守口市の土地所有者からの御依頼案件です。
ある土地を法人に賃貸し、当該法人が土地賃借人として、借地上に建物を建築しましたが、当該法人の代表者(唯一の取締役かつ唯一の株主)が死亡し、全相続人が相続放棄をしたため、土地賃料が長期間未払いとなっていました。
そこで、現状を打開したいとのことで、弁護士受任となりました。
結論から言いますと、建物収去土地明渡請求訴訟を提起するとともに、特別代理人選任申立てをし、特別代理人と裁判上の和解をするにより当該建物所有権を取得することができました。
以下、具体的な流れを報告します。
まず、当該法人の登記簿を取得し、代表者の住所及び氏名を把握し、代表者の出生まで戸籍をさかのぼり、相続人を把握しました。
そして、相続人に対して書簡を送り、全相続人が相続放棄したことを確認しました。
そうしますと、当該法人の株主が居ないことになり、株主総会を開催することができず、新代表者を選任することができないため、そのままの状態で提訴しても、訴状の送達を受けるものがいません。
そこで、建物収去土地明渡訴訟を提起するとともに、特別代理人(民事訴訟法35条)の選任申立てをし、選任された特別代理人が訴状の送達を受けて、訴訟係属が実現しました。
その後、受訴裁判所から、特別代理人に対する権限付与に対して否定的な示唆もあったため、一時取締役の選任申立てもしましたが、最終的には、特別代理人に対する授権がなされ、未払賃料を放棄する代わりに、依頼者が当該建物の所有権を取得する内容の和解を実現することができました。
最終的に裁判所が授権してくれた理由としては、
①全相続人が相続放棄しているため、利害関係人が居ないこと、②土地賃貸借契約の解除の効果が生じているため、当該法人には建物収去義務が発生しているが、収去(解体)することは不経済であること等の事情があり、その旨を上申したことが奏功したためと思われます。
なお、本件建物は未登記建物であり、所有権取得後に保存登記をする必要があったため、事前に、保存登記に適した和解条項案かどうかを管轄法務局に確認しました。
この事案については、死亡した代表者につき、相続財産管理人選任申立てをする方法も理論的には考えられました。
しかし、相続財産管理人では、上記のような和解を実現する権限を取得することが難しいと判断し、建物収去土地明渡訴訟の提起と特別代理人選任申立ての方法によりました。