ、一つ間違えば危険な方法ですので、実行する場合は弁護士に相談下さい。

債権回収を弁護士に依頼するメリット

債権回収を弁護士に依頼したときのメリットをお伝えします。

(1)交渉が有利になる

弁護士が代理人となって、債務者に内容証明郵便を送付するだけで、債務者が弁済に応じるケースも数多くあります。弁護士が代理人につくことで、請求に応じない場合はより強力な法的手段が講じられてしまう、との心理的プレッシャーが債務者に働くためです。

取引先が倒産する場合、債権回収は時間との勝負になります
交渉段階でできる限り早く回収しなければ、他の債権者に債務者の財産を持って行かれてしまうことも十分にあり得ますので、弁護士に委任して迅速に交渉を進めましょう。

(2)適切な法的手続がとれる

債権回収のためには様々な方法が考えられます。全てのケースにおいて通用するベストの方法などなく、ケースごとに手段を模索することになります
例えば、内容証明を相手方に送るだけでも、そのことが原因となって今後の取引が途絶えてしまうかもしれません。

弁護士に相談したのならば、どの方法がもっとも適切なのかという判断が可能となり、適切な法的手続を採ることが可能になります。

(3)訴訟を提起し、強制執行ができる

内容証明を送る、民事調停を申し立てる、支払督促を申し立てる、といった方法が奏功しない場合は、最終的には訴訟を提起することになります。しかし、訴訟は高度の専門性が必要となります。当方に有利な証拠を収集し、整理した上で当方の主張を説得的に行うための書面を作成する、といったことは大変な手間がかかる作業であり、専門家に依頼した方が合理的です。

また、訴訟で勝訴した後は、強制執行手続をしなければならず、これもまた煩雑です。
弁護士に依頼することで、訴訟・強制執行を適切に遂行し、債権回収を図ることができます。

(4)弁護士と、司法書士・行政書士の違い

内容証明郵便の作成等、債権回収を司法書士や行政書士に依頼する方法もありますが、司法書士や行政書士は、元々民事・商事のみならず刑事法まで含めたトータルな法的サポートを行うことを予定した資格ではないため、大法的知識の正確性・豊富さの点で疑問がない訳ではありません

また、内容証明郵便を送付した後の相手方との交渉については、簡易裁判所における代理権を有しない司法書士及び全ての行政書士は、弁護士法72条に抵触するため、原則として行うことができません。
このため、せっかく送った筈の内容証明郵便も、大いわば「送りっぱなし」になってしまう恐れがあります

2019年民事執行法改正について その1 ~強制執行における実効性の強化~

1 民事執行法の一部を改正する法律の成立

令和元年5月10日,民事執行法の一部を改正する法律が成立し,同月17日に公布されました。新しい民事執行法は,一部規定を除き,公布の日から1年以内に施行されることが予定されており,令和2年4月ころに施行される予定です。

民事執行法とは,勝訴判決等により法律上の権利を有する債権者が,法律上の権利を実現し,債務者から強制的に債権の回収を図るための手続です。すなわち,法律上権利の存在が認められる場合であっても,債務者がなお支払いに応じない場合に,強制的に権利の実現を図る手続を定めたものです。

今回の民事執行法改正により,①第三者からの情報取得手続が新設され,②現行の財産開示手続が見直されることで,強制執行の対象となる債務者の財産を把握することが容易になり,不誠実な債務者のいわゆる「逃げ得」に一定の歯止めがかかったものといえます。以下,重要な改正ポイントをご説明いたします。

2 第三者からの情報取得手続の新設

(1)現行制度の問題点と今回の法改正

現行制度では,勝訴判決等により債務者に対する法律上の権利が確定しても,債務者の財産に関する情報がない場合,強制執行の対象財産が確定できず,債権回収が図れないケースがありました。

強制執行の対象財産を把握するためには,弁護士会を通じた照会(23条照会)等の手段しかなく,裁判所を介した手続ではないため,個人情報保護の観点から第三者が情報開示を渋るケースもありました。

しかし,今回の法改正により,裁判所を通じた第三者からの情報取得手続が法律上明文化され,強制執行対象財産の把握が従来よりも容易になるものとされています。

(2)法改正の具体的内容

法改正により認められる第三者からの情報取得手続は以下のとおりです。

ア 債務者の預貯金債権や株式,国債等に関する情報の取得(新法207条)

新制度により,債権者は,銀行,信金,農協,証券会社等の金融機関から,債務者の預貯金債権や上場株式,国債等に関する情報を取得することが出来るようになります。

イ 債務者の不動産(土地又は建物)に関する情報の取得(新法205条)

新制度により,債権者は,登記所から,債務者が所有権の登記名義人である不動産(土地又は建物)に関する情報を取得することが出来るようになります。

ウ 債務者の給与債権(勤務先)に関する情報の取得(新法206条)

新制度により,債権者は,養育費,婚姻費用等の債権や生命・身体の侵害による損害賠償請求権について,市町村や日本年金機構,共済組合等から給与債権(勤務先)に関する情報を取得することが出来るようになります。

(3)小括

第三者からの情報取得手続は,勝訴判決等債務名義を有する債権者(強制執行が可能な債権者)等が,裁判所に申し立てを行うことで,裁判所が各機関に情報提供を命令し,裁判所に対する書面での回答を求めるものです。

但し,第三者からの情報取得手続において得られた債務者の財産に関する情報について,債権行使以外の目的で利用することは制限されています(新法210条)。

3 現行の財産開示手続の見直し

(1)財産開示手続とは

財産開示手続とは,勝訴判決等を有する債権者(強制執行が可能な債権者)等の申立てにより,裁判所が財産開示手続の実施決定をして債務者を呼び出し,非公開の期日において,債務者に宣誓の上,自己の財産について陳述させることによって債務者の財産を特定可能なものとする制度のことをいいます。

今回の法改正により,現行の手続がより利用しやすい手続に見直されています。

(2)申立権者の拡大(新法197条)

現行制度では,財産開示手続の申立権者が,確定判決等を有する債権者に限定されており,
①仮執行宣言判決を得た場合
②支払督促の場合
③公正証書により金銭の支払いを取り決めた場合
等が除外されていましたが,今回の法改正により,申立権者の範囲が拡大され,上記の除外されていた場合を含め,強制執行が可能な場合には,原則として財産開示制度の利用が可能となりました。

(3)刑事罰の強化(新法213条)

現行制度では,
①債務者が正当な理由なく財産開示期日に出頭しない場合
②財産開示期日において宣誓を拒んだ場合
③陳述すべき事項について陳述しない場合
④虚偽の陳述を行った場合
について罰則(30万円以下の過料)が定められていましたが,制度改正により罰則が強化され,これらの場合には6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金による制裁が科されることになりました。

4 小括

新民事執行法は,公布の日(令和元年5月17日)から1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行されます。但し,債務者の不動産(土地又は建物)に関する情報の取得(新法205条)については,公布日から2年を超えない範囲内において政令で定める日から運用開始となっております。

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