1 保証に関する規定の見直し
平成29年5月26日,民法の一部を改正する法律が成立し(同年6月2日公布),一部の規定を除き,令和2年(2020年)4月1日から施行されています。
皆様の生活に影響する部分として,民法改正により,保証契約に関する規定が大幅に見直されましたので,以下,主な変更点をご説明致します。
2 個人根保証一般における極度額の設定
改正前民法においては,保証契約を書面ですることや,金銭の貸付け等によって負担する債務が含まれる根保証契約(不特定多数の債務を将来にわたって保証人が保証する契約)については極度額を定めなければ無効であることが定められていました。
これに対し,改正民法においては,個人による根保証契約一般について,金銭の貸付け等によって負担する債務が含まれているか否かを問わず,全て極度額を定めなければ無効であることを定められております。
これにより,賃貸借契約における個人の根保証契約や,身元保証契約における個人の根保証契約であっても,極度額の設定が必要になりました。
3 公正証書作成による保証意思の確認(事業のための貸金等)
・事業のために負担する貸金等を主たる債務とする保証契約
・主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約
については,保証契約締結前1か月以内に,公正証書によって保証債務を履行する意思を表示しなければ,保証契約の効力が発生しないことになりました。
これは,事業のために負担する貸金等の場合に限られますので,住宅ローンなどの事業性のない債務や,貸金等の債務でない場合には,公正証書の作成は不要です。
なお,保証人(個人)が,主たる債務者である法人の理事・取締役・執行役や,総株主の議決権の過半数を保有する支配株主,主たる債務者と共同して事業を行う者(共同事業者)又は主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者(配偶者)などである場合には,公正証書の作成は不要です。
4 保証人への情報提供義務
(1)保証契約の締結時点において
保証人(個人)が主たる債務者から委託を受けて,
・事業のために負担する貸金等を主たる債務とする保証契約
・主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約
を締結する場合は,保証契約締結時点において,主たる債務者から保証人に対し,①主たる債務者の財産及び収支状況,②主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況,③主たる債務の担保として他に提供し,又は提供しようとするものがあるときは,その旨及び内容に関する情報を提供する必要があります。
保証人が,主たる債務者である法人の取締役や,総株主の議決権の過半数を保有する株主,主たる債務者と共同して事業を行う者又は主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者などである場合にも,情報提供義務は認められます。
主たる債務者が上記の情報を提供せず,又は,事実と異なる情報を提供した場合,保証人は,その事項について誤認して保証契約を締結した場合で,かつ,情報提供義務に違反したことを債権者が知り又は知ることができたときは,保証契約を取り消すことができます。
(2)委託された保証人が請求した場合
保証人(個人・法人)が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合,保証人からの請求があれば,債権者は,保証人に対し,遅滞なく,主たる債務の元本,利息,損害賠償,その他主たる債務に関するすべての債務についての不履行の有無,残額,履行期限徒過の有無を通知しなければなりません。
(3)期限の利益を喪失した場合
主たる債務者が期限の利益を喪失した場合,債権者は保証人に対し,期限の利益の喪失を知った時から2か月以内に保証人(個人)に通知する必要があります。
この通知がなかった場合,債権者は保証人に対し,期限の利益喪失から通知を行うまでの期間に生じた遅延損害金を請求できません。
4 連帯保証人に生じた事由の効力
改正前民法においては,連帯保証人について生じた事由の主たる債務者に対する効力については,連帯債務の規定を準用しており,連帯保証人に生じた事由の多くが主たる債務者についても効力を及ぼすものとされていました。
これに対し,改正民法では,履行の請求,免除,時効の完成については,主たる債務者に対して効力を生じないことになりました。
これにより,債権者としては,主たる債務者に対する債権と,連帯保証人に対する債権を個々に管理しなければならず,時効期間の経過等に一層注意する必要が生じます。
5 小括
このように,皆様の生活にも影響を及ぼし得る保証に関する規定は,民法改正によって大幅に見直されています。日常生活に関する法律問題でお悩みの方は,守口門真総合法律事務所まで,いつでもお気軽にご相談ください。
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