守口門真総合法律事務所の弁護士村上和也です。
音信不通の兄弟がいる場合の相続手続について、よく御相談を受けますので、本日はこの点の解説をさせていただきます。
音信不通の兄弟がいる場合はどのように相続手続を進める?
兄弟の居場所も連絡先も分からない…。このように音信不通の兄弟がいる状態で、親が亡くなってしまった場合、相続手続をどう進めたら良いのでしょうか。相続発生時の対応について考えてみましょう。
音信不通者がいる場合の相続
遺言のないまま親が亡くなり相続が発生した場合、相続人全員による遺産分割協議によって遺産を分割する必要があります。この分割協議には相続人全員の参加が必要であり、1人が欠けた状態で合意しても、法律的には無効になってしまいます。
つまり、相続時に兄弟の居場所や連絡先が不明な場合、遺産分割協議を成立させることができません。その結果、被相続人の預金口座の解約や不動産の移転登記を進めることができなくなります。貸金庫がある場合、その貸金庫を開扉して中身を確認することはできますが(事実実験公正証書)、中身を取り出すことはできません。
このような、相続人に音信不通者がいる場合の対応として「音信不通者を探し出す」「不在者財産管理人を選任する」「失踪宣告を申立てる」という方法があります。
音信不通者を探し出すこと
まずは本籍地の市区町村で戸籍附票を発行してもらい、相手の現住所を確認しましょう。親族であればこのような手順の確認はスムーズに可能なはずなので、登録された現住所に実際に足を運ぶことも可能です。遠方であれば、まずはお手紙を送ってみる方法もあります。
不在者財産管理人を選任すること
不在者財産管理人とは、行方不明者の代理人として、その者の財産を管理する権限を持つ人のことです。
本人不明の状態が続くことに利害関係を持つ相続人や債権者等の申立てにより、家庭裁判所が不在者財産管理人を選任し、財産が動かせない状態を解決することができます。
不在者財産管理人には、行方不明者と利害関係の無い人で、弁護士が選ばれるのが一般です。
今回のような場合には、不在者財産管理人は、音信不通者の兄弟の代理人として、裁判所の許可を得たうえで遺産分割協議に参加することになります。そして、遺産分割協議の結果として、不在者財産管理人が、音信不通者の代わりに音信不通者に帰属する遺産を管理・保管します。
具体的には「収支報告書や目録の作成」「裁判所へ定期的に報告する」といった業務が必要です。また、勝手に財産を使うことも禁じられています。
しかしながら、不在者財産管理人の利用にもいくつか面倒な問題もあります。まずは、不在者財産管理人の選任を申立てるには、本当に音信不通であることを立証する必要があります。単に疎遠になっているだけでは要件を充たしません。
また、「どこで何をしているのかわからない」というだけでは要件を充たしません。住民票に登録された住所に配達証明郵便を送り、それが受理されずに戻ってくるかどうか等を試すことで、立証する必要があるのです。
また、申立費用以外に、家庭裁判所に納める予納金として20万円から30万円程度が必要です(金額は各家庭裁判所によって異なります)。この予納金は、音信不通者に十分な財産があれば返還されますが、音信不通者の財産がわずかしかない場合には返還されないこともあります。
失踪宣告を申立てること
音信不通者の生死不明の状態が7年以上続いている場合、家庭裁判所に対し、「失踪宣告の申立て」をすることできます(民法第30条第1項)。
失踪宣告には上記「普通失踪」以外に「特別失踪」もあります。
特別失踪は、山岳遭難・海難事故・自然災害などで生死不明状態となった場合となります(民法第30条第2項)。
特別失踪による失踪宣告を申立てるには、事故や災害が去ってから生死不明の状態が1年経過していることが条件になります。
「音信不通が長く続いているので、早く失踪宣告を申立てたい」と思うかもしれませんが、生きている可能性がある場合は、申立てを避けたほうが良いでしょう。なぜなら、失踪宣告が確定すれば、音信不通者は、法律上、死亡したものとして扱われることになるからです。
なお、音信不通者が法律上死亡したものとして扱われる結果、音信不通者以外の相続人が、不在者財産管理人が管理していた音信不通者に帰属予定であった遺産を、取得(または分割取得)することになります。
ただし、申立てから失踪宣告までの期間は約1年程度かかりますので、相続税の申告期限(相続発生から10か月以内)を過ぎてしまうことも多いようです。申告期限を過ぎてしまうと延滞税が発生してしまうため、他の相続人が、音信不通者の相続税を代わりに納付ケースもありました。
このような場合、音信不通者は相続申告をしていないのに、相続税だけが納付されている状態となるため、税務当局の立場からは、音信不通者分の納付相続税を法律上受理した扱いをすることができない結果、その納付相続税が浮いてしまうようです。
そこで、後日、家庭裁判所から選任された不在者財産管理人に、相続税納付を追認してもらい、その納付相続税額を遺産分割時に精算してもらうことになると思われます。
最善の対策として
上記のうち、どのような選択をしたとしても、法定相続人の中に音信不通者がいる場合には、相続手続を終了させるために、通常に比べてはるかに手間と時間がかかります。
そのため、理想としては、事後的な対応でなく、事前の対応として両親に遺言を残してもらっておくことだと思います。
そこで、現在既に音信不通の兄弟がいる場合には、両親と御相談のうえ、相続人全員による遺産分割協議が不要となるよう、両親に遺言書を作成してもらいましょう。
当法律事務所においても、毎年10数件程度、遺言書作成・サポートの御依頼をいただいておりますので、お気軽に、お問い合わせください。
弁護士村上和也のプロフィール
所属:大阪弁護士会
重点取扱分野:遺言・相続(遺産分割・遺留分・遺言執行)・成年後見
講演歴:①「今日から始める相続対策」(終活セミナーでの講演)
②「相続・遺言・遺留分・金銭管理・成年後見」
(地域包括支援センター家族介護教室での講演)
③「金銭管理・成年後見・個人情報保護」(認知症サポーター養成講座での講演)
弁護士からの一言
・早い段階で御相談いただくほうが良い解決につながることが多いですから,ささいなことでも結構ですので,お早めにお問い合わせください。
・相続問題は,遺産分割調停・遺留分減殺請求訴訟等,様々な紛争を扱う,紛争処理のプロである弁護士に御相談ください。
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