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離婚

不貞相手に対する離婚慰謝料請求について

2019年11月8日|弁護士コラム, 離婚

1.はじめに

配偶者の不貞行為が原因で夫婦が離婚した場合において,不貞相手に,離婚時の精神的苦痛に対する慰謝料を請求できるかが争われていた事案について,平成31年2月19日,最高裁の判決が出ました。

世間の注目も高く,また今後の実務への影響も大きいと考えられる最高裁判決ですので,ここでご紹介させて頂きます。

2.事案の概要

平成31年2月19日の最高裁判決の事案の概要は以下のとおりです。

①X(夫)とA(妻)は,平成6年3月に入籍し,それ以降同居していた。

②Xは仕事のため帰宅しないことが多く,AがY(不貞相手)の勤務会社に入社した平成20年12月以降は,XとAとは性交渉が無い状態だった。

③Xは平成22年5月頃,YとAとの不貞関係を知った。なお,Aは,その頃,Yとの不貞関係を解消し,Xとの同居を続けていた。

④Aは,平成26年4月頃,Xとの別居を開始し,同年11月に離婚調停を申し立て,平成27年2月25日,AとXとの間で離婚の調停が成立した。

⑤その後,Xは,Yに対して,YがXの妻であったAと不貞行為に及び,これにより離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったと主張して,不法行為に基づき慰謝料等の支払を求めた。

3.従来の考え方

(1)過去の判例(最高裁判所昭和54年3月30日判決)によれば,夫婦の一方から不貞相手に対する不貞の慰謝料請求(婚姻生活の平和の破壊による直接的な精神的苦痛に対する慰謝料請求)自体は認めていました。

この場合,不貞行為自体を不法行為と考えて,不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条・710条)をすることとなります。

もっとも,民法上,不法行為に基づく損害賠償請求権は,被害者又はその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間で時効消滅すると定められています(民法724条)。

そのため,不貞行為や不貞相手のことを知ってから3年経過すると,損害賠償請求することが基本的にできなくなるという結論となります。

(2)今回の裁判でも,XがAの不貞行為とYを知ったときから3年以上経過していたため,Yから民法724条に基づき損害賠償請求権が時効消滅しているとの反論がされました。

4.下級審の判断

(1)東京高裁平成29年4月27日判決では,下記のように判示して,Xの慰謝料請求を認めました。

<東京高裁平成29年4月27日判決>

 Xの本件慰謝料請求は,本件不貞行為が原因でXとAの婚姻関係が破壊され,離婚するに至ったことにより,Xが被った精神的苦痛についての慰謝料の支払を求めるものであって,この場合には,上記損害は離婚が成立して初めて評価されるものであるから,本件慰謝料請求権の消滅時効は,本件離婚調停が成立した平成27年2月25日から進行するものというべきである…。

 

 

(2)上記裁判例では,Yには,「夫婦を離婚させたこと」を理由とする不法行為責任があるとして,「離婚に伴う慰謝料を請求することができる」と判断しました。

この考え方では,「離婚させたこと」が不法行為に当たると捉えるため,時効の起算点は不貞行為と不貞相手を知ったときよりも後になります。

そして,本件では,離婚時(離婚調停が成立した平成27年2月25日)から3年は経過していなかったため,損害賠償請求権が時効消滅していないと判断しました。

5.平成31年2月19日の最高裁判決

(1)結論として,最高裁はXの請求を棄却しました。すなわち,今回の事案では離婚慰謝料は認められない,と判断しました。

 

<最高裁平成31年2月19日判決>

 夫婦の一方は,他方に対し,その有責行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由としてその損害の賠償を求めることができるところ,本件は,夫婦間ではなく,夫婦の一方が,他方と不貞関係にあった第三者に対して,離婚に伴う慰謝料を請求するものである。

 夫婦が離婚するに至るまでの経緯は当該夫婦の諸事情に応じて一様ではないが,協議上の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても,離婚による婚姻の解消は,本来,当該夫婦の間で決められるべき事柄である。

 したがって,夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は,これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても,当該夫婦の他方に対し,不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして,直ちに,当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはないと解される。

 第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは,当該第三者が,単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。

 以上によれば,夫婦の一方は,他方と不貞行為に及んだ第三者に対して,上記特段の事情がない限り,離婚に伴う慰謝料を請求することはできないものと解するのが相当である。

 

 

(2)本件では,YとAとの不倫関係がXに発覚した頃に、YとAとの不貞関係は解消されており、XとAとの離婚成立までの間に,Yに上記最高裁が挙げた「当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情」はないと判断し,Xの請求を棄却しました。

このように,最高裁は,原則として,夫婦の一方が,不貞相手に対して,離婚させたことを理由とする慰謝料請求は認められないと判断しました。

 

(3)夫婦が離婚するに至るまでの経緯は,当該夫婦の事情によりさまざまであると言えます。また、離婚は、本来、当該夫婦の間で決められるべき事柄であるため、不貞行為により当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至った場合でも、直ちに当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うものではないと考えられます。

最高裁の判断は、このような考え方を前提にしたものと言えます。

6.最後に

今回の判決では元夫であるXの請求が棄却されましたが,上記のように,「特段の事情」があれば離婚慰謝料が認められると最高裁が判断したことで,認められる余地があると言え,今後の裁判例が注目されます。

もし、今回取り上げた問題だけでなく、他にも離婚等についてお困りの方がいらっしゃいましたら、守口門真総合法律事務所へお気軽にご相談ください。

 

 

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