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後見

Vol.5 元気なうちにできる財産管理の準備【弁護士コラム】

2025年12月1日|弁護士コラム, 後見

はじめに:「まだ大丈夫」と思っているうちに

多くの方が「まだ判断力はしっかりしているから大丈夫」とおっしゃいます。
しかし、認知症や病気はある日突然、現れることがあります。
そして一度判断能力が失われてしまうと、遺言書や任意後見契約書を作ること自体ができなくなるのです。

村上弁護士:「“元気なうちに準備する”という行動が、ご家族にとっての最大の安心につながります。」

成年後見制度が“守る仕組み”だとすれば、
遺言と任意後見契約は“備える仕組み”です。
この2つを早めに整えることで、将来の不安を大きく減らすことができます。

任意後見制度とは?

任意後見制度とは、自分が元気なうちに、将来の財産管理・契約手続・身上保護を信頼できる人に任せる制度です。
公証役場の関与のもと、 公正証書で「任意後見契約」を結びます。

判断能力が低下したときに、あらかじめ指定しておいた任意後見人が代理人として活動を始めます。

任意後見契約の基本ポイント

項目内容
契約時期判断能力があるうち(元気なうち)に結ぶ
形式公正証書による契約(公証役場で作成)
発動時期判断能力が低下し、家庭裁判所が監督人を選任したとき
任意後見人本人が信頼できる人(親族・弁護士など)を自ら指定可能

任意後見制度を使うメリット

任意後見制度を利用することで、
「誰に」「どのように」財産管理を任せるかを自分の意思で決めておくことができます。

主なメリットは次のとおりです。

  • 信頼できる人を自分で選べる(親族や弁護士など)
  • 将来の財産管理を計画的に準備できる
  • 本人の意思を尊重した生活支援が可能
  • トラブルや争いを未然に防げる

特に、家族間の関係が複雑な場合や財産が多い場合は、
弁護士など専門職を任意後見人として指定しておくと、
公平性と安全性の両方を確保できます。

任意後見契約と遺言をセットで考える

任意後見契約が「生前の備え」であるのに対し、
**遺言書は“死後の備え”**です。
この2つを組み合わせておくと、人生の終盤を通じてスムーズな管理が可能になります。

両制度の役割の違い

制度対応する時期主な目的
任意後見契約生前(判断能力が低下したとき)財産管理・生活支援
遺言書死後財産の承継・相続トラブルの防止

併用のメリット

  • 認知症になっても、信頼できる人に財産を任せられる
  • 亡くなった後も、遺言に基づいてスムーズに財産が承継される
  • ご家族が「どうすればよいか」で悩まずに済む

村上弁護士:「“判断力を失ったとき”と“亡くなった後”の両方に備えることで、安心の二重構えになります。」

実際の相談例

事例:一人暮らしの女性のケース

70代の女性から「自分が倒れたとき、財産をどうすればいいのか」と相談を受けました。
弁護士と一緒に任意後見契約書と遺言書を作成し、
判断力が低下した場合には弁護士が財産管理を担当、
亡くなった後は遺言書の内容に従ってスムーズに分配される仕組みを整えました。

「これでようやく安心できました」とおっしゃっていたのが印象的でした。

弁護士に依頼するメリット

任意後見契約書や遺言書は、形式や内容を誤ると無効になるおそれがあります。
弁護士が関与することで、次のような安心が得られます。

  • 有効な任意後見契約書・遺言書を作成できる
  • 家族間の利害関係を調整しながら設計できる
  • 将来の相続や介護費用まで見据えた長期的な支援が可能

また、弁護士が任意後見人に指定されている場合は、
家庭裁判所の監督のもとで、透明かつ公正に管理が行われます。

まとめ:「準備しておく人」が家族を守る

  • 判断能力が落ちてからでは、任意後見契約書も遺言書も作れない
  • 元気なうちに準備すれば、自分の意思を形にできる
  • 弁護士に相談することで、制度を正しく・安全に活用できる

成年後見制度が「問題が起きた後に守る」仕組みだとすれば、
任意後見契約と遺言は「問題が起きる前に備える」仕組みです。

「まだ早い」と思ううちに、動き出すことが、
ご自身とご家族の未来を守る最も確実な方法です。

コラムシリーズを終えて

この全5回のコラムでは、成年後見制度の基本から、銀行対応、家族間のトラブル、相続との関係、
そして生前の備えまでを幅広く解説してきました。

もしご家族の金銭管理や将来の備えについて少しでも不安があれば、
どうぞお気軽にご相談ください。
制度を知ることが、最初の一歩です。

守口門真総合法律事務所では、初回相談を無料で行っています。
一人ひとりの状況に合わせ、最適な方法をご提案いたします。

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Vol.4 遺産分割に後見人が必要なケース【弁護士コラム】

2025年11月27日|弁護士コラム, 後見

遺産分割に後見人が必要なケース

はじめに:相続が“止まる”ケースがあります

相続手続きの現場では、「親が亡くなったのに、遺産分割が進まない」というご相談をよく受けます。
原因のひとつが、相続人の中に判断能力が低下した方がいるというケースです。

たとえば兄弟の一人が認知症を患っている場合、
その人は法的に「遺産分割の内容を理解して同意する」ことができません。
この状態で協議を進めても、協議書は無効となる可能性があります。

こうしたときに必要になるのが、成年後見人の選任です。

なぜ後見人が必要になるのか

 遺産分割協議は、法的には「法律行為」にあたりますので、法律行為能力が必要です。
ですから、遺産分割協議書が成立するには、全員が自分の意思で内容を理解し、合意する必要があります。
そのため、判断能力が不十分な相続人がいる場合には、
本人の代わりに意思決定を行う代理人──つまり成年後見人を立てなければなりません。

村上弁護士:「後見人がいないまま協議書を作ろうとしても、頓挫してしまうケースが多いのです。」

後見人が必要になる主なケース

状況具体例
相続人の一人が認知症判断能力がなく、協議に参加できない
相続人が高齢で理解が難しい内容を把握できず、同意の意思が確認できない
相続人が入院中・施設入所中手続きが進まず、期限を過ぎてしまうおそれ

いずれも「相続人間で話し合えば何とかなる」と思いがちですが、
法的には全員の有効な同意が求められるため、
判断能力に問題がある場合は後見人の関与が不可欠です。

実際の事例

事例①:兄が認知症で協議が進まない

父の遺産を3人の兄弟で分ける予定でしたが、長男が認知症で施設に入所中。
家族だけで話し合い、長男の名義で印鑑を押した協議書を作成したものの、
登記を担当する司法書士から「無効の可能性がある」と指摘されました。

→ 家庭裁判所に成年後見人を申立て、後見人が代理で協議に参加。
 結果、法的に有効な協議として完了しました。

事例②:高齢の配偶者が意思確認できない

母が亡くなり、父と子ども2人が相続人に。
しかし父が90歳を超えており、協議内容を理解できない状態。

→ 家庭裁判所で後見人が選任され、父の代理として遺産分割に参加。
 不動産の名義変更や預金の解約も問題なく行えました。

「後見人を立てずに進める」とどうなる?

判断能力が低下した相続人を含むまま協議を行うと、
その協議自体が無効とされる可能性があります。

  • 遺産分割のやり直し
  • 不動産の登記ができない
  • 兄弟間で訴訟に発展する
  • 家庭裁判所への申立てが必要になる

一見「手間を省いた」つもりでも、結果的に時間も費用もかかってしまうことが少なくありません。

弁護士が関与するメリット

成年後見人を選任する手続きは、申立書類の作成や家庭裁判所とのやり取りなど、専門知識が求められます。
弁護士が関与することで、次のような安心があります。

  • 協議内容が法的に有効かを確認できる
  • 家庭裁判所への申立て・報告まで一括で対応できる
  • 手続きを滞らせず、円滑に相続を完了できる

村上弁護士:「相続と後見を“別の問題”と考えるのではなく、一続きの流れとして整理することが重要な場合があります。」

任意後見契約で「将来の相続」に備える

まだ元気なうちに「将来、判断能力が落ちたら誰に後見人を任せるか」を決めておく方法もあります。
それが任意後見契約です。

公正証書で契約を結ぶことで、本人が希望する人(子ども・弁護士など)を後見人に指定できます。
相続発生後に混乱しないよう、あらかじめ備えておく方も増えています。

まとめ:相続と後見は“連動して考える”

  • 相続人の中に判断能力が不十分な方がいると、遺産分割協議は進められない
  • 成年後見人を立てることで、代理人が法的に有効な協議を行える
  • 弁護士が関与することで、迅速・安全・適法な手続きが可能になる
  • 元気なうちに任意後見契約を結んでおけば、将来の相続にも備えられる

相続と後見は切り離せない関係にあります。
「今はまだ大丈夫」と思っているうちから、備えておくことが家族の安心につながります。

次回予告

Vol.5「元気なうちにできる財産管理の準備」
任意後見制度と遺言を組み合わせて行う“予防の仕組みづくり”を解説します。

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Vol.3 兄弟間で揉める“使い込み問題”を防ぐには【弁護士コラム】

2025年11月25日|弁護士コラム, 後見

はじめに:善意のつもりが“疑われる”

親の介護や生活費の管理を担うのは、多くの場合、子どものうちの誰か一人です。
ところが、その「善意の行動」が思わぬ誤解を生むことがあります。

 「母のお金で母の施設費を払っていただけなのに、相続のときに“使い込み”だと言われた。」

このようなご相談は、私たち弁護士のもとに頻繁に寄せられます。
家族間の信頼が揺らぐ原因は、“管理の不透明さ”にあります。
この記事では、こうしたトラブルを未然に防ぐために、
弁護士の立場から実践的な注意点をお伝えします。

なぜ“使い込み”と疑われるのか

「使い込み」とは、本人の財産を他の人が勝手に使用していると疑われる状態を指します。
実際に不正をしていなくても、状況次第で誤解を招くことがあります。

特に次のような場合、後で説明がつかなくなりがちです。

  • 出金記録が不十分:いつ・何のためにお金を使ったか分からない
  • 通帳をまとめて管理している:複数口座を一つに集約した結果、「移しただけ」が誤解される

つまり、「何をしているのか分からない」こと自体が、トラブルの原因になるのです。

また、「介護で助かっている」側と「自分だけが介護を負担している」側で、かなりの温度差があることも、トラブルの原因だと思われます。

実際に起きたトラブルの例

事例①:介護費の支払いが“私的流用”と疑われた

長男が母の介護施設の費用を立て替えながら、母名義の口座から現金を引き出していました。
しかし領収書を保管しておらず、弟に「何に使ったのか説明できない」と言われてしまいました。

→ 裁判所の調停では、「支出の裏付けが取れない」と判断され、長男が一部返還を求められる結果に。

事例②:通帳をまとめたら“勝手に移した”と誤解された

高齢の父の複数の口座をまとめた次女。
「管理を簡単にしたかっただけ」ですが、他の兄弟から「何のために?」と疑われ、関係が悪化しました。

トラブルを防ぐ3つのポイント

弁護士として現場を見ていると、“たったこれだけ”の工夫で誤解が防げたというケースが多くあります。

① 記録を残す

どんな小さな出金でも、「目的・日付・金額」を簡単にメモしておきましょう。
領収書や請求書をノートやファイルにまとめておくだけで十分です。
エクセルに支出を記録する方も増えています。

村上弁護士:「『説明できる状態』を保つこと。
それが、家族からの信頼を維持するために必要な工夫です。」

② できるだけ口座引落にする

施設費や光熱費など、定期的な支払いは口座引落振込に切り替えるのがおすすめです。
現金の出し入れを減らすだけで、記録の手間も誤解のリスクも大幅に減ります。

③ 第三者を介入させる

本人の判断能力が低下してきたら、早めに成年後見制度の利用を検討します。
弁護士など第三者が後見人となることで、家庭裁判所の関与のもと、財産管理が公的に監督されるようになります。

成年後見制度を利用するメリット

後見人制度を利用すると、家庭裁判所の監督のもとで財産を管理することができます。
これにより、家族間の不信や不正の疑いが生じにくくなります。

メリット内容
法的な代理権後見人が本人の代わりに契約・支払いを行える
透明な報告制度年1回、家庭裁判所に財産目録を提出する義務がある
トラブル防止公的に監視されるため、兄弟姉妹間の疑念を避けられる
専門家による管理弁護士が本人のために財産を管理する

弁護士が入ることで防げること

弁護士が後見人や財産管理人として関与すると、
「どこまでが本人のための支出か」「家族間でどのように調整するか」を明確に整理できます。
感情の対立を防ぐことで、将来的な相続手続もスムーズに進められます。

「家族の関係を壊さないために、あえて第三者が入る」
これも大切な“家族を守る選択”の一つです。

まとめ:信頼を“見える化”する

「お金のトラブルの多くは、不正ではなく誤解から生まれる」
──これは多くの後見案件を担当してきた私の実感です。

  • 支出の記録を残す
  • 領収書を保管する
  • 可能なら口座引落に切り替える
  • 判断能力が低下したら成年後見を検討する

これらを意識するだけで、トラブルの芽を大きく減らせます。
お金の管理を“見える化”することが、信頼を守る第一歩です。

次回予告

Vol.4「遺産分割に後見人が必要なケース」
相続の手続きで「後見人を立てないと進められない」具体的な場面を、実例を交えて解説します。

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Vol.2 銀行で親の口座から50万円まで引き出せる制度とは?【弁護士コラム】

2025年11月5日|弁護士コラム, 後見

はじめに:親の口座からお金を下ろせない?

「介護施設の費用を払いたいのに、親の通帳と印鑑を持って行っても銀行で断られた」
このようなご相談は非常に多くあります。

銀行では、たとえ実の子であっても、本人の委任や法的代理権がない場合、
お金を引き出すことができません。
認知症などで本人の判断能力が失われていると、委任能力の有無が問題となり、手続きが一層難しくなります。

しかし、そんな家族の負担を少しでも軽くするために、
最近、銀行では「50万円までの代理出金制度」という仕組みが設けられています。


銀行の「50万円までの代理出金制度」とは?

この制度は、認知症などで本人の判断能力が低下したとき、
家族が代わりに介護施設費用・医療費などを引き出せるようにした銀行の独自対応です。

全国銀行協会が2020年に策定したガイドラインをきっかけに、
多くの金融機関で運用が始まりました。
銀行によって運用は異なりますが、おおむね次のような条件で利用できます。


利用できる主な条件

  • 本人が認知症などで判断能力を失っている
  • 家族(配偶者・子など)が介護費・医療費のために出金する
  • 後見人や任意代理人がいない状態である

出金の上限

  • 1回につき50万円以内(銀行により月単位の上限設定あり)

用意する書類の例

  • 本人の通帳と届出印
  • 家族の本人確認書類
  • 医師の診断書または介護保険証
  • 支払い目的を示す請求書や領収書

どんなときに使えるのか

次のようなケースで利用されることが多いです。

状況出金目的
親が認知症で入院病院への医療費支払い
介護施設に入所入居費や生活費の支払い
自宅介護中介護用品・在宅サービスの費用
税金・光熱費の支払い公共料金の代理支払い

この制度は、あくまで応急的な手段です。
後見制度を申立てる前に、緊急で費用を用意したいときなどに役立ちます。


注意しておきたいポイント

便利な制度ではありますが、利用にはいくつかの注意点もあります。

① 本人以外のために使ってはいけない

引き出したお金は、必ず本人のために使う必要があります。
たとえ家族の支出であっても、本人名義の資金を使うと「使い込み」とみなされるおそれがあります。

② 記録を残すことが大切

どのような目的で、いくら引き出し、何に使ったか。
領収書やメモを残しておくことで、後々のトラブルを防げます。

村上弁護士:「“説明できる状態”を保っておくことが、家族間の信頼を守る第一歩です。」

③ 銀行によって運用が異なる

同じ制度でも、銀行ごとに提出書類や上限金額が異なります。
事前に支店で確認しておくと安心です。


成年後見制度との違い

「それなら後見制度はいらないのでは?」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、この制度と成年後見制度は目的と範囲がまったく異なります。

比較項目銀行の出金制度成年後見制度
対象範囲生活費・医療費などに限定財産全般の管理・契約
手続き銀行窓口で簡易手続き家庭裁判所の申立てが必要
代理できる行為出金のみ契約・不動産売却なども可能
効力の強さ銀行内でのみ有効法的に包括的な代理権
期間一時的継続的(後見終了まで)

つまり、代理出金制度は「短期的な保護」、
成年後見制度は「長期的な保護」を目的としています。


弁護士からのアドバイス

銀行の出金制度は、当面の支払いにはとても便利ですが、
継続的・ 恒常的な財産管理や契約行為まではカバーできません。

村上弁護士:「最初は銀行の代理出金制度を使い、
必要になった段階で成年後見制度に切り替える──
そんな“段階的な対応”が現実的です。」

焦って後見申立てをする前に、
まずはこの制度で一時対応をし、全体の状況を整理するのもひとつの方法です。


まとめ:慌てず、段階的に備える

  • 銀行による「50万円までの代理出金制度」は、当面の介護費・医療費等を支払うための応急処置。
  • ただし、本人以外の支出に使ったり、記録を残さなかったりすると、後でトラブルになることも。
  • 判断能力の低下が進んでいる場合は、早めに専門家へ相談し、成年後見制度への移行を検討しましょう。

次回予告

Vol.3「兄弟間で揉める“使い込み問題”を防ぐには」
家族間の信頼を守るために、お金の管理で気をつけるべきポイントを解説します。

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Vol.1 親のお金を守る仕組み:成年後見制度とは?【弁護士コラム】

2025年10月28日|弁護士コラム, 後見

はじめに:親のお金をどう守るか

高齢化が進む中、「高齢の親が自分のお金を管理できなくなったらどうすればいいか」というご相談が年々増えています。

 銀行の手続き、介護施設への入所契約、医療費や税金の支払いなど、日常生活のあらゆる場面で“本人の判断能力”が必要とされるからです。

ところが、認知症などで判断能力が衰えてしまうと、原則として、家族であっても、本人の代わりに自由に手続を進めることができない場面が多いです。

では、いざというとき、どうすればよいのか。

 その答えとなるのが、成年後見制度です。


成年後見制度とは?

成年後見制度とは、判断能力が低下した方に代わり、
「成年後見人等」が財産管理や身上保護などを行う制度です。


  選任してもらうための申立ては家庭裁判所に行い、家庭裁判所が成年後見人等を選任します。

たとえば次のような場面で活用されます。

  • 銀行での出金や口座管理ができなくなった
  • 介護施設への入所契約が必要になった
  • 不動産を売却したいが、意思確認ができない

このような場合、後見人が本人に代わって手続きを進め、
本人の生活や財産を守ります。


後見人の役割

成年後見人の仕事は大きく2つに分かれます。

区分内容
財産管理預金・年金の管理、施設費や医療費の支払い、不動産の売却など
身上保護住まいの契約、介護・医療サービスの利用手続きなど

いずれも本人の利益を最優先に考え、家庭裁判所の監督のもとで行われます。
「後見人が自分の判断ですべてを決める」わけではなく、
本人の意思をあるいは推定的意思を尊重しながら、生活を支えます。


どんなときに利用するのか

成年後見制度は、次のようなときに検討されます。

状況利用目的
認知症の進行で金銭管理が困難後見人が代理して、預金管理・各種支払等をするため
施設入所の契約ができない後見人が代理して施設入所契約をするため
不動産売却・相続手続き後見人が代理して、法的に有効な契約を行うため

申立てを行う時期の目安は、
「判断能力が明らかに衰え、銀行や役所の手続きが本人では難しい」と感じたときです。
早めに相談しておくことで、必要な時期にスムーズに手続きを進められます。


法定後見と任意後見の違い

後見制度には、法定後見制度任意後見制度の2種類があります。

区分開始のタイミング選任者特徴
法定後見判断能力がすでに低下した後家庭裁判所裁判所が後見人を選ぶ
任意後見元気なうちに準備する本人信頼できる人を自分で指定できる

すでに判断能力が低下している場合は法定後見、
まだ元気なうちに将来に備えたい場合は任意後見。
ご本人の状況に合わせて選ぶことができます。


弁護士が後見人になるメリット

後見人には、家族が選ばれる場合もあれば、
弁護士や司法書士などの専門職が選任される場合もあります。

弁護士が後見人となるメリットは、
法律に関わる複雑な手続きを中立的に処理できる点にあります。
特に次のような場面では、弁護士後見人が適しています。

  • 家族間で意見が分かれている場合
  • 不動産の処分や相続関係の調整が必要な場合
  • 財産規模が大きく、慎重かつ適切な管理が求められる場合

弁護士が関与することで、家庭内のトラブルを防ぎながら、
法的に適正な管理を行うことができます。


利用することで得られる安心

成年後見制度を利用すると、次のような安心が得られます。

  • 財産の管理・支出が透明化し、推定相続人間でのトラブルを未然に防げる
  • 本人が不利益な契約を結ぶ心配がなくなる
  • 家族の誰かが一方的に責任を背負う状況を避けられる

もちろん、申立てや報告には一定の手間がかかりますが、
その分、法的に守られた仕組みの中で安心して生活を支えることができます。


まとめ:親の「お金」と「尊厳」を守るために

成年後見制度は、単にお金の管理を代わりに行う制度ではありません。
本人の意思あるいは推定的意思を尊重しながら、法的なサポートを通じて“尊厳を守る”ための仕組みです。

「まだ早い」と思う段階でこそ、制度を理解しておくことが大切です。
ご家族の将来を見据え、早めに準備しておくことで、
いざというときに慌てずに対応できるようになりますので、お早めにご相談ください。

初回相談は無料です。

次回予告

Vol.2「銀行で親の口座から50万円まで引き出せる制度とは?」
成年後見制度を使わずに生活費をまかなう方法を、銀行の最新対応を踏まえて解説します。

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