所長の10周年のご挨拶をはじめ、法律コラム「遺言書の種類・方式」をご紹介させて頂きました。
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法律コラム 遺言書の種類・方式
不要な相続争いを回避するため、あるいは希望に合わせた遺産分けをするために活用される遺言ですが、民法では、遺言に関して、その種類および方式が明確に規定されています。今回の法律コラムでは、遺言書の種類・方式について説明します。
1 普通方式遺言
遺言を大きく分けると「普通方式遺言」と「特別方式遺言」に分けられます。 普通方式遺言には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。
①自筆証書遺言(民968条)
自筆証書遺言は、遺言者が全文・日付・氏名を直筆し、捺印して作成します。紙と筆記具があれば作成可能で、用紙の制限はなく、筆記具もボールペン・万年筆など自由に使用して差し支えありません。
<自筆証書遺言のメリット>
・費用がかからず、手軽に作成できる
・1人で作成するので、内容が漏れることがない
<自筆証書遺言のデメリット>
・法定の方式に従っていないと無効になるおそれがある
・遺言の存在をどのように遺族に知らせるかが問題になる
・紛失のおそれがある
②公正証書遺言(民969条)
公正証書遺言は、原則として遺言者本人が公証役場に出向き、証人2人以上の立会いのもとで、遺言内容を口述し、公証人が筆記して作成します。 原本は公証役場で保管してもらいます。
<公正証書遺言のメリット>
・公証人により方式・内容のチェックを受けるので、無効になるおそれがない
・家庭裁判所の検認が不要
・公証役場で原本が保管されているので、紛失のおそれがない
<公正証書遺言のデメリット>
・費用がかかる
・証人2人以上の立ち合いが必要となる
③秘密証書遺言(民970条)
秘密証書遺言は、公正証書遺言と同じく、公証役場で作成します。遺言者は、遺言書に署名・捺印をして封印し、公証人役場に持参し、公証人1人、証人2人以上の前に封をした遺言書を提出します。 作成した秘密証書遺言は、公証役場で保管してもらうことができます。 秘密証書遺言は、自筆証書遺言に比べ、紛失のおそれがなく、遺言書の存在を遺族に知らせることができるメリットがありますが、一方で、作成に手間と費用がかかる上、自筆証書遺言と同様、方式に従っていないと無効になるおそれがあります。
2 特別方式遺言(民976条-983条)
特別方式遺言には、死亡危急者遺言・伝染病隔離者遺言・在船者遺言・船舶避難者遺言の4種類があります。いずれも普通方式遺言が困難な特殊な状況でのみ認められており、方式の要件が緩和されています。
いずれにしても緊急事態に遺言を残すのは困難なことですから、日常の生活の落ち着いた状態で、遺言内容をしっかり考え、専門家に相談しながら作成するのがよいでしょう。