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弁護士コラム

民法改正 ~消滅時効に関する規定の見直し~

2021年04月6日|借金問題, 弁護士コラム

1 消滅時効に関する規定の見直し

 平成29年5月26日,民法の一部を改正する法律が成立し(同年6月2日公布),一部の規定を除き,令和2年(2020年)4月1日から施行されています。
 皆様の生活に影響する部分として,民法改正により,消滅時効に関する規定が大幅に見直されましたので,以下,主な変更点をご説明致します。

2 改正前民法の規定と問題点

 改正前民法では,原則的な債権の消滅時効期間を10年として,例外的に,短期消滅時効による職業別の時効期間(1年~3年)や,商事消滅時効(5年)を設けていました。

 そのため,原則的な債権の消滅時効期間が10年とはいえ,実際に10年間の消滅時効期間が適用されるのは,金銭消費貸借(貸付け)債権や債務不履行に基づく損害賠償請求権のうち,商事消滅時効の適用されないものや,不当利得返還請求のような法定債権の場合の限られ,適用場面が限定されていました。

 こういった改正前民法の問題点として,債権毎に時効期間が異なることに果たして合理性があるのか,債権毎に時効期間が異なれば,当然時効期間の個別判断が必要となり,債権管理が困難になることなどが挙げられていました。

3 改正民法の原則・適用関係

(1)改正民法の原則
 改正民法では,職業別の短期消滅時効・商事消滅時効の制度が撤廃され,債権の消滅時効期間が原則統一化されました。

 そして,「権利を行使することができる時」(客観的起算点)から10年という期間が維持された上で,「権利を行使することができることを知った時」(主観的起算点)から5年という時効期間が新たに設けられました。

 一般的な契約による債権は,その発生時において,債権者が債権の発生原因と債務者を認識しますので,債権の発生時が,「権利を行使することができることを知った時」(主観的起算点)となり,そこから5年間の時効期間が開始されます。

 一方で,不当利得返還請求権や安全配慮義務に基づく損害賠償請求権等については,債権者が権利行使可能と知った時期によって,主観的起算点が認定されます。

(2)改正民法の適用関係
 改正民法による時効期間の定めは,改正民法の「施行日後」に生じた債権に適用されます。「施行日前」に債権が生じた場合は,依然として,改正前民法の時効期間が適用されます。

 但し,「施行日前」に債権が生じた場合とは,「施行日以後に債権が生じた場合であって,その原因である法律行為が施行日前にされたときを含む」とされています。

 すなわち,施行日前に締結された契約に基づき,施工日後に債権が発生した場合,「施行日前」に債権が生じた場合に該当し,改正前民法が適用されることになります。

 たとえば,①施行日前に保証契約を締結し,施行日後に代位弁済による求償権を取得した場合,②施工日前に請負契約を締結し,施行日後に工事が完成して請負代金請求権が発生した場合などは,改正前民法が適用されます。

4 不法行為に基づく損害賠償請求権

 例外として,不法行為に基づく損害賠償の請求権は,①被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき,②不法行為の時から20年間行使しないときは,時効によって消滅します。

①,②の期間については,改正前民法と変更はありません。
 但し,②の20年という期間について,これまでの判例法理は,除斥期間であると解してきました。除斥期間にあたる場合,消滅時効とは異なり,一般に中断や停止がなく,当事者による援用(時効利益享受の意思表示)がなくとも,裁判所がその適用を判断することができます。改正民法によって,②の20年という期間も時効期間であることが定められ,判例法理による運用が変更されるに至りました。

5 生命・身体の侵害による損害賠償請求権・適用関係

(1)改正民法の規定
 民法改正により新設された規定として,人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権については,主観的起算点から5年,客観的起算点から20年のいずれかによって時効消滅するものとされ,時効期間の長期化が図られます。

 この規定は,債務不履行に基づく損害賠償請求の場合でも,不法行為に基づく損害賠償請求の場合でも共通して適用されます。

 債務不履行による損害賠償請求の場合,主観的起算点からの時効期間は,債務不履行における原則期間の5年と同じですが,客観的起算点からの時効期間は20年となり,債務不履行における原則期間の10年から長期化が図られています。

 不法行為に基づく損害賠償請求の場合,主観的起算点からの時効期間が3年から5年となり,長期化が図られています。

(2)改正民法の適用関係
 ア 不法行為に基づく場合
  不法行為に基づく損害賠償請求権の適用関係としては,「損害及び加害者を知ったときから3年間」の消滅時効が,改正民法の施行の際に完成していなければ,改正民法が適用されます。

 イ 債務不履行に基づく損害賠償請求の場合
  債務不履行に基づく損害賠償請求権の適用関係としては,施行日以後に生じた契約関係に起因して発生した生命・身体に関連する損害賠償請求権であれば,改正民法が適用されます。

6 改正民法における消滅時効期間のまとめ

(1)改正民法の原則
 客観的起算点から10年,主観的起算点から5年。

(2)不法行為による損害賠償請求権
 ①被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年,②不法行為の時から20年間(但し,いずれも消滅時効期間)。

(3)生命・身体の侵害による損害賠償請求権
 客観的起算点から20年,主観的起算点から5年。
 ※債務不履行・不法行為に基づく損害賠償請求のいずれでも適用。

7 小括

 このように,皆様の生活にも影響を及ぼし得る時効期間に関する規定は,民法改正によって見直されています。法律問題でお悩みの方は,守口門真総合法律事務所まで,いつでもお気軽にご相談ください。


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保証会社に明け渡しがあったとみなす等の権限を付与する条項の適法性

2021年03月25日|不動産, 弁護士コラム

 以前,「保証会社に解除権を付与する条項の適法性」というコラムで取り上げた裁判の,控訴審判決がなされました(大阪高裁令和3年3月5日)。

 高等裁判所では,「保証会社に解除権を付与する条項の適法性」に関する判断は維持され,これに加え,原審が違法とした「保証会社に明け渡しがあったとみなす等の権限を付与する条項」についても,適法であると判断しました。

 最高裁判所への上告が予定されているようですが,今回の判断が維持されれば,入居者が行方不明となった場合などの明渡し業務に関して,不動産賃貸業界への影響は大きいためご紹介いたします。

1 問題となった条項

第18条(賃借人の建物明渡協力義務)
2項 保証会社は,下記のいずれかの事由が存するときは,賃借人が明示的に異議を述べない限り,これをもって本件建物の明渡しがあったものとみなすことができる。
2号 賃借人が賃料等の支払いを2カ月以上怠り,保証会社が合理的な手段を尽くしても賃借人本人と連絡が取れない状況の下,電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から本件建物を相当期間利用していないものと認められ,かつ本件建物を再び占有使用しない賃借人の意思が客観的に看取できる事情が存するとき

以上のほか,本件建物の明渡しがあったものとみなされた場合には,本件建物内に残置された動産の搬出・保管に異議を述べないこと,搬出の日から1か月内に引き取らないものについて所有権を放棄し,処分に異議を述べないこと,保管料として月額1万円(税別)及び搬出・処分に要する費用の支払い義務を認める条項が問題とされました。

2 上記条項の解釈について

高等裁判所は,上記の第18条2項2号の条項を,4つの要件に整理し,「①賃料等の支払いを2カ月以上怠り,②保証会社が合理的な手段を尽くしても賃借人本人と連絡が取れない状況の下,③電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から賃借物件を相当期間利用していないものと認められ,かつ,④賃借物件と再び占有使用しない賃借人の意思が客観的に看取できる事情が存するとき」としました。

 この4要件のうち①から③を満たす場合には,賃借人としては,既に賃借物件を住居として使用しておらず,かつ,その意思を失っている蓋然性が極めて高いということができます。そして,④の要件にあたるのは,賃借人が賃借物件についての占有の意思を放棄している場合といえます。①から③の要件だけでなく,④の要件を備えることによって,賃借人が賃借物件についての占有する意思を最終的かつ確定的に放棄したものを認められ,賃借人の占有権は消滅したものと考えられます。

 このようなことから,4要件を満たすことにより,賃借人が賃借物件の使用を終了してその賃借物件に対する占有権が消滅しているものと認められる場合において,賃借人が明示的に異議を述べない限り,保証会社に対し,賃借物件の明渡しがあったものとみなすなどの権限を付与するものと解釈されました。

3 上記条項の適法性

 消費者契約法10条は,権利の制限をする条項であって,消費者の利益を一方的に害するものは,無効とするとされています。

 高等裁判所は,上記条項につき,権利の制限をする条項であることを認定しましたが,消費者の利益を一方的に害するものには該当しないとして,有効と判断しました。賃借人が受ける不利益が賃借物件内の動産類を搬出・保管ないし処分されうるという点に限られ,むしろ現実の明渡しをする債務を免れ,将来の賃料等の更なる支払義務を免れるという利益を受ける状況にあること,また,賃借人が明示的に異議を述べさえすれば明渡しなどの権限行使を阻止することができることなどから,賃借人の利益を一方的に害するものということはできないことが理由です。

4 最後に

 今回の高等裁判所の判決について,一部報道では,「「追い出し条項」は適法」などとされていますが,以上のとおり,4要件を満たした場合に限定され,占有権が消滅したといえる場合にのみ有効な条項であります。かつて問題となったような,賃料滞納等を理由として賃借人の占有を一方的に排除する,いわゆる「追い出し条項」とは全く異なるとされています。

 そして,今回の事件は適格消費者団体からの差止請求訴訟という特色から,その審理対象は条項の定めのみであって,運用の場面において賃借人に対する違法な自力救済に該当する危険性を否定することができないとも指摘しています。

 今回の判決によれば,条項を定めておけば,賃借人が行方不明となった場合で賃借人の占有権が消滅したといえるときには,賃貸借契約の解除だけでなく,物件内の残置動産の搬出・保管ないし処分などの権限を付与することができることとなり,民事訴訟の提起,判決取得,強制執行の法的手続を経ることなく,明渡しを実現することができるようになります。

 過去には,賃貸借契約自体に,後見開始等を理由とする契約解除条項や明渡等代理条項などを付した特約について裁判で争われたことがあります(大阪高判平成25年10月17日消費者法ニュース98号283頁)。この事件では,後見開始等を理由とする契約解除条項が無効とされましたが,明渡等代理条項は,裁判係属中に条項が改訂されてしまいましたので,その有効性について判断されておりませんでした。

 消費者契約法の適用場面であって,賃貸人,保証会社と賃借人との利益衡量が必要な条項でありますので,賃貸借契約に条項の追加を検討されている方は,弁護士にご相談ください。

関連コラム:https://murakami-law.org/1127/
「保証会社に解除権を付与する条項の適法性」もぜひご覧ください。

<弁護士プロフィール>

弁護士 喜多啓公(きたひろゆき)
所属:大阪弁護士会
不動産関係では,宅建協会顧問の法律事務所にて勤務し,多数の賃料回収案件,建物明渡案件,土地明渡案件,賃料増減額請求,不動産契約トラブル案件の取り扱い経験があります。
賃貸不動産経営管理士の資格も保有しています。

講演歴
①不動産会社従業員への講義(不動産に関連する民法改正)
②不動産オーナーへの賃貸経営セミナー(テーマ「2020年民法改正が不動産賃貸借経営に及ぼす影響とは!?」)
③門真市の地域生涯学習のための市民大学での講義(テーマ「身近な暮らしの法律」)

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遺産分割事件における調停に代わる審判

2021年03月23日|弁護士コラム, 相続

1 遺産分割事件について

 遺産分割事件において,当事者間の任意の交渉で合意が成立しない場合,遺産分割調停の申立てを行い,そこでも調停が成立しない場合には,原則的には,遺産分割審判に移行し,最終的に家庭裁判所が「審判」を下すことによって事件を終結させます(詳しくは,弊所HP「遺産分割」の欄(https://murakami-law.org/inheritance/heredity-003.html)をご覧ください)。

 もっとも,遺産分割事件においては,そもそも相続人が多数になることも多く,その相続人の中には,遺産の取得に興味を示さない方がいることも少なくなくありません。そして,そのような相続人は,遺産分割調停の申立てがなされ,裁判所より連絡があっても,全く応答せず,申立内容に対する賛否等を明らかにしないまま調停期日に欠席するということもあります。

 この場合,遺産分割調停はあくまで当事者全員による出席が必要であるため,一人でも上記のような相続人がいる場合には調停は不成立となり,審判手続へと移行することになります。

 しかし,相手方が申立内容について争っている事案と異なり,何ら反応を示さない等の不誠実な対応で,審理に相当程度の時間を要することとなる審判手続に移行することは,申立人や既に遺産分割内容に賛成している他の相続人にとって,多大な不利益となります。

 したがって,実務上では,「調停に代わる審判」という手続が採用されることがあります。

2 調停に代わる審判

(1)調停に代わる審判とは,遺産分割調停が成立しない場合でも,一定の要件が充たされる場合,調停終了と同時に裁判官によって法的な解決内容を決定することができる制度をいいます(家事事件手続法284条)。

 その特徴は,当事者からの申立てがなくとも,裁判所の判断で職権に基づき実施される手続であり,迅速かつ終局的な解決を行われるという点です。そのため,調停に参加していた当事者にとって,通常のように審判手続へと移行するよりも,時間的・心理的・経済的なメリットが大きい手続であると言えます。

(2)実際の条文は以下のとおりです。

(調停に代わる審判の対象及び要件)
第二百八十四条 家庭裁判所は、調停が成立しない場合において相当と認めるときは、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、職権で、事件の解決のため必要な審判(以下「調停に代わる審判」という。)をすることができる。ただし、第二百七十七条第一項に規定する事項についての家事調停の手続においては、この限りでない。

2 家事調停の手続が調停委員会で行われている場合において、調停に代わる審判をするときは、家庭裁判所は、その調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴かなければならない。

3 家庭裁判所は、調停に代わる審判において、当事者に対し、子の引渡し又は金銭の支払その他の財産上の給付その他の給付を命ずることができる。

 上記第2項に記載されているように,調停に代わる審判手続は,今まで調停を担当していた調停委員の意見を踏まえて,調停が継続している裁判所が判断することになるため,調停の経緯も踏まえた判断がなされることとなります。

 先ほど御説明したとおり,調停に代わる審判手続は,裁判所の判断で実施するか否かを決めるものであり,当事者に同手続を行うよう申立てをする権利は認められていませんが,調停の中で調停委員に対して,同手続を実施するよう上申を行うことは可能です。

(3)調停に代わる審判手続の要件は裁判所が「相当と認めるとき」とされており,当事者の一方が合理的な理由もないのに合意を拒んでいる場合を指します。

 具体的には,冒頭の例のように,①一部の相続人が賛否を明らかにしないまま期日に欠席する場合,②ただ一人だけ遺産分割の方針に反対している相続人おり,その反対の理由も感情的なものに過ぎない場合,③わずかな意見の食い違い等によって遺産分割調停があと一歩のところで成立しない場合等が挙げられます。

 こうした場合には,多数の相続人が同意している内容で調停に代わる審判がなされ,合理的で迅速な解決が図られることとなります。

(4)調停に代わる審判手続は,このように迅速な解決に役立つ手続ではありますが,注意点もあります。

 まず,調停に代わる審判では,その内容について不満がある当事者には,異議の申立てを行う権利が認められており(家事事件手続法286条),異議の申立てがあった場合には,事件は通常の審判手続へと移行することとなります。

 また,調停に代わる審判手続は,その告知によって効力が生じますが,公示送達により告知することはできないとされているため(家事事件手続法285条2項),当事者が所在不明の場合には,この手続を利用することはできません。

3 最後に

 今回は,遺産分割事件における「調停に代わる審判」という手続について御説明させて頂きましたが,相続や遺産分割に関する法律問題は多岐にわたり,ご本人様の対応では難しい場面が多いことかと思います。
 何か,ご自身やご家族の相続に関することでご不安なことがございましたら,お早めに守口門真総合法律事務所までご相談ください。

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生命保険の受取人を長男にする場合の注意点とは

2021年02月15日|弁護士コラム, 相続

守口門真総合法律事務所の弁護士村上和也です。
生命保険の受取人を長男にする場合の注意点について、よく御相談を受けますので、本日はこの点の解説をさせていただきます。

生命保険の受取人を長男にする場合の注意点とは

「長男にお金を残したい」という想いから、生命保険の受取人を長男にしようとする場合があるかもしれません。理由は、長男が家業を継いでくれた、親と同居して親の面倒を見てくれた等、様々です。

しかし生命保険金の金額によっては、相続時にいわゆる相続争い(争族・争続)が起こる可能性がありますので、注意点を説明していきます。

生命保険金は相続財産(遺産)にならない

生命保険の被保険者が死亡し、死亡保険金が相続人でもある受取人に支払われるとき、死亡保険金は受取人固有の権利とされ、相続財産(遺産)には該当しない、とするのが判例上の扱いです。したがって、長男にお金を残したいのであれば、長男を受取人とする生命保険に加入すれば、原則として、目的は達成できることになります。

もっとも、以下のような例外もありますので、念頭に置いておく必要があります。

生命保険金が特別受益になる可能性も僅かにある

遺贈または生前贈与によって、特定の相続人に受益がある場合を特別受益と呼びます。特別受益に対しては、相続財産(遺産)に特別受益の価額を加え(持ち戻し)たうえで、相続分を算出して、その特別受益者の相続分から特別受益が控除されます。

このように、遺贈または生前贈与は特別受益になり得ますが、生命保険の受取人にすることは、原則として、特別受益になりません。しかしながら、長男を受取人とした生命保険の保険料を支払うために、財産の大部分を使ってしまうなど、あまりにも相続の公平性を欠くような特段の事情があるときは、例外的に特別受益に準じた扱いをして死亡保険金を相続財産(遺産)へ持ち戻す可能性を示唆した最高裁判例も存在します。

よって、財産に比して不相当に高額な生命保険に加入した場合は、長男以外の相続人から指摘されて、争族(争続)に発展してしまう危険性がありますので、注意が必要です。

相続税の節税に生命保険は有効

相続財産(遺産)に該当しない死亡保険金でも、被相続人の死亡で発生する点にかんがみ、相続財産(遺産)とみなされ相続税の課税対象とされています。

もっとも、相続財産(遺産)とみなされますが、死亡保険金は「500万円×法定相続人の数」で計算された額が、控除されるため、節税効果があります。

しかし、保険料を支払っているのがあなたの配偶者で、なおかつ、長男が受取人であるときは、保険料を支払っている配偶者から長男への贈与と評価されて、贈与税が課税されうる点は要注意です。

生命保険と争族(争続)

相続税課税には基礎控除がなされるため、基礎控除を上回る財産を保有していなければ、相続税を考える必要はありません。しかし、相続税が発生するほどの財産を保有している場合は、節税目的で生命保険に加入する方も一定数います。死亡保険金を相続税の納付原資に使うこともあるでしょう。

もっとも、特定の相続人だけを多額な死亡保険金の受取人にしてしまうと、当然ながら受取人以外の相続人から不平・不満の声が上がり、争族(争続)が起こり、円滑な遺産分割協議の実現を妨げてしまうかもしれません。

そうならないように、長男以外の相続人が納得してくれるような付言事項を遺言に記載するか(ケースによって自筆証書遺言か公正証書遺言か適切な遺言を選択しましょう)、それが無理なら、長男以外の相続人も生命保険の受取人にする、遺言で各相続人をなるべく平等に扱う配慮をする等の工夫が大切だと思います。

弁護士村上和也のプロフィール
所属:大阪弁護士会
重点取扱分野:遺言・相続(遺産分割・遺留分・遺言執行)・成年後見
講演歴:①「今日から始める相続対策」(終活セミナーでの講演)
    ②「相続・遺言・遺留分・金銭管理・成年後見」
     (地域包括支援センター家族介護教室での講演)
    ③「金銭管理・成年後見・個人情報保護」(認知症サポーター養成講座での講演)

弁護士からの一言
・早い段階で御相談いただくほうが良い解決につながることが多いですから、ささいなことでも結構ですので、お早めにお問い合わせください。
・相続問題は、遺産分割調停・遺留分減殺請求訴訟等、様々な紛争を扱う、紛争処理のプロである弁護士に御相談ください。

遺言・相続・成年後見のことでお悩みの場合、まずは守口門真総合法律事務所までお問い合わせ相談ください。初回は無料で御相談可能です。

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音信不通の兄弟がいる場合の相続手続は?不在者財産管理人が必要?

2021年02月8日|弁護士コラム, 相続

守口門真総合法律事務所の弁護士村上和也です。
音信不通の兄弟がいる場合の相続手続について、よく御相談を受けますので、本日はこの点の解説をさせていただきます。

音信不通の兄弟がいる場合はどのように相続手続を進める?

兄弟の居場所も連絡先も分からない…。このように音信不通の兄弟がいる状態で、親が亡くなってしまった場合、相続手続をどう進めたら良いのでしょうか。相続発生時の対応について考えてみましょう。

音信不通者がいる場合の相続

遺言のないまま親が亡くなり相続が発生した場合、相続人全員による遺産分割協議によって遺産を分割する必要があります。この分割協議には相続人全員の参加が必要であり、1人が欠けた状態で合意しても、法律的には無効になってしまいます。

つまり、相続時に兄弟の居場所や連絡先が不明な場合、遺産分割協議を成立させることができません。その結果、被相続人の預金口座の解約や不動産の移転登記を進めることができなくなります。貸金庫がある場合、その貸金庫を開扉して中身を確認することはできますが(事実実験公正証書)、中身を取り出すことはできません。

このような、相続人に音信不通者がいる場合の対応として「音信不通者を探し出す」「不在者財産管理人を選任する」「失踪宣告を申立てる」という方法があります。

音信不通者を探し出すこと

まずは本籍地の市区町村で戸籍附票を発行してもらい、相手の現住所を確認しましょう。親族であればこのような手順の確認はスムーズに可能なはずなので、登録された現住所に実際に足を運ぶことも可能です。遠方であれば、まずはお手紙を送ってみる方法もあります。

不在者財産管理人を選任すること

不在者財産管理人とは、行方不明者の代理人として、その者の財産を管理する権限を持つ人のことです。
本人不明の状態が続くことに利害関係を持つ相続人や債権者等の申立てにより、家庭裁判所が不在者財産管理人を選任し、財産が動かせない状態を解決することができます。
不在者財産管理人には、行方不明者と利害関係の無い人で、弁護士が選ばれるのが一般です。

今回のような場合には、不在者財産管理人は、音信不通者の兄弟の代理人として、裁判所の許可を得たうえで遺産分割協議に参加することになります。そして、遺産分割協議の結果として、不在者財産管理人が、音信不通者の代わりに音信不通者に帰属する遺産を管理・保管します。

具体的には「収支報告書や目録の作成」「裁判所へ定期的に報告する」といった業務が必要です。また、勝手に財産を使うことも禁じられています。

しかしながら、不在者財産管理人の利用にもいくつか面倒な問題もあります。まずは、不在者財産管理人の選任を申立てるには、本当に音信不通であることを立証する必要があります。単に疎遠になっているだけでは要件を充たしません。

また、「どこで何をしているのかわからない」というだけでは要件を充たしません。住民票に登録された住所に配達証明郵便を送り、それが受理されずに戻ってくるかどうか等を試すことで、立証する必要があるのです。

また、申立費用以外に、家庭裁判所に納める予納金として20万円から30万円程度が必要です(金額は各家庭裁判所によって異なります)。この予納金は、音信不通者に十分な財産があれば返還されますが、音信不通者の財産がわずかしかない場合には返還されないこともあります。

失踪宣告を申立てること

音信不通者の生死不明の状態が7年以上続いている場合、家庭裁判所に対し、「失踪宣告の申立て」をすることできます(民法第30条第1項)。

失踪宣告には上記「普通失踪」以外に「特別失踪」もあります。
特別失踪は、山岳遭難・海難事故・自然災害などで生死不明状態となった場合となります(民法第30条第2項)。
特別失踪による失踪宣告を申立てるには、事故や災害が去ってから生死不明の状態が1年経過していることが条件になります。

「音信不通が長く続いているので、早く失踪宣告を申立てたい」と思うかもしれませんが、生きている可能性がある場合は、申立てを避けたほうが良いでしょう。なぜなら、失踪宣告が確定すれば、音信不通者は、法律上、死亡したものとして扱われることになるからです。

なお、音信不通者が法律上死亡したものとして扱われる結果、音信不通者以外の相続人が、不在者財産管理人が管理していた音信不通者に帰属予定であった遺産を、取得(または分割取得)することになります。

ただし、申立てから失踪宣告までの期間は約1年程度かかりますので、相続税の申告期限(相続発生から10か月以内)を過ぎてしまうことも多いようです。申告期限を過ぎてしまうと延滞税が発生してしまうため、他の相続人が、音信不通者の相続税を代わりに納付ケースもありました。

このような場合、音信不通者は相続申告をしていないのに、相続税だけが納付されている状態となるため、税務当局の立場からは、音信不通者分の納付相続税を法律上受理した扱いをすることができない結果、その納付相続税が浮いてしまうようです。

そこで、後日、家庭裁判所から選任された不在者財産管理人に、相続税納付を追認してもらい、その納付相続税額を遺産分割時に精算してもらうことになると思われます。

最善の対策として

上記のうち、どのような選択をしたとしても、法定相続人の中に音信不通者がいる場合には、相続手続を終了させるために、通常に比べてはるかに手間と時間がかかります。
そのため、理想としては、事後的な対応でなく、事前の対応として両親に遺言を残してもらっておくことだと思います。
そこで、現在既に音信不通の兄弟がいる場合には、両親と御相談のうえ、相続人全員による遺産分割協議が不要となるよう、両親に遺言書を作成してもらいましょう。

当法律事務所においても、毎年10数件程度、遺言書作成・サポートの御依頼をいただいておりますので、お気軽に、お問い合わせください。

弁護士村上和也のプロフィール
所属:大阪弁護士会
重点取扱分野:遺言・相続(遺産分割・遺留分・遺言執行)・成年後見
講演歴:①「今日から始める相続対策」(終活セミナーでの講演)
    ②「相続・遺言・遺留分・金銭管理・成年後見」
(地域包括支援センター家族介護教室での講演)
③「金銭管理・成年後見・個人情報保護」(認知症サポーター養成講座での講演)

弁護士からの一言
・早い段階で御相談いただくほうが良い解決につながることが多いですから,ささいなことでも結構ですので,お早めにお問い合わせください。
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