守口門真総合法律事務所の弁護士村上和也です。
片親が亡くなった場合の相続につき、よく御相談を受けますので、本日はこの点の解説をさせていただきます。
両親のうち父親が先に亡くなった場合、母親と子どもが法定相続人です。
ただし、遺産総額によっては相続税がかかりますので、後述のように「母親に全財産を相続してもらって納税を回避する」という選択をする方もあるかもしれません。
今回は、このような事例の際に気を付けたいことについて考えていきます。
配偶者控除の利用と節税
相続税を納付するだけの原資が不足しているときに、物納できる制度もありますが、要件が厳しいため原則として物納は認められません。
そこで、手持ちに納税原資が無く、かつ、相続財産に現金・預貯金が少ない場合には、相続税の納付に困ってしまいます。その場合、母親に相続を集中させると、母親の配偶者控除という税法上の特例により、大幅に税額を軽減できるため、配偶者控除による節税はよく使われます。
ところが、母親に相続財産を集中させたことで、今度は母親が亡くなると夫婦の財産が一気に子へ相続されてしまいます。相続税は累進課税方式で、課税対象が高額なほど税率も高くなって税額が多額になりますので、長期的には子どもも少しずつ相続して、適宜、相続税を納付しておいたほうが節税になる可能性もあります。
父親が先に亡くなった場合は、配偶者控除の特例を活用するかどうか、相続税の納税額も考えて検討したほうが良いと思います。
相続を先送りすると後でトラブルになる
相続争いを避けたいために、母親に全てを相続させて問題を起こさないようにすることも少なくありません。
しかしながら、遺産分けを話し合うことができない不仲なきょうだい間では、母親が亡くなったときにいずれ相続争い(「争族」「争続」)が起こるのは必至です。
とりあえず採った回避策が後で大きな争いにならないようにするには、母親だけに相続させるのではなく、母親が生きている間に母親の関与(口添え)のもと、きょうだいで良く話し合う必要があります。
残された親をどうするか
母親が健康な間は親の存在が大きく、きょうだいは争わずに過ごすでしょう。それでも、配偶者を失った親は気持ちが沈んで病気を患うかもしれませんし、病気をしなくても高齢になると介護の問題もあります。
現在は親と同居する子世代が少なくなっていますので、両親のどちらかが亡くなった場合、残された片親の面倒をどうするのかも問題になることが多いです。
例えば父の死をきっかけに弟が母親の面倒を見ることになったとき、弟の妻は不満をもらし、兄は弟が母親の財産を使ってしまわないか疑念を持つようになってしまうケースもあるかもしれません。
母親に認知症の傾向が現れた場合は、「自分に都合のよい遺言書になるように、母親を言いくるめているのでは?」と、きょうだい同士で疑念を持つケースもあり、親の奪い合いが始まることもあります。
母親と離れて暮らす兄が、同居している弟に無断で、財産の減少(流出・散逸)を防ぐために、成年後見選任を申し立てる可能性もあるでしょう。
認知症の親を被後見人とする成年後見選任申立ては、既に相続争いが始まっていることを意味します(相続争いの前哨戦という表現で説明しています)。
ここからもし兄(または兄が依頼した弁護士)が成年後見人に選任されると弟は嫌な気持ちになりますし、母親も気がしっかりしているときに、成年後見を申し立てた兄に不満を感じるかもしれないのです。
片親が亡くなったときこそ相続が重要
元々スムーズな話し合いができないきょうだいは、問題を先送りすることで感情のもつれが激しくなってしまい、母親まで亡くなったときには遺産分割協議が紛糾します。
したがって、片親が亡くなって相続が発生したタイミングこそ、残された親の介護も含めて、きょうだいが、生存している親を含めて、十分に遺産分割協議をして遺産承継することが適切であると考えます。
弁護士村上和也のプロフィール
所属:大阪弁護士会
重点取扱分野:遺言・相続(遺産分割・遺留分・遺言執行)・成年後見
講演歴:①「今日から始める相続対策」(終活セミナーでの講演)
②「相続・遺言・遺留分・金銭管理・成年後見」
(地域包括支援センター家族介護教室での講演)
③「金銭管理・成年後見・個人情報保護」(認知症サポーター養成講座での講演)
<弁護士からの一言>
・早い段階で御相談いただくほうが良い解決につながることが多いですから,ささいなことでも結構ですので,お早めにお問い合わせください。
・相続問題は,遺産分割調停・遺留分減殺請求訴訟等,様々な紛争を扱う,紛争処理のプロである弁護士に御相談ください。
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