エンディングノートとは?遺言書の効力との違いは?
エンディングノートとは
エンディングノートとは、もしもの時に備えて、自分の死後・終末期の取り扱いに関する希望や、財産に関することなど、家族や周囲の人に伝えたいことを書き残すノートのこと。葬式や遺産相続・納骨等、死後に関することや、医療や介護といった終末期に関することなども書いておくことができます。
近年は、エンディングノートが市販されていますので、簡単に作成することができます。
ノートに記載された質問に答える形で記入していけば完成しますので、気軽に取り組むことができますよ。
もちろん、普通のノートに自由に書くスタイルでも問題ありません。
エンディングノートの書き方と注意点
エンディングノートを書くコツですが、とにかく書きやすいところから書き始めましょう。興味のあるところ、心配なところから始めると進めやすいと思います。
「全部書き切ろう」と意気込んで始めると挫折しやすいので、「ここだけでも書いてみようかな」という気持ちで始めてみてください。
自分でエンディングノートの作成する場合は、下記の内容を記載されることをおすすめします。
・自分自身のこと(個人情報)
・家族・親族・親しい友人のこと
・飼育中のペットについて
・医療について(かかりつけの病院や常用薬の情報)
・介護の希望
・葬儀・納骨の希望
・財産について
・遺言について(作成の有無や保管場所)
・家族へのメッセージ
エンディングノートは、葬儀の形式など自分の希望を伝えることも可能です。
しかし「希望を実現しようとしてくれる誰かがいる」ということも意識してください。
ただ「あれをしてほしい、これをしてほしい」と書くだけでなく、「誰に何をしてもらうか」ということを意識しながら書くことで、無理な希望を書くこともなくなるでしょう。
「戒名もお墓も要らない」と考えている人は注意してください。戒名が無くてお寺は受け入れてくれるのか?お墓が無ければ遺骨はどうするのか?というところまでしっかりと考えなければ、残された家族が困ってしまいます。
重要な情報の記入や加筆修正は要注意
注意したいのは、重要な情報を直接記載することです。
例えば、銀行口座の暗証番号や、自宅の権利証などの保管場所は家族に口頭で伝えておいてください。
また、頻繁に変更する可能性のある部分(財産目録等)については鉛筆書きでも構いませんが、遺産相続等の重要な内容はボールペンで記入し、第三者による加筆修正を防いでください。
相続争いを防ぐために、本人が加筆修正する場合は二重線を使い、過去の内容を残すべきです。加筆修正の日付も各ページに記載することをお勧めします。いつの時点での意思なのか、ということは家族の判断材料になります。1カ月前に書いたものと、10年前に書いたものであれば、判断の仕方も変わってくるでしょう。少なくとも、本人の意思を尊重すべきもの(相続や延命)についてだけでも、日付の記入を行うべきです。
完成したノートの保存方法
エンディングノートを書いても、それを必要とする時に家族が見つけられなければ意味がありません。
エンディングノートの存在を家族が知らないというのは言語道断です。
必ず、家族にその存在を知らせ(できれば一緒に書いてください)、保管場所を伝えておいてください。
また、エンディングノートは2冊作ることをお勧めします。
「財産・相続関係」のものと、「それ以外のもの(葬儀や医療等)」とに分けて作成し、別々に保管するべきです。前者は金庫や鍵付きの引き出しなどに厳重に保管し、後者はすぐに取り出せる場所に保管することが望ましいです。
特に、医療に関する希望については、すぐに確認できるようにしておいてください。もし本人が延命治療を希望していたのに、その意思を確認できず延命治療が行われてしまった場合、途中で延命治療を中止することは事実上不可能です。
遺言書とエンディングノートの違い
遺言書とエンディングノート、どちらも生前に自分で作成するものですが、どのような違いがあるのでしょうか。
遺言書は法的効力がある
遺言書は法的な効力を有します。
しかし、エンディングノートには法的な強制力はありません。
遺言書が無ければ、エンディングノートにいくら相続のことを記入しても、その希望が叶えられない可能性があります。
相続についての希望がある場合は、エンディングノートだけではなく、遺言書を作成してください。
ただし、遺言書に書かれたことは何でも強制力を有するという訳ではありません。
遺産相続・子供の認知など、その範囲は厳格に法定されています。
範囲外のことを書いても法的効力を持たないので、気を付けてください。
また、医療・介護・財産管理(生前)についての遺言も、法的効力を有しません。
ただし「任意後見契約書」を公正証書で作成すれば、認知症で判断能力が減退した時に限り、効力を有します。
身体の不自由に関しては、「任意後見契約書」という方式ではなく、「財産管理委任契約」を交わす必要がありますが、これによって効力が生じます。
遺言書は死後のことしか書けない
遺言書に書けるのは、「死後」のことに関してのみです。
本人が死亡した場合に財産をどうするか、という話です。
一方、エンディングノートには「生前」のことも書けます。
「財産をどのように管理するか」「どういった介護を希望するか」ということが書けるのは、エンディングノートならではです。
尊厳死(延命治療をせずに自然に死ぬこと)に関することは、エンディングノートだけでなく、「リビングウィル」という書類によってもその意思を表示することができますが、こちらも法的強制力は生じません。
まとめ
遺言書は死後についての希望を記すことができ、その内容に法的強制力が生じます。
一方、エンディングノートは生前・死後についての希望を記すことができますが、法的効力は生じません。
各々の特性がありますので、両方作っておくことで、より効果的に本人の意思を遺すことができます。
心得ておきたいのは、エンディングノートも遺言書も、生きているうちに作る必要があるということです。
何かあってからでは作成できませんし、遺言書に関しては判断能力が無くなった後に作ったものは無効です。
そのため、早めの準備が大切です。
また、どちらも本人の真意が書かれていることが重要になります。
ただし、気持ちは時間の経過で変わることもあるので、作成後は内容を定期的に見直すようにしましょう。

相続担当弁護士
村上 和也
プロフィール
同志社大学卒。平成20年より事務所開設し、守口市・門真市を中心に大阪で相続に関する相談多数。遺言・遺産分割・遺留分・遺言執行・事業承継・成年後見など。
弁護士からのメッセージ
遺言作成や遺産分割協議を数多く手掛けてきており,危急時遺言の作成実績もある数少ない法律事務所です。
ささいなことでも結構ですので,お早めにお問い合わせください。
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