所長弁護士村上和也が、平成28年5月10日、企業の人事担当の方々に対して、「高齢化社会における法律相談の特徴」について」という内容で、セミナー講師を務めさせていただきました。
内容は、
1 成年後見の利用増
2 成年後見制度の概説
3 相続ならぬ「争」続
4 認知症と裁判例などです。
講演内容の一部を御紹介させていただきます。
1 成年後見の利用増
①平均寿命の伸長、判断能力の低下、認知症
②金融機関のコンプライアンス
→財産管理能力が無いということで成年後見の必要性
2 成年後見制度の概説
(1)概説
類型:後見(全くない)・保佐(著しく不十分)・補助(不十分)
必要書類:診断書、財産目録、収支予定表等
手続:家裁による審判
成り手:弁護士・司法書士・行政書士・社会福祉士・親族・NPO法人
報酬:家裁が決定
(2)成年後見人の職務の内容
成年後見人が「金銭管理」
→就任後1月内、その後も定期的に、財産目録及び収支表を家裁に提出
これにより、本人保護になる(とともに、将来の遺産を確保できる)
→被後見人の死後、成年後見人は相続人に遺産を承継させて、これにより成年後見人の業務が終了(家裁への報告要)
なお、成年後見人は「身上監護」もする
被後見人の生活・医療・介護等に関する契約・手続を行うこと
3 相続ならぬ「争」続
争続の割合が増えている印象あり
(原因分析)
①「家」概念の希薄化・個人主義の風潮等
②高齢化、将来の年金不安
→当事者間での遺産分割協議の困難化、遺産分割調停の増加
→特に、父と母が共に死亡したあとの相続では、争いが顕在化する傾向有
4 認知症と裁判例
(1)JR東海の事例
認知症の夫(当時91)が徘徊して列車に跳ねられて、妻と長男が民法714条「監督義務者」に該当するか否か争われた事例。
一審で妻と長男に対する損害賠償請求が認められ、二審でも妻に対する損害賠償請求が認められた(長男に対する損害賠償請求は否定)。
最高裁は、妻及び長男に対する損害賠償請求を、ともに否定。
すなわち、民法714条「監督義務者」に該当するかどうかは、同居の有無・問題行動の有無・介護の実態を総合考慮して判断するべきであり、本件では、妻自身も要介護1の認定を受けていたこと、長男も20年以上同居しておらず事故直前も月に3回程度した訪問していないこと等より、ともに「監督義務者」に該当しない、と判示した。
(2)窃盗事例
刑事責任能力無しとして、無罪(犯罪不成立)とする判断
刑事責任能力はある(犯罪成立)が、執行猶予とする判断
刑事責任能力はある(犯罪成立)が、減刑する判断
近時、執行猶予中の再犯事例につき、再度の執行猶予判決(神戸地裁)